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都内で年収1500万円はもう裕福ではない?
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2025年10月19日

世帯年収3000万円以上の富裕層から生活スタイルや意識が大きく変わるという。富裕層に当たるインカムリッチ層の職業・キャリアの実態とは?教育や住居はどのような傾向にあるのか?データを元に博報堂富裕層マーケティングラボの三宅大介氏は語る。 <ゲスト> 三宅大介|博報堂富裕層マーケティングラボ 自動車を...
「パワーファミリー」の新実態:世帯年収3000万円で変わる価値観と行動
かつての富裕層イメージは、悠々自適な資産家が中心であった。しかし、近年、新たな富裕層の姿が台頭し、その実態は大きく変化している。「パワーファミリー」と称されるこの層は、共働き世帯の増加や女性の所得向上を背景に、現役世代として高所得を稼ぎ出す。彼らはどのような価値観を持ち、どのような消費行動を取るのか。
博報堂の最新調査「新富裕層調査2025」では、特に「世帯年収3000万円」を境に意識や行動が明確に変化することが示されている。本記事では、この新しい富裕層、パワーファミリーの実像をQ&A形式で深く掘り下げ、その職業、キャリア観、教育、住居、そして生活意識の変化を解説する。

Q. 新たに見出された「世帯年収3000万円」が意味するターニングポイントとは何か?
博報堂が発表した「新富裕層調査2025」において、世帯年収3000万円が富裕層の意識や行動、さらには属性を区分する重要な転換点であることが明らかになった。昨年実施された「世帯年収1500万円以上のインカムリッチ層」を対象とした調査では、金融資産をベースとする既存の富裕層に加え、共働き世帯や女性所得の増加に伴い現役世代の高所得層が拡大していることに注目が集まった。
しかし、近年は不動産価格の高騰やインフレーションの影響を受け、従来の「年収1500万円」では豊かな生活を実感しにくくなっているという現実がある。そのため、クライアントからの要望もあり、今回の調査ではより高所得な層の分析を深めた結果、世帯年収3000万円という新たなラインが見えてきた。この年収帯を境に、人々の行動や考え方に明確な違いが生じるのだ。
都心部における住居費の高騰も、この背景にある。例えば、10年前は世帯年収1000万円で新築マンション購入が可能であったエリアも、現在では1500万円から2000万円が最低ラインとなる。この経済環境の変化が、「世帯年収3000万円」を新たな豊かさの基準へと押し上げていると言えるだろう。
Q. 日本の富裕層は具体的にどのような分類があるのか?それぞれの特徴とは?
日本の富裕層は主に2つのタイプに分類できる。一つは「ウェルスリッチ」、もう一つは「インカムリッチ」である。
ウェルスリッチとは、純金融資産が1億円以上ある世帯を指し、その数は全国で約165万世帯に上る。彼らは主に金融資産によって富を築いており、資産形成のピークは60歳前後に訪れる傾向がある。退職所得や贈与などによって、この段階で多額の金融資産を保有することが一般的だ。住宅ローンや教育費がかさむ現役世代には、金融資産1億円のハードルは依然として高い。
一方、インカムリッチは世帯年収1500万円以上の高所得世帯であり、その数は約219万世帯に及ぶ。彼らは主に給与所得をベースに高収入を得ている現役世代であり、将来の富裕層候補として注目されている。ウェルスリッチとインカムリッチのいずれも増加傾向にあり、日本の高所得者層が拡大している状況がうかがえる。
この二つの富裕層が交錯する重要なポイントが「世帯年収3000万円」である。この年収帯では、実に50%以上の世帯が金融資産1億円以上のウェルスリッチにも該当するというデータがある。これは、年収1500万円以上の層における同割合が約20%にとどまることと比較すると顕著な差だ。つまり、世帯年収3000万円は「稼ぐ力」だけでなく「資産」も手に入れ、本格的な富裕層へと移行する分岐点と言えるのである。

Q. インカムリッチを構成する人々は、どのような職業に就いていることが多いのか?その背景は何か?
世帯年収1500万円以上のインカムリッチ層を職業別に見ると、その約6割を会社員が占めている。中でも上場企業の会社員の比率が高いという結果が出ている。この背景には、共働き世帯の増加が大きく関係している。
高い世帯年収を維持するためには、夫婦がともにキャリアを継続できる環境が不可欠である。育児休業制度や多様な働き方支援など、仕事と家庭の両立をサポートする企業体制が整っている大企業が多く、これが高所得会社員を育む土壌となっていると考えられる。結果として、制度が充実している都市部の大企業に、高い収入を持つ人々が集中する傾向にあるのだ。
ただし、世帯年収がさらに上昇すると職業構成も変化する。例えば、世帯年収が1500万円以上の層で会社員が56.2%であるのに対し、3000万円以上になると46.7%に減少する。この減少と対照的に、会社経営者や役員の割合が1500万円以上では8.8%であるのに対し、3000万円以上では約20%近くまで増加する。このことから、世帯年収3000万円は、現場のプレイヤーから経営層への移行が始まる一つの境界線と見なせるだろう。
Q. 「インカムリッチ」層のキャリア観や価値観は、収入によってどのように変化するのか?
インカムリッチ層全体として、自己成長や自己実現への志向が非常に強いことが特徴である。彼らはそうした目標達成のために積極的に時間や資金を投資する傾向が見られる。
キャリア観に関して特に興味深いのは、この自己成長・自己実現志向や社会的地位・ステータスの追求といった意識が、世帯年収3000万円でピークに達するという点だ。これは、多くの人がこの収入レベルで自身が思い描いたキャリアや目標に到達し、ある程度の達成感や満足感を得ていることを示唆する。
しかし、世帯年収が5000万円を超える高所得層では、自己成長への意欲が3000万円層よりやや低下する傾向にある。これは、成長が止まったというわけではなく、キャリアの次なるステージへと意識が移行していると考えられる。具体的には、自身が培ってきた知識、経験、ネットワークをどのように社会に貢献・還元していくか、という方向へ関心がシフトしていくのである。
要するに、インカムリッチ層はキャリアの初期から中期にかけて自己成長と地位向上に注力し、一定の達成を迎えた後は、その力を社会や他者のために用いることを視野に入れる、といった価値観の変遷が見て取れるのだ。

Q. パワーファミリーは、子供の教育と住居に関してどのような特徴的な行動を示すのか?
パワーファミリーが重視する項目として、「成長と自己実現」「タイパ(時間対効果)」「健康ウェルビーイング」「子育て・教育」「体験消費」の5つが挙げられる。彼らはこれらを単なる消費ではなく、自分や家族の未来に対する「投資」と捉え、積極的に時間やお金を投じる。
特に子供の教育に関しては、非常に高い意識を持つ。年収3000万円以上の世帯では、「子供のためなら仕事や居住地、ライフスタイルを変えることもいとわない」と考える割合が増加する。「教育移住」や「教育転職」という言葉があるように、子供の学校や教育環境を最適化するためであれば、生活基盤を大きく変えることも辞さないのだ。中には、学校の近くに複数の住居を所有し、時期に応じて住み替えを行うケースも見られる。
また、子供に海外留学をさせたいと考える割合も、年収に比例して顕著に高まる。全体で約2割であるのに対し、世帯年収3000万円以上では約45%に達する。彼らは、短期留学だけでなく、大学・大学院レベルでの本格的な留学も視野に入れ、子供により豊かな国際的経験とグローバルな視野を持たせることに強く関心を抱く。高年収層にとって、教育は子どもの未来を切り拓くための最も重要な投資の一つと言えるのである。

Q. 豊かな生活を送る高所得層が重視する「生活意識」とは何か?
インカムリッチ層、特に年収が高くなるにつれて顕著になるのが、「タイパ(時間対効果)」の重視である。共働きで多忙な生活を送る彼らにとって、時間は有限で貴重な資源だ。効率を追求し、時間を最大限に活用することで、得られた時間をより人生を豊かに楽しむ活動に充てたいと考える。単なる時間の節約だけでなく、質的な満足度向上を目指すことが彼らのタイパ意識の根底にある。
次に挙げられるのは「健康ウェルビーイング」への高い意識と投資である。健康を最大の資産と捉え、自身の身体と精神の健康を維持・向上させるためにお金を惜しまない。単なる延命だけでなく、活動的で充実した「健康寿命」を長く享受することに価値を見出している。美容医療など、見た目を含めた自己管理にも積極的で、高所得になるほどこうした意識は一層高まる傾向がある。
家事・育児への考え方も、年収レベルによって大きく変化する。世帯年収1500万円以上の層では家事・育児の「分担」意識が依然として高い一方で、年収3000万円を超える層では、分担よりも家事代行や外部サービスの活用といった「外注」意識が明確に強まる。これは、夫婦それぞれの時間を犠牲にするよりも、お金で問題を解決し、双方の時間をより有効活用することが合理的である、という彼らの時間価値に対する考え方を反映していると言えるだろう。