
ユニクロの戦略から学べること ー "大きな服を着せる"【佐々木紀彦】
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2025年10月1日
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ユニクロの強さを生む「全員経営」組織論と人財戦略
日本を代表するグローバルアパレル企業であるユニクロは、常に変化し続けるビジネス環境の中で圧倒的な成長を続けてきた。その強さの源泉には、組織論と人財戦略に深く根差した独自の哲学が存在する。ユニクロで長年リーダー育成に携わってきた元執行役員の宇佐美潤介氏が語る知見を紐解き、どのようにして現場一人ひとりが自律的に動き、進化を続ける組織を築き上げているのかを解説する。

Q. ユニクロの組織がなぜ強固であるのか?
ユニクロの組織論の核心にあるのは「フラクタル組織」という考え方だ。これは、組織のどの部分を切り取っても、全体と同じように自律的に機能する構造を指す。従来のピラミッド型組織では、トップが機能不全に陥ると全体が停止するリスクがあるが、ユニクロでは各チームや個人が「会社の縮図」として自ら判断し行動できるよう教育されている。
この仕組みは、米国海兵隊が最強とされる理由にも通じる。トップ不在でも現場が混乱せず機能し続ける「全員経営」を実現しており、創業者である柳井正氏の理念が組織の隅々まで浸透している結果だ。
Q. なぜユニクロには経営企画専門の部署が存在しないのか?
ユニクロは「計画1割、実行9割」という原則を徹底しており、一般企業に存在する経営企画部のような、計画だけを専門に行う部署を設けていない。この背景には、計画立案者と実行者を分離すると、現場のリアリティを欠いた計画が生まれやすくなり、実行に「魂」がこもらないという考え方がある。

実行する者自身が計画を立てることで、現場の知見が最大限に反映された質の高い戦略が策定される。そして、自らが練った計画だからこそ、高い当事者意識を持って実行に移すことが可能となる。これにより、計画・実行・検証・改善というサイクルが高速で回転し、組織全体の学習能力と実践力が飛躍的に向上する仕組みが確立されているのだ。
Q. ユニクロの人事異動はなぜ頻繁かつ不定期なのか?
ユニクロが大企業病を防ぎ、組織の活力を維持するために重視しているのが、社員への刺激と成長を促すための人事異動である。これは定例的なものではなく、「容赦なく」かつ「不定期」に行われる点が特徴だ。
従来の日本企業のように「3年は同じポジションに留まる」といった慣例はなく、早い場合には1年以内に異動が命じられることもある。社員が特定のポストに安住することを許さず、停滞していると見られれば即座に新たな部署へ異動させることで、常に新鮮な環境でチャレンジを続ける機会を与える。これは、個人のマンネリ化を防ぎ、組織全体のダイナミズムを保つための戦略的施策である。社員は変化に柔軟に対応する能力を養い、多様な経験を通じて視野を広げる機会を得る。
Q. 社員を成長させるユニクロ独自の「大きな服を着せる」方針とは?
ユニクロの人材育成においては「あえて大きな服を着せる」という考え方が徹底されている。これは、社員の現在の能力レベルを少し超えるような課題ではなく、本人すら「今の自分には到底無理だ」と感じるほどの大きな役割や困難な挑戦を意図的に与えることを指す。
ポテンシャルの高い社員には、現状維持では決して到達できない高い目標を設定し、その達成に向けて邁進させる。この挑戦のプロセスにおいて失敗はつきものだが、ユニクロでは失敗を許容する文化が根付いているため、社員は萎縮することなく、果敢に未知の領域へと踏み出すことができる。この過酷な経験こそが、個人の限界を突破し、飛躍的な成長へと繋がると考えている。
Q. ユニクロの管理職はどのように人事評価されるのか?
ユニクロにおける管理職の人事評価は、その半分のウェイトを「後継者育成」と「部下の成長への貢献度」が占める。個人の売上達成や業務成果といったプレイヤーとしての業績だけでは、決して十分な評価を得られないのがユニクロの人事システムの特徴だ。

管理職には、自分自身が担当する業務を遂行するだけでなく、チームメンバーを育成し、次世代のリーダーを育てる教育者としての役割が強く求められる。自分がいなくても組織が円滑に機能し、さらに発展していけるような、サステナブルな体制を構築できるかどうかが評価の重要な基準となる。この制度によって、全社的に人財育成へのコミットメントが極めて高い水準で維持され、組織全体の成長を促している。
Q. ユニクロのエッジが効いた企業文化がもたらす効果とは何か?
ユニクロの企業文化は、常に成長と変化を求め、安住を許さない厳しさを持つ。このような文化は万人にとって快適なものではなく、合わないと感じる社員も当然存在するだろう。しかし、ユニクロはあえて企業として明確な「エッジ」を立て、「うちはこういう企業だ」という強いメッセージを発信し続ける。
その結果、企業文化に強く共感し、成長意欲の高い人材が自然と集まり、定着していく。そして、合わないと感じる社員が組織を離れることで、残ったメンバーの価値観がより洗練され、組織としての方向性が一枚岩となる。この淘汰のプロセスは、結果的に組織の一体感を強め、共通の目標に向かって加速する強力なエンジンとなるのだ。
すべての社員に好かれようとせず、明確な旗を掲げることで、真に求める人財を引きつけ、組織の進化を牽引していく。これがユニクロの成長戦略の一端である。