PIVOT TALK MONEY
ゴールド最高値更新。年末3800㌦に続伸
(604)
1.4万回視聴
2025年9月5日

3500ドルを突破して、最高値を更新したゴールド価格。急上昇の背景にはどんな要因があるのか?勢いは今後も続くのか?貴金属スペシャリストの池水雄一氏に分析してもらった。 <ゲスト> 池水雄一|貴金属スペシャリスト 上智大学卒業後、住友商事入社。クレディ・スイス銀行、三井物産を経て、2019年より「日...
ゴールドが史上最高値を更新!中国主導の金市場はどこまで上がる?

Q.ゴールドが過去最高値を更新しましたが、今回の上昇の背景は何ですか?
ゴールドの価格が史上最高値を更新しました。年初に2600ドルだったゴールドは4月22日に3500ドルまで急上昇。わずか4ヶ月で900ドル上昇するという異例の展開となりました。その後しばらくレンジ相場が続いていましたが、最近再び上昇し、3500ドルを超える新たな高値を記録しています。

今回の上昇のきっかけは、先週火曜日にトランプ前大統領がSNSで「FRBの役員を解雇する」と発言したことです。トランプ氏は以前から「金利を下げろ」と繰り返し主張しており、今回は人事にまで手を出し始めたことが市場に衝撃を与えました。
トランプ氏は金利を0%にしようとしていますが、インフレが完全に収まっていない状況でそれを実行すれば、ハイパーインフレを引き起こす恐れがあります。この懸念から「ゴールドを買わなければならない」という心理が広がり、3400ドルの天井を突破すると、さらに新たな買いが入って価格を押し上げました。
また、上海協力機構の会合が上海で開催され、プーチン大統領、モディ首相、習近平国家主席、北朝鮮の代表も参加していることも、今回のラリーと関係しています。これはアメリカに対する不信の象徴とも言え、「ドルから離れてゴールドへ」という動きを加速させています。
Q.今後のゴールド価格はどのように推移すると予想されますか?
レンジが変わり、新たな上昇トレンドが始まったと考えられます。興味深いのは、今年前半の急騰期間が4ヶ月続き、その後同じく4ヶ月間レンジ相場が続いたことです。これは急騰をマーケットが消化する期間だったと考えられます。

レンジ相場の期間中、下値は3300ドルからほとんど下がらず、下値が堅調になっていました。市場を見ていると、誰かが買い支えているような状況で、おそらく中央銀行が買い手だったと思われます。このように上抜けするエネルギーが蓄積されており、それが爆発したのがトランプ氏のFRB人事介入発言でした。
年末に向けては3800ドル程度まで上昇してもおかしくなく、5年先には4800ドルを見込んでいます。現在は上昇局面にあり、下落があればそれは買い場となるでしょう。ただし、下値も硬くなっており、大きな調整は期待できないかもしれません。
Q.ゴールド以外の貴金属市場の動向はどうなっていますか?
今年は貴金属全般のパフォーマンスが非常に良好です。5月末まではゴールドが圧倒的でしたが、6月に入ってからプラチナが大きく上昇し、一時60%の上昇を記録しました。現在もプラチナは53%上昇、シルバーは40%上昇しており、ゴールドは実は3番目のパフォーマンスとなっています。
最もパフォーマンスが良くないパラジウムでさえも24%上昇しており、実物資産が通貨に対して見直されていることの表れです。これらの傾向は今後も続いていくでしょう。通貨はどんどん増えていく一方で、貴金属、特にゴールドの増加量は限られています。通貨が増えれば増えるほど、ゴールドの価値は上昇していくでしょう。
Q.通貨の発行量とゴールド価格の関係について教えてください。
1971年にニクソンショックによって金ドル兌換制が終わるまでは、アメリカは保有するゴールド以上のドルを発行できませんでした。しかし、その後は「フィアットマネー」と呼ばれる不換紙幣となり、金に交換する必要がなくなったため、いくらでも通貨を発行できるようになりました。
その結果、当時35ドルだったゴールドは、54年間で3500ドルと100倍に上昇しました。この流れは今後も続くでしょう。資本主義の基本は経済を大きくしていくことであり、そのためには通貨量も増やしていく必要があります。これは悪いことではなく、企業が債務とレバレッジによってバランスシートを拡大し成長していくのと同じです。
通貨量が増えれば、相対的にゴールドの価値も上昇していきます。これが、ゴールドを売らずに持ち続ける理由です。ゴールドの価値は上がり続け、通貨の価値は下がり続けるからです。
Q.米国の債務とゴールド価格の関係はどうなっていますか?
米国の連邦債務とゴールド価格の間には強い相関関係があります。現在、米国債務は37兆ドル程度に達していますが、債務の増加はすなわち通貨の発行量の増加を意味します。借金が増えれば増えるほど、ゴールドは買われる傾向にあります。これは通貨に対する信認が失われていくことの裏返しです。
インフレヘッジとしては株式も検討されますが、ゴールドのパフォーマンスは株式を上回ることがあります。2000年以降のゴールドとS&P500のパフォーマンスを比較すると、価格ベースでゴールドが約4倍のパフォーマンスを示しています。配当を考慮しても、ゴールドの方が優れている可能性があります。
ゴールドは一般的に「守りの資産」と見なされていますが、実際には攻めの資産にもなります。株式や通貨は信用(クレジット)に基づいていますが、ゴールドはそれ自体が価値を持っています。JPモルガンの言葉を借りれば「ゴールドはお金であり、他のすべては信用である」ということになります。株は会社が破綻すれば紙切れになり、紙幣は国が破綻すれば紙切れになりますが、ゴールドはどんな状況でもゴールドであり続けます。
Q.中央銀行によるゴールド購入の影響はどうですか?
中央銀行は2022年から大量のゴールドを購入し始め、2022年、2023年、2024年と3年連続で年間1000トン以上を購入しています。これはゴールドの年間生産量約3700トンの30%に相当する量です。
今年は第1四半期に250トンを購入し、第2四半期は160トン程度と減速したものの、年間では800〜900トン程度の購入が見込まれます。これは2021年以前の水準(最大でも年間600トン程度)を大きく上回っており、市場環境が変化していることを示しています。
中央銀行が保有する外貨準備に占める米国債の割合は、2015年頃から低下を続けており、70%近かったものが現在は50%を下回っています。その一方で、ゴールドの保有量は右肩上がりに増加しています。特に中国人民銀行の動きが顕著で、2022年11月から突然ゴールドの購入を公表し始め、それと同時にゴールド価格も上昇しました。
現在のゴールド市場を動かしている最大の勢力は中国と考えられます。これは中央銀行だけでなく、個人投資家も含まれます。
Q.中国の個人投資家や貴金属市場の状況を教えてください。
中国には上海ゴールドエクスチェンジ(現物取引所)と上海フューチャーズエクスチェンジ(先物取引所)という2つのゴールド取引所があります。世界の他の地域では現物取引は主に相対で行われ取引所はありませんが、中国では現物も取引所で取引されています。
特に今年4月、トランプ氏の関税発表の頃には、中国の個人投資家が不安からゴールドに殺到し、両取引所での取引量が急増しました。また、国際価格に対するプレミアムも上昇しました。

中国の投資家にとって、投資先の選択肢は限られています。暗号資産は禁止され、不動産市場は低迷し、株式市場も昨年まで停滞していました。そのような中で、好調なゴールドは魅力的な投資先となっています。今年前半の急騰時には、中国の個人投資家がかなりの買い手となっていました。
7月に深センを訪問しましたが、同地は貴金属の一大拠点です。訪問した貴金属業者では、金のキロバーが180〜200本(約1トン相当)も陳列されており、午前中だけでそれだけの量を取引しているとのことでした。日本では午前中に数十kg取引するのが精一杯であり、規模が全く異なります。
現在のゴールド市場の中心は中国と言っても過言ではありません。歴史的高値を更新した今日、昨日の3500ドル超え、4月22日の前回の高値更新もすべてアジアの時間帯に起こっています。過去はニューヨークかロンドンの時間帯に大きな動きがありましたが、今はアジア(ほぼ中国)で価格決定権が移ってきています。
さらに特筆すべきは、中国は世界最大のゴールド産出国(年間約360トン)であると同時に、世界最大のゴールド輸入国でもあることです。中国は法律でゴールドやプラチナの輸出を禁止しているため、中国に入ったゴールドは出てこないという状況です。世界のゴールド生産量の約2割が中国に吸収されており、その影響は非常に大きいです。
Q.一般の投資家はゴールドにどのように投資すべきでしょうか?
ゴールド価格が上昇する基本的なパターンとしては、急上昇した後に落ち着き、レンジ相場に入るというものです。今年前半の4ヶ月連続上昇は異例で、通常は上昇後に少し下がりながら上昇と下落を繰り返し、市場が高い価格に慣れていくという過程を経ます。
投資のタイミングについては、「下がったら買う」と思っている人も多いですが、実際に下がっても「もっと下がるかもしれない」と考えて買わないことが多いです。本当にゴールドをポートフォリオに組み込みたいと考えるなら、今買うべきでしょう。
最も良い方法は積立投資です。価格に関係なく機械的に買い続けることで、上がっても下がっても平均的なコストで投資できます。積立を基本としながら、価格が大きく下落した時にスポットで買い増すという戦略も効果的です。
年末までに3800ドル、来年には4000ドル程度まで上昇すると予想されます。ゴールド価格が大きく下落する条件は現在の世界情勢においては考えにくく、米中対立構造や米国の孤立主義政策がドル離れを促進している状況では、ゴールドの価値は上昇し続けるでしょう。
特にトランプ氏の政策(金利引き下げ、財政出動、減税など)はすべてゴールドの上昇要因となります。逆にゴールド価格を下げる政策としては財政規律の強化や金利引き上げが考えられますが、現在の米国債務状況ではそれらの実施は難しいでしょう。