PIVOT TALK BUSINESS
ふるさと納税 制度と地方創生の未来
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2025年9月20日

来月1日からふるさと納税のポイント付与が全面禁止になる。さちふる・笹川千尋代表は「制度自体の意義を見つめ直す機会だ」と述べる。地方創生のあり方はどうなるのか?消費者に求められることとは? <ゲスト> 笹川千尋|さちふる代表 福井県を中心に「ふるさと納税」の中間事業者として活動。受託自治体では3年間...
ふるさと納税2.0、寄付文化と地域活性の融合へ ~「自治体格差」と「災害支援」の最新事情~
ふるさと納税は制度発足から15年以上が経過し、今や1兆2000億円規模の市場に成長しました。しかし、返礼品競争の過熱や自治体間の格差など課題も浮き彫りに。そんな中、災害支援や市民参画など新たな展開も生まれています。福井からふるさと納税制度を支える、さちふる・笹川千尋代表に最新動向と未来像を聞きました。

Q. ふるさと納税市場で今、自治体の二極化が進んでいるそうですが、具体的にどのような状況なのでしょうか?
総務省の最新発表資料を分析すると、上位20自治体で約2533億円、市場全体の約20%を占めています。さらに上位200自治体まで広げると約60%に達する状況です。ふるさと納税市場全体は伸び続けていますが、実は全体の36%にあたる642の自治体で前年割れが起きています。
返礼品の競争が激化する中で、うまく対応できている「匠な自治体」と取り残されていく自治体の差が広がっているのです。制度開始以降、返礼品の種類は約100万アイテムを超え、競争はさらに激しくなっています。
ただし、交付税制度により、多くの自治体では住民が外部へふるさと納税で流出させた税金の75%が国から補填される仕組みになっているため、収支が極端に悪化することは少ない状況です。
Q. 市民が寄付金の使い道を決める自治体があるとのことですが、どのような取り組みなのでしょうか?
福井県坂井市では、2008年からふるさと納税の使い道を全て市民が決める制度を条例化しています。「市民参画検討委員会」が年に3回程度開催され、市民から上がってきた提案を議論し、使い道を決定していきます。

具体例として、海岸近くの「芝政」で夕日を見ながらフェスを開催する企画がありました。通常なら1億円程度の予算が必要で実現は難しいところですが、ふるさと納税を通じて支援を集め、実現にこぎつけました。今では年間約1万人が集まるイベントになっています。
また、ふるさと納税をきっかけに誕生したゆるキャラ「さかいほやまる」は、誕生してすぐにゆるキャラグランプリで全国3位を獲得。SNSのフォロワーは1万4000人を超え、キャラクターを目当てに市を訪れる人も増えています。福井弁を使うキャラクターの影響で、ファンが福井弁を使うようになるなど、地域PRにも大きく貢献しています。
市民による使い道決定は一見すると市外からの寄付を集めにくいようにも思えますが、使い道の透明性と丁寧な寄付者対応により、リピーターが非常に多いのが特徴です。
Q. ふるさと納税の返礼品として、モノ以外にどのような体験型サービスが人気なのでしょうか?
岐阜県日置市の「おっちゃんレンタル」が非常にユニークな事例です。釣りの名人におっちゃんを釣りに連れて行ってもらえるサービスで、大人気のため今年分はすでに完売し、来年分の予約受付が始まっています。さらに虫取り名人など、「おっちゃんレンタル2号、3号」も登場し、シリーズ化しています。

こうした体験型返礼品は最近増加傾向にあり、都市部の自治体でも鉄道運転士体験や有名自動車メーカーのテストドライビングコース体験など、その地域でしかできない特別な体験を提供する動きが広がっています。
ふるさと納税は当初「地域の美味しいものをお取り寄せする制度」というイメージでしたが、生活必需品へと広がり、現在ではコロナ禍を経て「その地域でしか体験できない特別な経験」を提供する方向へと進化しています。
Q. 災害支援としてのふるさと納税の役割はどのように変化していますか?
熊本地震以降、災害支援としてのふるさと納税の役割が急速に高まっています。昨年の能登半島地震では、大手ポータルサイトを通じて80億円以上の寄付が集まりました。

特筆すべきは、災害支援の場合、ほとんどのポータルサイトが手数料を取らず、迅速に対応している点です。能登半島地震では1月1日に災害が発生し、翌2日には多くのサイトが寄付受付を開始。多くの寄付者が返礼品なしを選択するなど、純粋に困っている人を助けたいという気持ちで寄付をしています。
寄付者からは「街頭募金も悪くないが、ふるさと納税なら確実に自治体に届くと思った」という声も多く、信頼性の高さが評価されています。災害がないときは返礼品を通じた生活防衛として、災害時には支援として機能するという「両翼」の役割を果たしつつあります。
Q. ふるさと納税は日本の寄付文化にどのような影響を与えていると考えますか?
2009年には約5450億円だった国内の寄付総額が、2020年には1兆2126億円に増加。そのうちふるさと納税は約6700億円を占めています。欧米と比較すると、アメリカではGDPの約1.55%が寄付されているのに対し、日本は約0.2%と依然として差がありますが、着実に成長しています。
興味深いのは、総務省発表の控除適用金額が8710億円なのに対し、ふるさと納税額は1兆2728億円と約4000億円の差があることです。これは純粋な寄付として使われている部分が大きいことを示しており、ふるさと納税を通じて寄付文化が育まれていると考えられます。
Q. ふるさと納税制度の未来像についてどのように考えていますか?
ふるさと納税は「税の偏在解消」という理念のもと、寄付者も地域も自治体も嬉しいという三方良しの制度として発展してきました。韓国が日本のふるさと納税を参考に類似制度を導入したことからも、その価値は認められています。
市場拡大に伴い様々な問題が生じていますが、制度の持続可能性を最優先に考え、ルールを遵守しながら発展させていくことが重要です。様々な立場の人が関わる制度であるため、どのような未来像が理想かは一概には言えませんが、寄付の使い道にも注目し、透明性を高めていくことが大切です。
ふるさと納税を通じて、私たち一人ひとりが税金や寄付の行方に関心を持ち、自分のお金がどのように使われるかを考えるきっかけになることが、この制度の本来の価値を高める道筋ではないでしょうか。