PIVOT TALK BUSINESS
実践「投資環境スコア」
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2025年9月29日

投資の世界で当たり前のように出てくる金利の話。 金融サイクルには「四季」がある?長短金利差ってどうみるの? 『金利を見れば投資はうまくいく』著者の堀井正孝氏による超基礎解説。 <ゲスト> 堀井正孝|マネックス・アセットマネジメント 債券運用部長 元SBIボンド・インベストメント・マネジメント代表。...
金高騰と円安、実質金利の罠:個人投資家が見るべき「危機シグナル」とは?
近年、金価格が高騰し、世界経済に新たな波乱の兆しが見え始めている。BRICs時代の教訓や現在の日本を取り巻く金融環境、さらには見えにくい「実質金利」という問題まで、様々な経済指標が我々の投資環境に影響を及ぼしているのは確かである。『金利を見れば投資はうまくいく』著者の堀井正孝氏が、複雑な金融市場の動きを読み解き、特に注目すべきポイントや個人投資家が警戒すべきシグナルについて解説する。

Q. 金価格の急騰は、世界経済にどのような意味を持っているだろうか?
金価格の急騰は、世界経済におけるインフレ圧力の高まりを示す先行指標と捉えられる。過去、例えば2000年代のBRICsブーム時には、新興国への大量の資金流入が商品市況全体の急騰を引き起こし、インフレが進行し、多くの国が利上げを余儀なくされた経緯がある。
現在も金価格上昇を皮切りに、銀や銅、最終的には石油や穀物といった基幹商品へと波及し、商品市況全体が将来的に上昇する可能性が高い。これは世界的に物価が上昇するインフレ局面が本格化することを示唆すると見てよいだろう。
Q. 日本経済は、金価格高騰や世界経済の動向に対し、どのような状況にあるのだろうか?
日本は資源の多くを輸入に頼るため、世界的な商品市況の上昇は日本の物価に直接影響を与える。これに円安が重なると、輸入物価はさらに高騰し、日本国内の物価を押し上げる「二重苦」の状況に陥るだろう。現状、一部の商品市況はドルベースで値下がりしているものの、今後商品市況全体が上昇し、円安が続けば、国内の物価上昇は避けられない。
このような状況下では、日本銀行も利上げのペースを早めざるを得なくなる可能性がある。しかし、経済の力強さが十分でない中で利上げを急げば、景気を冷やし、株式市場にマイナスの影響を及ぼす恐れがあるため、日銀の政策決定は常に慎重な見極めが求められる。市場は年2回程度の緩やかな利上げを想定するが、これ以上の加速は景気後退リスクを高めるという見方が強い。

Q. 現在の円安の主な原因はどこにあるのだろうか?
日銀が利上げに踏み切ったにもかかわらず円安が進行している主な原因は、「実質金利」にある。実質金利とは、名目金利からインフレ率(物価上昇率)を差し引いたもので、現在の日本の政策金利約0.5%に対し、消費者物価上昇率は約3%と試算される。このため、実質金利は約マイナス2.5%となり、預金しても購買力が低下する状態が続いているのだ。
例えば、100万円を預けても1年後にはその100万円で買える物の量が3%減っているにもかかわらず、利息は0.5%しか増えない。つまり、円を持つこと自体が、時間の経過とともに購買力を失うリスクを伴う。この「マイナス実質金利」の状態が続く限り、円の魅力は低下し、構造的に円安に傾きやすくなるだろう。
Q. 円預金は、現在においてリスクのある資産なのだろうか?
現状の「マイナス実質金利」環境下では、円預金はインフレによる購買力低下リスクを抱えている。額面は変わらなくとも実質的な価値が目減りしていくのだ。このような状況は「インフレ→実質金利の低下→円安→輸入物価上昇→さらなるインフレ」という負のスパイラルを加速させる懸念がある。

日本は多くの消費財や原材料を輸入に頼っており、円安が進むことで輸入物価が上昇し、国内インフレがさらに悪化するという構造がある。これは実質金利をさらに低下させ、再び円安を招くという悪循環を生む。現状、欧米諸国が利下げを進めていることで、円安の勢いはいくらか和らいでいるが、海外の景気が再び回復し利上げが始まれば、このスパイラルが再燃する可能性は十分にあるだろう。
Q. 「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」の違いを見分けるには、何に注目すべきだろうか?
金利上昇には、景気の好転を示す「良い金利上昇」と、経済危機の前触れとなる「悪い金利上昇」の二種類が存在する。
「良い金利上昇」は、景気回復の期待感から、将来の金利を予測する長期金利が上昇するパターンを指す。これは純粋に景気の状況を反映したものであり、過度な深読みは不要だろう。

一方、「悪い金利上昇」は、短期間の金利、特に2年国債利回りといった短期金利が急騰する現象を指す。欧州債務危機やイギリスのトラスショックのような局面では、短期国債の利回りが中心となって上昇した。これはその国からの資本流出、つまり海外投資家がその国の債券を手放す動きの兆候である。海外の資金は短期債券に集中しやすく、国家が信用不安に陥ると真っ先に短期債券が売却され、その利回りが急上昇する。この動きは経済循環のセオリーから外れたイレギュラーなサインであり、景気後退や金融危機の予兆として警戒すべきものだ。
Q. 個人投資家は、これらの経済指標や金利の動きをどのように投資判断に活かすべきだろうか?
個人の投資家が将来の景気動向や株式・投信の運用状況を把握するためには、米国を中心とした「長期金利と短期金利の差」とその変化を継続的に確認することが非常に重要だ。これは新聞や経済番組でも報じられることがあるが、推移のグラフを自らチェックすることが望ましい。
さらに、米国のセントルイス連邦準備銀行が提供するウェブサイト(FRED)のデータを利用すれば、「投資環境スコア」を自作し、より詳細な景気予測を行うことも可能である。このスコアは主に、米国の10年金利、2年金利、社債金利、ドル指数の4つの指標に基づき、これらの前年比変化をスコア化し合計することで現在の市場の健全性を測る。

過去の事例では、この「投資環境スコア」がマイナス6を下回ると、数ヶ月後に何らかの金融危機や景気悪化が起こる傾向が見られた。これは、長短金利差の縮小、社債金利の上昇、ドルの急激な高騰といった複合的な危険シグナルが同時に点灯している状態を示す。現在のスコアはプラス圏に戻ってきているため、目先は安定していると考えられるが、今後の動向には注意が必要だ。
Q. 今後、特に注目すべき金融市場の動向は何だろうか?
今後、特に注視すべきは2025年後半から2026年にかけての米国の金融政策の動向である。米国が利下げを完了するタイミングは、日本を含む世界の金融市場に大きな影響を与えるだろう。米国が利下げサイクルを終えれば、再び為替市場で円安圧力が強まる可能性がある。その際、日銀がインフレや円安を抑えるために、利上げのペースを加速せざるを得なくなるかもしれない。
これは、日本の経済成長の足を引っ張り、株式市場にも負の影響を与えるリスクがある。我々個人投資家は、長期・短期金利差やセントルイス連銀のデータに基づく投資環境スコアといった指標を常にチェックし、今後の米国と日本の金融政策の方向性を見極めることが肝要だ。