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【バンダイナムコのIP戦略】ガンダムはなぜ世界のIPになれたのか
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2025年10月31日

近年好調が続くバンダイナムコHD。過去最高の業績を達成する要因となったIP戦略とは?グローバルでのガンダムなどの人気をどのように見ているのか?代表取締役社長の浅古有寿氏に聞いた。 <ゲスト> 浅古有寿|バンダイナムコHD 代表取締役社長・CEO 1986年 株式会社バンダイ入社 経営企画や経営管理...
好調のバンダイナムコが描くビジネス戦略とは
エンターテイメント業界の巨人、バンダイナムコホールディングスが記録的な業績を達成した。しかし、浅古有寿・代表取締役社長は「まだまだ伸びしろは大きい」と語る。デジタルからフィジカルまで、広範な事業領域と世界的なIPビジネスの展開、そして揺るぎない企業文化を持つ同社の戦略を、Q&A形式で深く掘り下げる。

Q. バンダイナムコのエンターテイメントビジネスの核となる強みと、現状への危機感は何ですか?
バンダイナムコの最大の強みは、デジタルからフィジカル、さらに顧客接点としての場所まで、幅広い事業領域を包括している点にある。これはIP(キャラクターなどの知的財産)の多角的な展開を可能にし、日本の文化輸出としても機能していると考える。マーケット規模の大きい北米と中国は主力地域である。

だが、いくら売上高が過去最高でも、エンターテイメントは生活必需品ではないため、現状に満足すると事業は縮小するという強い危機感を常に持っている。ゲームやアニメのようなコンテンツは開発・制作期間が長く、結果が出るまでに時間を要するため、短期的な成果に一喜一憂せず、緊張感を持ち続けることが不可欠だと認識している。
Q. 2005年の経営統合後に直面した困難と、そこからいかにV字回復を遂げたのですか?
バンダイとナムコの経営統合当初、内向きな業務に時間を取られ、顧客やユーザーのニーズに応えきれない時期があった。結果として、2008年から2009年にかけて業績は悪化し、社内のムードも決して明るくなかった。当時の経営層が求めたトップダウン型の「シナジー」は、コスト削減に留まり、新しい価値を生み出すには至らなかったのである。
この困難を乗り越える転換点となったのは、当時の石川社長が提唱した「IP軸戦略」だ。これは、権限を現場に委譲し、現場が「元気に暴れていく」ことで、スピード感のある意思決定とボトムアップによる創造的なシナジーを追求する方針であった。この方針が奏功し、いくつかの成功事例が生まれると、会社全体に活気が戻り、好循環を生み出したのだ。
Q. 多様なIPを扱う中で、安定した収益と新規挑戦を両立させる「IPポートフォリオ」戦略とはどのようなものですか?
同社は年間約500ものIPを取り扱っており、その事業安定の要が「IPのポートフォリオ」だ。これは、長きにわたりファンに愛されるパックマンのような「定番IP」が安定した収益基盤を築き、その上でヒットが不確実な「新規IP」への挑戦を可能にする仕組みである。この組み合わせが、持続的な成長サイクルを支えている。

IPポートフォリオは、自社が著作権を持つ「オリジナルIP」と、他社からライセンスを受けて展開する「ライセンスIP」の二本柱で構成されている。IPごとに「チーフ・ガンダム・オフィサー(CGO)」や「チーフ・たまごっち・オフィサー(CTO)」といった専門職を置き、IP固有の特性に合わせた戦略を展開する。
Q. グローバル展開における戦略と、海外市場での成功に向けた具体的なアプローチは何ですか?
中期経営計画では、海外売上比率50%の達成を目指している。現在の主力は北米と中国だが、まだまだ事業を展開できる地域は限定的であるため、この面を広げることが今後の重要な課題である。
ガンダムの北米での成功は、ネット配信による時差のないデジタル展開と、現地社員による長年の地道なイベント活動という「デジタルとリアル」双方の取り組みの結晶である。海外展開は単なる商品販売ではなく「文化の輸出」だと捉え、各国の法規制や文化・慣習を尊重し、一つ一つのIPを丁寧に根付かせる現地化が成功の鍵となる。
「IP」「事業」「エリア」という三つのポートフォリオを組み合わせる「三次元ポートフォリオ戦略」により、経営の安定性を高めつつ、海外展開のような大きな挑戦を続けるための強固な土台を構築している。
Q. バンダイナムコが持つ独特の企業文化と、今後の成長に向けたビジョン・人材像について教えてください?
同社の企業文化には「成功するまでやれば失敗ではない」という哲学が根付いている。1996年にブームを迎えたたまごっちも、一時の熱狂が去った後も現場の人間が粘り強く事業を継続した結果、ノウハウが蓄積され、時を経て再び脚光を浴びた。安定した収益基盤は、このような継続的な挑戦を支える重要な要素である。

中期ビジョン「Connect with Fans」における「ファン」とは、IPファンのみならず、ビジネスパートナー、地域社会、株主、そして愚直に事業に取り組むグループ社員全体を指す。これらの全てのステークホルダーとの連携強化が不可欠である。
未来の成長に向けた課題として、10年、20年先を見越した長期的な種まきや、既存事業でやりきれていない領域への挑戦が挙げられる。このため「CW360」を立ち上げ、グループ全体の視点で長期投資やチャレンジを推進している。バンダイナムコが求める人材は、何よりもIPに対する「熱い思い」と「愛」を持つ人物だという。