PIVOT TALK TECH
企業のAI戦略 「やるべきこと」と壁
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2025年10月3日

経営においてもはや必須のAI導入。 日本企業は上手にAIと向き合えている?まずはどこから始めればいい? 全社員1.1万人にAI義務化を行うLINEヤフーの活用事例を、執行役員の米田吉宏氏に聞いた。 <ゲスト> 米田吉宏|LINEヤフー執行役員 経営戦略CBU CBUリード 電通にて広告・マーケティ...
日本企業のAI活用最前線:LINEヤフーが語る変革の現在地と未来図
世界中でAI活用の波が加速する中、日本企業もその大きな潮流の只中にいる。中でも、国民的プラットフォームを運営するLINEヤフーは、日本におけるAI変革の最前線を走る企業の一つだ。膨大なデータを持ち、多種多様なサービスを展開する同社が、生成AIの台頭にどう向き合い、どのように戦略を練っているのか。LINEヤフー株式会社 執行役員経営戦略CBUリードの米田吉宏氏がその現状と未来を語る。

Q. LINEヤフーのAI活用はどこまで進んでいるのか?
LINEヤフーは、主要サービスのほとんどに何らかのAI機能を導入済みだ。また、社内の従業員もほぼ全員がAIツールを日常業務に活用し、生産性向上に取り組んでいる。このカバレッジの広さが現在の実情である。今後は、導入の「広さ」だけでなく、各領域でどれだけ深くAIを活用し、ユーザー体験を根本から変えられるかという「深さ」の追求に焦点を当てる。サービスと社内業務の両面から、AI活用のさらなる深化を目指す段階に入ったと言えよう。
Q. 生成AIがもたらした最大の変革とは何か?

生成AIの登場は、従来の機械学習による「連続的な変化」とは一線を画する「非連続な技術進展」をもたらした。大規模言語モデル(LLM)が、人間のようにテキストベースで自然なコミュニケーションや応答を可能にしたからである。これは、これまでのプログラムベースでは困難であった、真に個別化された1対1のカスタマー体験を提供できる可能性を示している。各ユーザーのニーズや文脈を理解し、それぞれに最適化されたサービス提供が現実のものとなりつつあり、これこそが最大の変革だと米田氏は強調する。
Q. 全社員1.1万人を対象としたAI利用の「ルール化」とは、どのような狙いがあるのか?

LINEヤフーでは、全社員を対象にAI利用の「ルール化」を実施した。これは「AI義務化」ではなく、AIの利便性を全社員に体験させ、AI活用の心理的障壁を取り除くための「着火剤」としての意味合いが強い。AIを「なんとなく便利」と感じてもらうことが第一歩である。
例えば、情報収集のためのWeb検索や会議の議事録作成といった、多くの社員が共通して行う業務領域でAI活用を推奨している。利用率は95%に達しており、まずは社員全体にAIへの慣れとメリットを体感させる文化を醸成することに成功している様子だ。
Q. AI導入の成功において、今後重要となる課題は何と考えるのか?
AIツールの操作性自体は、GUIの進化により将来的には誰でも使いこなせるようになると予想される。真のボトルネックは、AIの能力を前提として、既存の業務プロセスをいかに再設計できるかという思考力である。

加えて、大量のユーザーデータをAIと連携させる技術的なコスト、そしてデータの適切な取り扱いとユーザーのプライバシー保護は極めて重要であると米田氏は指摘する。どこまで攻めたAI活用を、どこまでユーザーの同意を得て行うか。このバランスを見極めるサイエンスとアートの側面が、今後の成功を左右するだろう。
Q. 自社で大規模言語モデルを開発する選択肢をLINEヤフーはどう捉えているのか?
自社で大規模言語モデル(LLM)を開発するという選択肢はもちろんある。しかし、LINEヤフーにとって最優先されるのは「ユーザーに支持される優れたサービスをいかに最速で届けられるか」という点だ。時間をかけて自社モデルの性能向上に投資するよりも、既存の高性能な汎用モデルを活用し、独自のデータやUI/UXを組み合わせることで、いち早く市場に優れたAIエージェント体験を投入する戦略を採る。toC向けの生成AIサービスでまだ大成功例がない現状を鑑みれば、迅速なユーザー価値の創出が競争優位の鍵となると判断しているのである。
Q. AIは検索やコマースといったサービスをどう変えると考えているのか?
AI時代になっても検索エンジンは消滅しないと米田氏は語る。検索ニーズは大きく二極化するからである。「トヨタの公式サイトが見たい」のように目的が明確な場合は従来の検索UIが最適だが、「どのような掃除機が良いか相談したい」といった漠然としたニーズや「相談したい」という場合はAIチャットが有効である。
両者の共存・統合されたインターフェースが主流になると予測する。コマースにおいては、AIは商品選びのプロセスを劇的に変える。比較軸の整理、複数商品の情報収集・比較までを自動化し、購入前の意思決定プロセスを強力にサポート。理想的な対話型ショッピング体験の実現には、ユーザーがスムーズに使えるUI/UXの確立が鍵となる。
Q. AI変革を進める現場からは、どのような声が上がっているのか?
AIのゲームチェンジにより、LINEヤフーは全世界の競合と戦っている状況にある。現場からは「これまでにないスピード感で正解のない探索的な取り組みが増えている」という声も聞かれる。しかし、マネジメント層はAIで既存業務を徹底的に効率化し、イノベーションに挑戦する時間を捻出することでこのプレッシャーに対応しようとしている。

また「AI人材が足りない」という課題に対しては、外部からの採用だけでなく、今いる全社員がAIを使いこなせる「AI人材」へと変革していくという発想で解決を図っている。従業員一人ひとりが自分の業務にAIを組み込み改善できる状態を目指す。