PIVOT TALK BUSINESS
総裁選シナリオと注目の米国経済
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2025年9月13日

10月4日投開票と迫まる自民党総裁戦。 株価・為替・国債の現状とは? 日銀と市場の動きはどうなっていくのか? 総裁選勝負の分かれ目とは? ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏に聞いた。 <ゲスト> 矢嶋 康次 | ニッセイ基礎研究所 エグゼクティブ・フェロー 1992年東京工業大学卒業後、日本生命保...
石破政権退陣後の市場の現在地と展望 〜円高・円安の行方と総裁選の影響〜
石破政権の辞任表明から1週間。市場はどのように反応し、今後の自民党総裁選がどう影響するのか。為替・国債・株式市場の動向とともに、アメリカの政策との関連性について、ニッセイ基礎研究所エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次氏に聞いた。

Q. 石破政権辞任後の1週間、市場の動きはどう捉えるべき?
日本の株式市場は上昇しているが、これは主にアメリカ市場に引っ張られた動きだ。9月はアメリカが利下げを開始し、景気を底上げできるかという瀬戸際のタイミングに、日本の総裁選が重なり、相乗効果でプラス方向に動いている。
石破総理の辞任は市場にとって大きなサプライズではなく、ある程度織り込み済みだった。むしろ「これ以上悪くなることはない」という見方から、次の政権への期待感が表れている。

一部で「高市トレード」(高市早苗氏が次期総裁になるとの見方による円安・株高の動き)の可能性も取りざたされているが、複合的な要因が重なっている点に注意すべきだ。
Q. 日米株価の動向から読み取れる現状は?
4月頃のトランプ氏の関税発言以降、日経平均株価はアメリカ市場よりも大きく下落した。これは日本企業への悪影響を市場が懸念したためだ。しかし、その後アメリカ市場の回復に合わせて日本市場も戻し、8月からは日本市場の上昇が加速している。
特に注目すべきは、石破総理の辞任発表後、日本市場がアメリカ市場を上回る上昇率を示している点だ。これは日本国内の政治要因が好感されたことを示している。
Q. 為替市場はなぜ円高に向かわないのか?
通常、アメリカが利下げ局面に入ると金利差が縮小し円高に振れるはずだが、現在はそうなっていない。為替は春先から145円から150円程度のレンジ内で推移している状況だ。
この背景には複数の要因がある。
最も悲観的な見方では「日本への投資に意味がない」と考える投資家が多く、円資産をドル資産に替える動きが続いているという解釈がある。
また実務的な観点では、日本企業が米国で稼いだドルを円に換えずに、米国内に留め置く傾向が強まっている。以前は決算期に日本に資金を戻す動きがあったが、米国での再投資が多いため、円買いの需給が発生しにくくなっている。
Q. 長期金利の上昇は財政への不安を示しているのか?
日本の長期金利、特に30年債の金利が上昇しているが、これは受給バランスの変化が主因だ。日本は20年以上金利がほぼゼロの状態が続き、「適正水準」の感覚が失われている。
生命保険会社など長期運用を行う機関投資家が、制度的な要請から国債を買っていた状況が変化し、10年債よりも30年債の上昇が大きくなっている。ただし、財政への不安が主因であれば10年債も同様に上昇するはずだが、そうなっていない。

注意すべきは、受給バランスの変化だけでこれだけ金利が上昇している状況で、今後政策変更などのサプライズがあれば、市場が大きく動揺する可能性が高いことだ。
Q. 今後のFRBの利下げ見通しをどう見ているか?
市場は今年中に3回の利下げを織り込んでいるが、個人的には2回程度と予想している。アメリカのインフレ率はまだ十分に低下しておらず、急激な利下げがイン
フレを再燃させる懸念もある。
FRBの政策判断には複数の視点がある。一つは将来の景気悪化に備えて政策余地を残しておくことで、これは一度に大幅な利下げを避ける理由になる。一方で、市場の予想を上回る利下げで景気を刺激する意図もありうる。
特に重要なのは、今年の残りの期間のアメリカの景気動向で、これは株価だけでなく来年の大統領選挙にも直結する重要な要素だ。
Q. 自民党総裁選の候補者は市場からどう見られているか?
市場の見方は「高市早苗氏 vs その他の候補」という構図になっている。高市氏以外の候補は経済政策に大きな違いがなく、討論が進むほど政策の差異は縮まる可能性が高い。
選挙で重要なポイントは初回投票で上位2名に誰が入るかだ。候補者が経済政策で差別化を図ろうとしても、日米貿易交渉の破棄や特定の野党との連携など極端な提案はできないため、最終的には国家観や思想的な違いが争点になる可能性がある。

投資家にとっては総裁選の結果よりも、その後の政権運営、特に野党との連携がうまくいくかどうかが重要だ。ただし、短命政権が続く現状では、政策の実現性より短期的な材料出尽くしによる反動が起きやすい。
Q. 日本銀行の利上げは市場にどう影響するか?
年内に1回程度の利上げが見込まれているが、日銀は経済環境が悪化しない限り動かないだろう。半年に1回程度の緩やかなペースで利上げが行われるとしても、大きな影響はないと予想される。
Q. 投資家が注目すべきポイントは?
アメリカ経済の動向が最も重要だ。現在のメインシナリオは、FRBが利下げで経済を底上げし株価を上昇させるというものだが、最近の雇用統計などからは景気の実態が予想より悪い可能性も指摘されている。

日本については企業業績の動向が鍵になる。現在は来年にかけて10%程度の減益が予想されているが、米国の関税政策が確定したことで今後どう修正されるかが重要だ。10月の中間決算発表は特に注目すべきだ。
日本企業には賃上げの余力があっても、業績悪化を理由に賃上げを見送る企業も出てくる可能性があり、この点が今後の日本経済の分岐点になるだろう。