PIVOT TALK FOOTBALL
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2025年10月12日

数多くの日本代表選手を輩出している、ベルギー1部リーグのシント=トロイデンVV。今、世界のクラブ経営はどう変化しているのか?Jリーグをどう進化させるべきか?日本代表をどう強化すべきか?立石敬之CEOにレギュラーメンバーがラウンドテーブル方式で聞いた。 <ゲスト> 立石敬之|シント=トロイデンVV ...
Jリーグが設立から30年を経て、世界と真に対峙し、さらなる高みを目指す上で、どのような戦略を描くべきか、その本質的な議論がいま喫緊の課題となっている。元Jリーグ選手、シントトロイデンCEO、そしてJリーグのフットボール委員も務める立石敬之氏は、日本のサッカー界に大胆なビジョンの転換と具体的な行動を強く促す。これは単なるクラブ経営の改善にとどまらず、日本サッカー全体の未来を問い直す壮大な提案である。

Jリーグは欧州クラブへの「選手供給元」という位置づけから脱却し、世界のトップ選手を惹きつける「買う側」のリーグへと根本的に発想を転換すべきである。世界のあらゆるクラブと同様に、常に最強の選手が欲しく、日本に限らずどこへでも手を伸ばすべきだ。

その実現のためには、外国人枠の徹底的な解放と、リーグ所属クラブの半分程度を外資にするような、従来の常識を打ち破る大胆な改革が必要だ。これにより、リーグ全体の競争力とビジネス規模の劇的な拡大に繋がると立石氏は提言する。
外資導入の第一の目的は、グローバル基準の経営ノウハウと人材の流入を促す点にある。外資が参入すれば、自国のブレインである経営者や強化担当を連れてくるため、日本のプロフェッショナルは世界基準を要求され、競争の中で成長機会を得る。Jリーグ内にもオフザピッチ人材を育む必要がある。

また、多様な国籍の選手が増えることは、放映権の売上向上に直結する。世界中でJリーグが視聴される機会が増え、国際的な市場価値が高まるのだ。現行の「提携国枠」の存在は実質的に外国人枠の撤廃に近く、この状況に能動的な変革が必要だ。受動的に「使われる」だけのリーグではならない。
Jリーグが海外投資家にとって魅力的でない最大の要因は、「移籍金収入」と「放映権料」が欧州リーグと比べて圧倒的に低いことである。買収自体は安価でも、投資後のリターンが乏しいため、投資対象としての魅力に欠けている。また、本拠地スタジアムをクラブが「所有・運営」できていないことも、事業展開を困難にしている。
サッカー界における欧州は巨大な経済圏であり、一国である日本が単独で対抗するのは不可能である。日本は北米と連携し、太平洋を股にかける「パンパシフィックリーグ」のような新しい経済圏を創出することで、現在の欧州一強構造を打ち破るべきだ。
実際に、FIFA本部機能の一部がマイアミに移管され、サッカーのルール形成においてアメリカの意向が強くなる可能性が指摘されている。今後、世界のサッカーの「ルールを作る側」が欧州からアメリカへ移行するならば、日本はその変化を先読みし、アメリカとの「サッカー界の日米同盟」を築くことで、欧州を追い越すチャンスを掴むべきだ。
Jリーグ全体のグランドデザインとは別に、短期的な強化目標として、欧州トップクラブで通用する日本人選手を量産することが重要だ。その一環としてU-21リーグ創設が注目される。過去にFC東京が久保建英らを東京オリンピック世代育成のためにU-23チームをJ3で戦わせた経験は、若手選手が早い段階で真剣勝負の機会を得ることの重要性を示した。
育成において何よりも重要なのは、選手が「観客の前でプレーし、見られる」ことだ。観衆の視線は選手に独特のプレッシャーとモチベーションを与え、成長を加速させる。指導者も観衆に「見られる」ことで、言動や采配の質が向上し、育成環境全体の可視化と質の向上に繋がる。
真にクラブを強く「稼げる」組織にするためには、オーナーが自身のカネと時間、情熱を投じる「オーナーシップ経営」が不可欠である。プロ野球やJリーグにおけるオーナー経営の成功例は、オーナー自身が失敗から学び、試行錯誤を繰り返しながらクラブを成長させるサイクルの重要性を示している。短期で交代する出向社長体制では、長期的な視点での戦略立案や責任ある投資判断は難しい。

日本国内の有力なオーナー候補は限られており、今後のJリーグの成長には外資の導入が避けられない。海外投資家は「企業価値が上がるか否か」で投資判断を下す。プロフェッショナルな経営人材が、移籍金ビジネスやスタジアム事業といった新たな収益源を確保し、クラブの「バリュエーション」を高めることが、投資を呼び込む最重要課題となる。
Jリーグが欧州サッカーを「模範」とすることはあれ、単に「モノマネ」を続けるだけでは決して頂点には立てない。有名欧州指導者を招聘したり、戦術トレンドを追従するだけでは、常に時代の一歩後塵を拝することになる。カリスマ的な指導者に依存するのではなく、その教えを超えていく「守破離」の精神で、日本独自の強みを発揮できる道を模索する必要がある。
日本サッカーが世界に勝つ鍵は、三笘薫や伊東純也のように、「個の力」で局面を打開できる選手の育成にある。組織戦術に過度に依存する育成法では、爆発的な突破力を持つ選手は生まれない。欧州のトレンドを漫然と追うのではなく、個人能力を最大限に引き出す、日本独自の育成論を確立することが、最終的に「日本にいた方が最高峰を経験できる」状況を作り出すことに繋がるだろう。