PIVOT Vlog
ドラマの楽しみ方【歌人 俵万智】
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2025年9月22日

PIVOTのMC陣やスペシャルゲストが「深堀りしたいテーマ」を、自由に語るアプリ・Web限定のトークコンテンツ「PIVOT Vlog」 ▼ゲスト 俵万智|歌人 1962年大阪府生まれ。歌人。早稲田大学第一文学部卒業。1988年に現代歌人協会賞、2021年に迢空賞を受賞。『サラダ記念日」の他、歌集、...
歌人・俵万智が語る「ドラマの楽しみ方」〜SNSでの交流から朝ドラの和歌まで
ドラマとの出会いで、意外な記憶がよみがえることがある。歌人・俵万智が語る「ドラマの楽しみ方」では、朝ドラ「あんぱん」で蘇った中学時代の恋の思い出から、韓国ドラマ「愛の不時着」のファン同士の交流まで、コンテンツを楽しむ多彩な視点を紹介。"非公式応援歌人"として創作意欲を刺激されたエピソードも明かす。

Q. 最近印象に残ったドラマや作品はありますか?
朝ドラの「あんぱん」をずっと見ていて楽しかった。特に印象に残ったのは、やなせたかしさんが「詩とメルヘン」という雑誌を作るシーンだ。ドラマを見ていると思いがけない記憶が蘇ることがある。
中学生の時に少し憧れていた男の子に年賀状を出す際、やなせ先生の詩を書いて送ったことを何十年ぶりかに思い出した。「一月一日 初日の出 昨日と同じ朝だけど なぜか新鮮 なぜか◯◯…」といった内容の詩だった。
その男の子は「万智ちゃんの詩がとても素敵で、ずっと覚えているよ」と言ってくれた。実はそれがやなせ先生の詩だということを言いそびれてしまった。「とても素敵なことでしょ?」と応じただけで、嘘はついていないつもりだったが、ずっと心に引っかかっていた。もし当時の彼がこれを見ていたら、ごめんなさい!
Q. コンテンツを楽しむ際に心がけていることはありますか?
純粋に楽しむことを第一にしている。印象的なセリフがあれば「素敵だな」「この脚本家はすごいな」と思う。また、俳優さん繋がりで作品を追いかけることも多い。例えば「愛の不時着」の後はほとんどヒョンビン出演作を見た。

「あんぱん」では妻夫木聡さんの演技が素晴らしく、この俳優さんの作品をもっと見てみたいと思っている。次は妻夫木さんが出演している作品を数珠繋ぎで見るつもりだ。このように俳優さん軸で作品を追いかけるのも一つの楽しみ方だと思う。
Q. SNSでの交流も作品の楽しみ方の一つになっているのですか?
そうだね。NHKの朝ドラ「舞いあがれ!」の時、主人公の幼なじみが短歌を作る設定だった。これにすごく刺激を受けて、毎朝短歌を作って投稿していた。
物語の流れから「今日、貴司君(主人公の幼なじみ)は絶対舞ちゃん(主人公)への短歌を詠むはず」と予想して、放送前に自分なりの貴司の短歌を詠んで投稿したりもした。
後日、脚本家の方と縁あって会った時に「俵さんの投稿を見ましたよ」と言われた。「非公式応援歌人」と呼ばれたこともある。ドラマの展開を追いつつ、時に先回りするような創作活動も楽しみの一つになっている。
Q. 和歌が登場するドラマには特に惹かれるのですか?
和歌が出てくるとやはり一歩前に身を乗り出す感じがある。昨年放送された「光る君へ」は一年間ずっと追いかけて見ていた。物語の中に和歌が組み込まれている作品は特に好きだ。

「光る君へ」ではNHKの短歌の番組とコラボして、出演者や音楽担当者、衣装担当者などがゲストとして和歌を読むという企画が1年間続いた。これは本当に贅沢な体験だった。
Q. ドラマを通して和歌の見方に変化はありましたか?
大きく変わった。和歌というと本で読むものというイメージが強かったが、ドラマを通して生身の人間同士の生きたコミュニケーションツールとして機能していたことを実感できた。
例えば「光る君へ」で藤原道長が詠んだ「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思えば」という有名な歌。道長がこれを詠んだのは歴史的事実として知られているが、ドラマの中で実際の場面を見ることで、より深く理解できた。
「この世は我が世」と言い切った後、もう後戻りできない状況になったという肉声で和歌が詠まれる重みを感じた。教科書で学ぶのとはまた違った和歌の力を実感できる瞬間だった。
Q. 同じ作品を好きな人との交流についてはどう思いますか?
同じドラマを見ている人をSNSで見つけると楽しい。「愛の不時着」仲間とは今でも交流が続いている。韓国ドラマの情報交換もできるし、「この人が薦めるなら間違いない」と思える信頼関係も生まれる。

自分一人の感想だけでなく、立体的に作品を楽しめるようになる。例えば「愛の不時着」では、主人公二人がいつ結ばれたのかという点で盛り上がった。脚本上は明確に書かれていないため、視聴者の想像に委ねられている。
多数派は「スイス滞在時説」、次に「ソウルでの最後の頃説」、さらに「北朝鮮滞在中説」など、様々な意見があって面白かった。私個人は「ソウルの、最後ではなく最初の日」説を支持している。こういった議論は一人で見ていたら絶対に生まれない楽しさだと思う。
Q. 最後にドラマの楽しみ方についてアドバイスはありますか?
同じドラマを見ている人をSNSで見つけて交流することをお勧めする。一人で楽しむのも良いけれど、共感したり、異なる解釈を知ったりすることで、作品の新たな一面が見えてくる。
また、好きな俳優さんの作品を追いかけていくのも一つの方法。ドラマは単なる娯楽ではなく、時に過去の記憶を呼び覚まし、新たな創作意欲を刺激してくれる素晴らしいものだと思う。純粋に楽しむ気持ちを大切にしながら、自分なりの楽しみ方を見つけてほしい。