PIVOT TALK BUSINESS
中国発LABUBU、成長の限界と未来は?
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2025年8月31日

20~30代の女性を中心に爆発的ヒットしたLABUBU。高級バッグにつけるのが世界的トレンドとなり、サンリオを脅かす存在に。時価総額8兆円のポップマートが仕掛ける巧妙なマーケティング戦略と、世界市場を狙う次の一手とは何か? 経済ジャーナリストの浦上早苗氏に聞いた。 サムネイル 写真:iStock
中国発のキャラクタービジネス「POP MART」が見せた限界と可能性
経済ジャーナリスト・浦上早苗が語る、ブームの裏側と日本企業への示唆
投資対象としてのLABUBU、バブル的人気の危うさ
Q. 中国のPOP MARTが大人気となっていますが、その人気に限界も見えてきたと言われています。これはどういうことでしょうか?
POP MARTのビジネスモデルは、キャラクターグッズに資産価値や交換価値を持たせるというもの。人気が加熱すると値段が跳ね上がる仕組みだ。特に「LABUBU(ラブブ)」というキャラクターは中国人の間で投資商品として見られるようになっている。

「中国では、このキャラクターは利回り何パーセントという言い方をされるほど。LABUBUが人気な理由を一言で言うと、人気だから皆が興味を持って買おうとするし、値上がりするから買おうとするという、バブル的な人気になっている」
日本でも2〜3倍に値上がりしているという情報もあり、こうした状況は本質から外れていく危険性がある。会社側からすれば、LABUBUが売れることはありがたいが、一本柱だと終わったときに急に苦しくなる。
「POP MARTもありがたいけど危ないと思っている。次のLABUBUを探さないといけない状況だ」
偽物流通と政府介入、LABUBUブームの崩壊
Q. LABUBUの人気に対して、どのような問題が発生していますか?
LABUBUの偽物が大量に出回り始めた。POP MARTは自社工場を持たず、製造を委託しているため、工場がプロセスを把握しており、偽物を簡単に作れる状況になっている。
「他国の偽ヴィトンや偽シャネルを作っていた中国の工場が、自国の偽物を作り始めたというのは素晴らしいことでもあるが、POP MARTは自社工場を持たない。委託製造のため、プロセスを工場が持っており、偽物が作り放題になっている」
また、値段の高騰などを受けて、6月頃から中国政府系メディアが「良くない」と言い始めた。中国は未成年の健全な教育に神経を尖らせており、10代の子どもがこうしたものにお金を注ぎ込むことにピリピリしている。

「中国では政府が良くないと言うと簡単に潰されてしまう。POP MARTも危機感を持ち、6月18日に突然大量の在庫を市場に投入した。100万個という規模で、購入制限も1人12個までに緩和した」
その結果、一晩で転売価格が崩れ、バブルが弾け、株価も下落した。資産的価値や投資的価値を一度潰した形だ。現在、LABUBUは落ち着いているが、次のヒット商品として「暴力群(クライイングベービー)」が注目されつつある。
市場の流行とメディアのラグ
Q. 中国の流行が日本に伝わるまでにタイムラグがあるのはなぜですか?
中国企業が注力しているのは主にアメリカか東南アジアで、日本はマーケットは大きいが力の入れ方が違う。また、経済メディアのニュース価値は「何かを超える」という分かりやすい指標から始まる。POP MARTの場合は時価総額で三陽(サンリオ)を超えたことが話題の発端となった。
「実態の売れ行きとメディアの注目にはずれがある。日本は店舗数も少ないため、実際に見ることができないと関心が薄れる。オンラインで売れていても分かりにくい」
今回LABUBUが日本で注目されたのは5月に中国で話題になってから約3ヶ月後だった。SNSを通じて10代・20代の若い世代の間で先に広がり、その後メディアが取り上げるというパターンも見られる。
「消費のセグメント化が進んでいるということで、それは悪いことではなく、ターゲットをしっかり掴んでいるという現れでもある」
日本企業が海外進出しない理由
Q. 日本企業がグローバル展開できない理由は何だと思いますか?
根本的には個人個人の海外に出たいという思いの差がある。日本企業では「海外進出したいけど行きたいという人がいない」という声をよく聞く。アメリカなら行くが、アフリカは避けるといった傾向がある。

「中国の店はアフリカにも米国にもある。つまり頑張って出て行っている人たちがいる。日本に中国人がたくさん来て日本語を話し、ビジネスをすぐに始めるのに対し、中国にいる日本人の数は全然違う」
中国人は「中国は競争が激しいから、自分が戦える場所に出ていかないと潰される」という感覚を持っている。一方、日本は安全で、仕事も見つけやすい。
「日本にいる中国人と話すと、『日本は落ち着いていて、時間の流れがゆっくりしている』と言う。日本にいると心地よいから、出ていく必要性を個人のメンタルでは感じにくい」
企業のリーダーは少子化などで危機感を持っているが、20代・30代の若い世代は「日本がいい」と思っている。その意識の差が大きい。
IPビジネス市場拡大の余地
Q. 今後、POP MARTはどのように発展していくと思いますか?また、日本企業が学べることは何でしょうか?
POP MARTの株価が示すように、まだ伸びしろがある。サンリオのキティちゃんのような60年の歴史を持つキャラクターと違い、まだ始まったばかり。しかし、LABUBUで一発屋で終わる危険性もある。
「何が当たるか分からないというエンターテインメント企業共通の課題がある。マーケティングをしても、最後は人の感情やSNSインフルエンサーの一言で決まる。今後5年ほどで不動の地位を作っていきたいところだろう」
キャラクタービジネスについては日本の方が大先輩。サンリオのようにキャラクター単体ではなく、企業として信頼されることが重要だ。

日本企業が学べることとしては、グローバル展開がある。POP MARTは海外展開をしっかり行い、中国らしさを前面に出さないようにしている。日本のキャラクタービジネスはコンテンツ力があるが、マーケティングが弱い。
「コンテンツをちゃんと生み出せる人が一番強い。日本企業は蓄積があり、品質もよく、人も真面目だという素地がある。ただ、歩みが遅く慎重で、失敗を恐れる傾向がある。中国人は失敗を失敗と思わず、次の展開につなげるマインドが全然違う」
日本のキャラクターIPを活かした世界展開をさらに進めることで、POP MARTのような成長も可能かもしれない。大事なのは、バブル的な人気ではなく、ドラえもんやクレヨンしんちゃん、アンパンマンのように長く愛されるキャラクターを育てていくことだ。