PIVOT TALK FOOTBALL
アメリカ戦レビュー:完敗から見えた2つの課題
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2025年9月11日

敗北に終わった日本代表のアメリカ戦。なぜ完敗したのか?新戦力、新戦術から得た学びとは何か?アメリカ遠征から見えた課題とは何か?現地取材中のミムラユウスケ氏に聞いた。 <ゲスト> ミムラユウスケ|スポーツライター 2006年7月にスポーツライターとしての活動をはじめ、2009年1月にドイツへ渡る。ド...
日本代表、W杯に向けた強化策のリアル~過酷な条件下で見えた課題と成長~
日本代表対アメリカ代表の一戦を分析する「ピボットフットボール」から、試合の核心に迫る対談内容をQ&A形式でお届けする。スポーツライターのミムラユウスケ氏が語る戦術分析と選手評価から、森保ジャパンの現在地と今後の展望が見えてくる。

Q. アメリカ戦の結果をどう総括する?
今回のトライに関しては10点満点で7点評価できる。ただ結果としては4点か5点という低い評価で、内容とトライした過程が大きく乖離した試合だった。日本で見ている人よりもポジティブに見ている。

怪我人も多い中で経験の浅い選手を起用し、全員スタメンを変更した点で力の差が出た。日本は移動の翌日にわずか1日しか練習できなかったが、アメリカは2日準備に当てられた。韓国に敗れたアメリカにとって負けられない試合だったこともプレッシャーとなった。
また、選手たちの間では「この移動条件では試合をするのが難しいのではないか」という空気もあった。これは森保監督が8割の責任を負うべきだが、選手側にもポジティブな空気を作れなかった2割の反省点はある。
Q. 厳しい日程と移動を組んだ理由は?
これはワールドカップ本番に向けたシミュレーションとして意図的に行われた。ただし本番のグループリーグでは1試合目と2試合目の間に6日ほど空き、2試合目から3試合目は3日、決勝トーナメントでも3〜4日の間隔がある。今回のように中2日で移動し、その1日目に移動するという過酷な日程は本番では基本的にない。
あえて厳しい条件下に置くことで選手たちのリアクションを確認し、スタッフの準備体制も試した。本番はもう少し楽な日程になるため、この経験があれば怖くないという意図があった。最も過酷な状況下でのシミュレーションだったと言える。
Q. 全員を入れ替えたスタメンの意図は?
最初から全員入れ替えを考えていたと推測される。ディフェンスラインに怪我人が多かったため、長友選手が左のセンターバックという起用になったのも仕方なかった。
守備においては、相手が3バックで来るか4バックで来るか読めなかったため、両方の守備のプレスのかけ方を練習していた。ただ前日練習は最低でも1時間程度しかできず、そのほとんどがそこに費やされた。
Q. 新しい戦術はどのようなものだった?
特に目立ったのはゴールキックの場面での新しい試み。3バックの場合、通常はリベロともう1人のセンターバックがペナルティエリアに入り、片方のセンターバックを上げる形でビルドアップするか、リベロが前に上がってボランチ化する形が主流だ。
今回は荒木選手とダブルボランチの一角である藤田選手の2人がペナルティエリアに入り、関根選手と長友選手をサイドバック的な位置に配置するというトライをした。これは七海コーチからのアイデアで、素晴らしい試みだった。
このビルドアップの時、真ん中にいる佐野選手と小川選手のエリアがスカスカになるため、鈴木優磨選手と伊藤純也選手がそこに顔を出して出口を作る。それでも手詰まりになったら高く上がっている望月選手にロングボールを蹴るという設計だった。
Q. GK大迫の評価は?
大迫選手は素晴らしかった。この試合では枠内シュート11本、全体で19本のシュートを受ける中で、大迫選手がいなければもっと失点していたはず。現在、ゴールキーパーの正守護神はシュミット・ダニエル選手だが、セカンドゴールキーパーの位置は大迫選手がほぼ掴んだと言えるほどのパフォーマンスを見せた。
Q. 佐野選手と藤田選手の評価は?
佐野選手は良さが出なかった。頭の中にあるアイデアはレベルが高いと思うが、それを三戸選手や遠藤選手、道安選手、久保選手のように主張できるかが鍵。代表経験が浅い中で積極的にアイデアを出せているかというと、できていない部分もある。
佐野選手は所属チームのマインツでは明確なタスクを与えられそれを実行できる選手。ただ代表では明確なタスクを与えられるような作りになっておらず、みんなで意見を出し合う形式。これは所属チームと真逆の環境であり、そこで佐野選手の良さはまだ十分に発揮されていない。

藤田選手はビルドアップの部分に多くの仕事が求められ、所属しているザンクト・パウリでの良さが出なかった。ザンクト・パウリでは守備でのプレッシングから攻撃につなげる形だが、今回はビルドアップに気を使う場面が多く、ボックス内に入っていくような攻撃の良さが見られなかった。
Q. 望月選手のウイングバックとしての評価は?
望月選手は攻撃面では7点評価。逆サイドからのクロスに対してゴール前に入る能力は三戸選手やローアン選手と同じくらい高く、素晴らしかった。
ただ守備面では5点評価。1失点目では縦に行かれてしまい、Jリーグでは経験しないレベルの場面だった。世界基準ではもっと対応すべき場面であり、今の守備力ではワールドカップで長く起用するのは難しい。攻撃面では良いものを持っているが、守備面でまだレベルアップが必要。
Q. 鈴木優磨選手の評価は?
鈴木優磨選手は守備でも良く、この試合の日本の最大の決定機は彼がパスをカットして伊藤選手へクロスを送った場面だった。ビルドアップの場面でも臨機応変に顔を出し、判断力を発揮した。
彼はフライブルクでシュスター監督(昨シーズンのブンデスリーガ最優秀監督)から厳しく指導を受けている。「厳しく言ってもらうのが好き」という姿勢で取り組んでおり、今後の伸び代が楽しみな選手だ。
Q. 小川航基選手の評価と将来性は?
小川選手は今回、良さを出せる展開ではなかった。彼はワンタッチゴーラーとしての上手さがあり、クロスに合わせる能力は現在の日本人フォワード候補の中で最高レベル。ただビルドアップでの貢献度は必ずしも高くない。
小川選手をワールドカップメンバーに入れるべき理由は2つある。1つはクロスから合わせる能力が抜群に高いこと、もう1つはチームに対する責任感や良い空気感を作る能力。例えば2失点目の場面について「集中が切れてしまった。マークがずれたところから始まっているが、集中を切らさないためのアクションを考えないといけない」と自己分析していた。チームに良い影響をもたらす選手である。
Q. 今回の遠征で序列が上がった選手は?
もし3バックがメインならば鈴木優磨選手は入れるべき選手。ただ4231の場合、トップ下は1枠しかなく、3バックの343では2枠あるため、フォーメーション次第では難しい判断になる。
藤田選手も立場を上げてきた。10月のオーストラリア戦前は練習前の様子を見ると入りづらそうにしていたが、今では練習でも一番声が出ており、ザンクト・パウリでもプレッシングサッカーの中で良さを発揮している。キャラクター面でも「声を出すのは空気を吸うのと同じ」と話すほど自然に発信できる選手で、序列を上げたと感じる。
Q. ワールドカップで点が欲しい時、どう取りに行く?
最終予選ではコーナーキックのセットプレイで点を取ることができた。ただこれを本大会でどう生かせるかが課題。既にサウジアラビア戦やインドネシア戦では日本のセットプレイに対策が取られてきている。
今後はミトマ選手の良さを活かすか、ドゥワン選手をウイングバックではなく中央に置くような形を作れるとよい。2005-2006シーズンのバルセロナのように、試合の状況に応じて攻撃陣の配置を変え、より攻撃にアクセルを踏むような形を作る必要がある。ただ、現時点ではその形は見えていない。
Q. 次の試合ではどのようなテーマが重要か?
次の10月のパラグアイ戦、ブラジル戦では、今回トライしたことについて選手たちからのフィードバックを取り入れることが重要。監督は「試合後はロッカールームで話したが、それ以上はホテルではできない」と話し、今後コーチ陣がヨーロッパに視察に行き、選手と会ってフィードバックすると語っていた。

特に今回の課題だった「決め打ちではなく臨機応変に対応すること」と「限られた練習時間でも密度の濃い練習をすること」がテーマになるだろう。ブラジル戦は特に良いテストになる。ブラジルは韓国と試合をした後に日本に来るため、コンディション的にも公平な状況で真価を問える。