PIVOT TALK FOOTBALL
日本代表・メキシコ戦レビュー
(360)
6,983回視聴
2025年9月8日

メキシコ代表と0対0で引き分けた日本代表。試合を通して見えた、新たな収穫とW杯本線に向けた課題は何か?次のアメリカ戦の注目点はどこか?現地取材中のミムラユウスケ氏に聞いた。 <ゲスト> ミムラユウスケ|スポーツライター 2006年7月にスポーツライターとしての活動をはじめ、2009年1月にドイツへ...
「三苫選手の最大の"被害者"発言の真意とは?メキシコ戦直後に迫った日本代表の強みと課題」
ピボットフットボールでは日本代表対メキシコ代表の試合後、スポーツライターのミムラユウスケ氏に独占インタビューを実施。現地オークランドから帰ったばかりのミムラ氏に、試合の分析と選手評価を詳しく聞いた。0-0のスコアレスドローに終わった一戦だが、その内容は非常に興味深いものだった。

Q. 試合全体の印象はどうだったか?
メキシコは常にW杯ベスト16に入るチームで、最高成績はベスト8。そのようなチームと日本が互角に戦えたことは評価できる。特に選手たちも「強度の高いチーム相手に競り負けなかった」と話していた。鎌田選手は「2020年5月に対戦した時と比べて、自分たちの成長を感じた」と言っていた。

メキシコは国内リーグが好調で、17回W杯出場してもベスト8の壁を破れていない。今回のメキシコは圧倒的な個の強さを発揮するタイプではなく、チームとしての戦い方が事前にスカウティングできたため、日本にとって組みしやすい相手だった点は冷静に捉える必要がある。
Q. 前半と後半でプレーの質に違いがあったのはなぜか?
前半の良い入り方には2つの理由がある。1つは前半20分ほど積極的にハイプレスをかける作戦だったこと。もう1つは相手が4-1-2-3の形だったところを、上田選手が相手のアンカーを消し、南野選手と久保選手で相手の2センターバックにプレッシャーをかけたことで、相手が長いボールを蹴らざるを得ない状況を作り出せた。
しかし相手のアンカーが負傷交代したことも影響してか、後半は相手が2アンカーに変更。日本の守備の優位性が徐々に失われていった。また前半最初の15分間で5本シュートを打ったが、残りの30分は0本だった。最初に飛ばして決めきれなかったことで相手が息を吹き返した形だ。
Q. 最初のハイプレスを持続できなかった理由は?
45分間ずっと激しいプレスを続けるのは現実的ではない。最初の20分で飛ばすというのが作戦だった。また相手が戦術を変えてきたため、日本のプレスがうまくはまらなくなった面もある。
選手たちも「前半最後の15分間のように押し込まれる状況を減らすには、最初の20分間でチャンスをものにすることが重要」と話していた。力のあるチームを相手に一方的に支配するのは難しいという認識を持っている。
Q. ハーフタイムでの興味深い出来事は?
遠藤選手から興味深い提案があった。前半のビルドアップでディフェンスラインの位置が高すぎたという指摘だ。相手がマンツーマン気味でマークしてくるため、3バックが高い位置でビルドアップを始めると中盤がコンパクトになりボールを奪われやすい。
遠藤は「もっとディフェンスラインを下げて相手を引きつけ、前線の選手がスペースを狙える形にした方がいい」と提案。実際に後半は遠藤が最終ラインに下がってフォーバックのような形を作り、相手の選手を引きつける狙いがあったようだ。まだ完全にうまくいったとは言えないが、試行錯誤している点は評価できる。
Q. ディフェンスラインの評価は?
相手の枠内シュートが1本だけだったこともあり、鈴木選手はそれほど仕事をする局面がなかった。渡辺選手によると、「チャレンジ&カバー」がうまくいった要因とのこと。相手選手がボールを持った時に激しく行き、誰かが相手のフォワードについた時は残りの選手でカバーするという関係ができていた。

板倉選手は評価6点だが、本来の能力を考えればもっとできるはずで、その期待値の高さからの採点。渡辺選手とセコ選手の2人は評価が上がった。セコ選手はクリア、タックル、インターセプトなどすべてのディフェンスアクションが最も良かった。渡辺選手はフェイエノールトでの経験を活かしてコンパクトに全体を統率しつつ、いいフィードも出していた。
Q. 中盤の遠藤選手と鎌田選手の評価は?
この2人はプレミアリーグの違いを見せた。5年前にメキシコに敗れた時との違いは、中盤の真ん中にプレミアリーグでバリバリやっている2人がいることだ。前半のチャンスもほとんど鎌田選手からスタートし、後半の南野選手の決定機も鎌田選手が上田選手に長いボールを出している。
鎌田選手は「クリスタルパレスでやっていることをそのまま表現しようとした」と話していた。代表に来たいという強い思いがあり、まだ痛みがある中でもパレスで復帰して代表に合流。プレミアリーグでの経験から来る自信とプレーの質の高さが出ていた。鎌田選手が交代した後はビルドアップの質が落ちたことからも、彼の重要性がわかる。
Q. ウィングバックの三苫選手と堂安選手はどうだったか?
今回のシステムではウィングバックの選手たちは守備に回る時間も含めてしんどい部分があった。堂安選手は前半に決定機があったので6.5の評価。前半残り15分は「5-4-1の形で守ることができた」と選手たちは話していた。
三苫選手については「今日のシステムの最大の被害者は三苫選手だった」とミムラ氏は指摘。三苫選手のようにドリブルで攻める選手が、守備で多くの労力を使わざるを得ない状況は適切だったのか疑問が残る。ゴールに近いポジションでの三苫選手のプレーがほとんど見られなかったのは残念だった。
後半のように日本がラインを下げて疑似カウンターを狙うなら、三苫選手は最初からツーシャドーとして起用する方が良かったかもしれない。三苫選手はトップコンディションではなかったこともあるが、本来の特徴を活かせなかった面がある。
Q. フォワードラインの評価は?
久保選手は前半最後に削られた影響もあり、後半は痛みがあったようだが、ビルドアップフェーズでは彼のセンスが光った。下がって相手を引きつけ、鎌田選手にフリーの状態でボールを入れるなど、攻撃の起点となった。
上田選手と南野選手は良い関係性を見せた。相手がマンツーマン気味に来る中で、上田選手が下がった時に南野選手がその裏を取るという連携があった。南野選手もセコ選手も、上田選手の楔としての役割、ボールを納める能力を高く評価していた。
最も決定機に近かったのは南野選手のボレーシュート。相手がマンツーマンで来る中、鎌田選手からスタートし、上田、久保、南野と繋いだ形は素晴らしかった。
Q. 監督・コーチ陣の評価は?
森保監督は6点の評価。選手交代や起用法ではもう少し改善の余地があった。特に三苫選手の使い方や前田選手をもっと早く投入するなど、別の選択肢もあったのではないか。
一方、コーチ陣の評価は高い。特に七海コーチの分析が素晴らしかったと複数の選手が語っていた。相手がどう来るかの分析や攻撃のアイデアなど、良い提案が多かった。メキシコが想定通りの戦い方をしたからこそ、分析が効果を発揮した。
Q. 次のアメリカ戦でのテーマは?
アメリカ戦のテーマは明確だ。近い試合でどれだけやれるかを徹底的に試してほしい。アメリカはポチェッティーノ監督になって間もなく完成度は高くないが、アスレティック能力の高い選手が多い。

森保監督はメンバーを変えると明言している。中2日でグラウンド練習は1日だけのため、コンディション管理の観点からもメンバーを入れ替える。Jリーグ組や5大リーグでプレーしていない選手たちが、どこまで戦えるかを証明する場になる。
勝つことより個人がどれだけ戦えるかにフォーカスして、選手たちには伸び伸びとプレーしてほしい。今回のようなワールドカップでは中2日で練習1日という状況はあり得ないので、次の試合はチームとしての可能性を試す機会になる。
Q. W杯で中南米チームに勝つための課題は?
課題は決定的なチャンスでの得点力だ。前半20分で5本のシュートを打って押し込めている時に点を取れるか、または相手に押し込まれている時にカウンター1発で点を奪えるかが重要。
日本が苦手な「個の力」、つまり試合の流れに関係なく1点決める選手の存在が必要だ。韓国は孫興民がアシスト1つゴール1つで勝利に貢献した。日本にもそのような選手が必要で、鎌田選手も「孫興民は今のところアジアのレベルではトップクラス」と認めている。
セットプレーの質を上げることも課題だ。最終予選では相手も日本のセットプレーを研究してくるようになった。今後はさらなる対策と準備が必要になる。ミドルシュートも得点源になる可能性があり、田中碧選手や堂安選手のようなシュートレンジの広い選手の活躍に期待したい。