ビジネス虎の巻
“伝える”ではなく“伝わる”話し方のコツ【ReHacQ高橋弘樹】
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2025年9月8日

”伝える”ではなく”伝わる”話し方にするにはどうすればいいのか。視聴者に伝わる番組を生み出すコツとは。伝わるプレゼン術の話し方とは。ReHacQのプロデューサーである高橋弘樹氏に“伝わる”話し方の秘訣について聞いた。 <ゲスト> 高橋弘樹/ReHacQ プロデューサー <目次> 00:00 ビジ...
「伝える」と「伝わる」の違いとは?元テレビマンが教える人の心を掴む話し方
テレビ東京のヒット番組「家、ついていっていいですか?」の企画演出や、YouTube登録者158万人の経済メディア「ReHacQ」のプロデューサーとして活躍する高橋弘樹氏。伝わる話し方のプロに、そのノウハウを聞いた。

「伝える」は自分の行為、「伝わる」は相手との対話
Q. 「伝える」と「伝わる」はどう違いますか?
「伝える」は自分がする行為に過ぎません。一方「伝わる」は相手とのコミュニケーションが完結すること。単に自分が満足して終わるのではなく、相手に正確に内容が届いている状態が「伝わる」といえます。
Q. テレビや動画制作において、「伝わる」ものを届けるために意識していることは?
大勢に伝えるのは難しいものです。僕が若いディレクターに言うのは「100人のペルソナを憑依させて」ということ。例えば80歳の青森のおばあさん、10歳の東京の男の子、20代の大学生、建築の仕事をしている人など、様々な視聴者を想像します。問題が発生したときは、その100人の中から誰かを呼び起こして考えます。この表現は若い女性が嫌がるかな?と思ったら、20代の港区女子になりきってチェックする感じです。

Q. その「視聴者を想像する」スキルは訓練で身につきますか?
100人のペルソナを想像するところまでは、5年くらい訓練すれば到達できると思います。しかし、その先にはさらに難しい問題があります。視聴者の集中度の違いです。テレビを100%の集中力で見ている人もいれば、家事をしながら40%くらいの集中度で見ている人もいます。そこで大切なのは、大事なことを何度も繰り返すことです。視聴者が「それさっき聞いたじゃないか」とコメントすることもありますが、あえて重要なことは繰り返します。分かりにくいことや大事なことは、少し間を置いて再度説明しますし、番組の初めに大事なことが出たら、終わりの方でもう一度触れます。
自分だけが満足する「伝える」から相手に届く「伝わる」へ
Q. 視聴者の注意を引くために工夫していることはありますか?
テレビは家族と会話しながら見るものなので、大事な情報が流れる前には注意を引く必要があります。音やナレーション、あるいは会話の中で一瞬静かになるなど、様々な手法があります。40%の集中度の人にも気づいてもらいつつ、100%集中している人には鬱陶しく感じさせないようにバランスを取ることが大切です。
Q. 「家、ついていっていいですか?」がヒットした理由は何だと思いますか?
普段見せない姿を見せられることだと思います。終電を逃した人の家にその場でついていくという番組なので、整理された家ではなく、ありのままの姿や、酔っぱらって本音が出る姿、深夜独特の空気感で出る本音などが、当時のテレビでは珍しかったのです。

Q. その番組はどのような思いから生まれたのですか?
元々は別の番組「空から日本を見てみよう」で横浜の海食崖にあるマンションを取材した経験からきています。そのマンションに住む女性に話を聞くと、亡くなった船乗りの夫が港を出入りする船を見るために、崖の上の景色が見えるマンションに住んでいたことを知りました。「住む家に人のドラマがある」と気づいたのが、番組のベースにある気持ちでした。
Q. 見知らぬ人の家についていくことを許してもらうには、どうしたのですか?
本当にその場所に興味があることを伝えました。「本当に好きなんです」「見たいんです」という気持ちを素直に伝えることが大切です。相手の気持ちを最優先にして接することが重要だと思います。
伝わるプレゼンの極意
Q. 企画を通すためのプレゼンではどんなことを意識していますか?
圧倒的な量を準備することと、シンプルにすることを意識していました。「家、ついていっていいですか?」の企画書もすごくシンプルでした。複雑なことを紙で説明する時は、なるべくシンプルにして、視覚的にイメージしやすくしています。例えば、企画書に夜中のタクシーの写真を大きく貼ったり、「世界の果てにひろゆき置いてきた」という番組では砂漠の写真にひろゆきさんをポツンと小さく配置したりしました。
アベマTVの藤田進さんは企画書を2.8秒くらいで見るんです。忙しいから月1回30分の会議しかなく、その中で多くの企画を見るため、2000文字も書いたら読まれません。テレビ東京の編成も同じで、すごい速度でページをめくっていました。だから少なく、ビジュアルに訴えるようにしなければなりません。
Q. 愛される話し方の特徴はありますか?
出演していただいた方には「話して良かった」と思ってもらえるようにしています。その人のネガティブな面も引き出さなければいけないこともありますが、最終的には「ここで話せて良かった」と思ってもらって帰れるようにしたいです。そのためには相手を好きになることを徹底しています。これは装っているのではなく、話しているうちに本当に好きになっています。また、嘘をつかないようにしています。社会的に正しいと思われていることでも、自分が違うと思ったら同意せず、嘘はつかないようにしています。
Q. 人の心を掴むプレゼンで大切なことは何ですか?
見る側の気持ちを考えることです。相手にとって何が必要で、どうしたら内容が伝わるかを常に考えています。例えば企画書は見る人の立場になって、短時間で理解できるように作る必要があります。また、相手の魅力を引き出したいという気持ちを持つことも大切です。その人のどんな面も描き出しながら、魅力を拾い上げようとする姿勢があれば、ネガティブなことを聞いても相手は受け入れてくれます。
テレビマンの視点と伝わる表現の極意
Q. 伝わらなかった経験はありますか?
視聴率が悪い番組は伝わっていなかったということだと思います。自分が面白いと思っても視聴率が悪かった企画はたくさんあります。例えば私は鉄道が好きで「乗り物天国」という企画をやったことがありますが、視聴率は悪かった。自分が面白いと思う鉄道の魅力を伝えられなかったのでしょう。逆に「家、ついていっていいですか?」は広く見られ、伝わったと感じています。
Q. インタビューで心がけていることはありますか?
相手の魅力を引き出すことを第一に考えています。例えばフィギュアスケート選手が泣いている理由を聞く場合でも、単に泣いた理由を知りたいのではなく、その人の悔しさや今後の思いなど、魅力を引き出したいという気持ちがあります。視聴者にその人のことを理解してほしい、良く思ってほしいという思いで接すれば、多少厳しい質問をしても受け入れてもらえると思います。
Q. 最後に、伝わる話し方のコツを教えてください。

まず、相手を好きになること。そして嘘をつかないこと。また、視聴者を常に意識し、どうすれば伝わるかを考え続けることです。大事なことは繰り返し、様々な角度から伝えること。そして何より、伝えたいという強い思いを持つことが大切です。結局のところ、自分が心から伝えたいと思うメッセージは、きっと相手にも届くものです。