PIVOT TALK BUSINESS
基礎解説 ビットコインとステーブルコイン
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2025年9月26日

市場で取引される暗号資産は実に約1400万種。 中でも、今話題のステーブルコインの立ち位置は?ビットコインと何が違う? ピクテ・ジャパン 大槻奈那氏に市場から見た暗号資産の現在・未来を聞いた。 <ゲスト> 大槻奈那|ピクテ・ジャパン シニアフェロー 国内外の金融機関、格付機関で金融調査研究に従事。...
市場がみるビットコインとステーブルコインの未来
デジタル経済が加速する現代において、暗号資産は金融市場の新たな潮流として注目を集めている。特にビットコインとステーブルコインは、その特性から大きな関心と同時に多くの疑問も投げかけられている。ステーブルコインの発行者側の視点だけでなく、市場がこれらの暗号資産をどう評価しているかという中立的な視点から、その動向と今後の可能性をピクテ・ジャパン 大槻奈那氏に聞いた。

Q. 暗号資産の基本を教えてください。ビットコインとステーブルコインの主な違いは何ですか?
暗号資産は、ブロックチェーン技術を用いて取引されるデジタル的な資産の総称だ。かつて「仮想通貨」と呼ばれたものが、現在は「暗号資産」が正式名称として定着している。
暗号資産の中でも、ビットコインとステーブルコインは性質が大きく異なる。ビットコインは市場の需給によって価格が大きく変動する一方で、ステーブルコインは法定通貨(米ドルや日本円など)と1対1で価値が連動するように設計され、価格が安定している。
このステーブルコインの安定性は、発行体が受け取った法定通貨を同額の準備金として保有することで担保される。これにより、現実世界の現金に近い安定した価値での取引が可能となる。
Q. ビットコインは「デジタルゴールド」と言われますが、安全な投資先と言えるのでしょうか?
ビットコインが「デジタルゴールド」と称されるのは、暗号資産市場における基軸通貨的な位置付けを示す比喩表現だ。これは価値の保存手段としての本物の金(ゴールド)とは性質が異なり、直接的な関連性は薄い。

ビットコインは株式との分散効果が期待できない。ナスダック株価指数などハイテク株と高い相関関係を示すため、株式ポートフォリオのリスクヘッジにはならない。株式が下落すれば、ビットコインも共に下落する可能性が高く、損失拡大のリスクを抱えることになる。
一時期流行した企業によるビットコイン大量保有「トレジャリー戦略」も陰りが見える。ビットコイン自体の価格上昇が期待できなくなると、これを保有する企業の株価プレミアムも剥落するため、その魅力は薄れつつある。
Q. 急成長するステーブルコイン市場の現状と、その主な使われ方はどのようなものでしょうか?
ステーブルコインの市場は急速に拡大しており、年間決済額はVisaとマスターカードの合計額を上回る規模だ。現在の主な使途は、暗号資産取引における迅速かつ低コストな決済手段として、トレーダーが利用する点にある。

2022年のテラUSD暴落で一度信頼が揺らいだが、発行体が準備金の監査報告を公表するなど透明性を高める努力が進んでいる。しかし、グラフを見ると時折価格が法定通貨と乖離するリスクが残っており、100%の安定性にはまだ至っていない。
将来的には国際送金における活用が期待されている。現在の国際送金システムSWIFTは手数料が高額だが、ステーブルコインはより低コストな代替手段となる可能性がある。これは企業にとって大きなメリットだ。
Q. ステーブルコインの発行体が莫大な利益を上げているのはなぜですか?
ステーブルコインの発行は、発行体が巨額の利益を得られるビジネスモデルにある。利用者に金利を支払わない一方で、集めた法定通貨(準備金)を高金利の米国債などで運用し、その利息収入をほぼ独占できるからだ。

この収益性の高さを示す事例として、最大手のテザー社は、わずか100人程度の社員数で、20万人規模のシティグループに匹敵する年間2兆円もの利益を計上している。この状況が新規参入を促し、市場の競争を激化させている。
Q. 日本でのステーブルコイン普及の可能性と、円の国際的地位への影響についてどう考えますか?
日本はステーブルコインの規制で世界に先行しているものの、市場での普及には大きな課題を抱える。国内には「〇〇ペイ」といった多様なデジタル決済サービスが既に浸透しており、ステーブルコインがこれらの代替となるには、独自の強力なメリット提示が不可欠だ。
日本での普及の鍵は、国内リテール決済ではなく、既存サービスにはない「国際送金」の低コスト性や、国内で1200万口座を超える「暗号資産取引」との連携だろう。これら特定のユースケースで優位性を示せるかが問われる。
円建てステーブルコインが普及しても、それによって円の国際的な地位が向上する可能性は低い。ドル建てステーブルコインはドルの覇権を補強する可能性があるが、円が同様の道をたどるには規模的・構造的に困難が多い。

Q. 日本の特殊な状況下で、ステーブルコインに特別な活用法はありえますか?
日本では多種多様なデジタル決済サービスが存在するが、ステーブルコインはこれら相互の価値移動を円滑にする「ハブ(基盤通貨)」としての役割を担う可能性を秘めている。デジタル給与をステーブルコインで受け取ることで、各種決済サービスやポイントへの交換が低コスト化される未来もあり得る。
しかし、日本のキャッシュレス化を推進した「ポイ活」文化が普及の壁となる可能性もある。ゼロ金利時代に比べて預金金利が上昇した現在では、少額のポイントの魅力は相対的に低下しており、新たなインセンティブや工夫なしには、従来の普及戦略は通用しにくいだろう。
Q. 暗号資産市場に参入する個人投資家が、特に注意すべきことは何ですか?
今後の暗号資産市場の成長は、機関投資家のような大口プレイヤーの参入と、不正流出や詐欺の防止が重要な鍵となる。ひとたび大規模な不正が発生すれば、市場がこれまでに築き上げてきた信頼は容易に失われ、発展が停滞するリスクを抱えている。
個人投資家は特に詐欺に対して細心の注意を払うべきだ。株価や暗号資産の価格が大幅に上昇している時期には、「ありえない高利回り」を謳う詐欺が横行しやすくなる。あたかも現実味を帯びたかのような言葉で誘惑されるため、警戒が必要だ。
投資を検討する際は、必ず情報の出所(一次ソース)を厳しく確認し、甘い儲け話には決して乗らないこと。メディアなどで話題になっているからといって安易に飛びつくのではなく、常に慎重な姿勢を保つことが、自身の資産を守る上で極めて重要となる。