PIVOT TALK BUSINESS
【ビルの空調、養殖にも】資源としてのウンチの未来
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2025年8月30日

ロシアのウクライナ侵攻や中国の禁輸措置で肥料が高騰する中、実は我々の「ウンチ」が資源として注目されている。リンなどを豊富に含む「ウンチ」には、どのような活用の可能性があるのか?農業ジャーナリストの山口亮子氏に聞いた。 <参考書籍> ウンコノミクス https://amzn.to/3UKsPlR ※...
ウンチが社会を救う?肥料、エネルギー、空調まで多様な活用の可能性
肥料危機や環境問題の解決策として注目される「ウンチ」の意外な活用法について、ジャーナリストの山口亮子さんに聞きました。牛の糞からトラクターの燃料を作る欧州の取り組みや、マンホールの熱を利用した冷暖房システムなど、私たちが見過ごしてきた資源の可能性とは?
Q. 肥料以外にも「ウンチ」の活用法があると聞きましたが、どのような可能性がありますか?
「ウンチ」の大きな可能性の一つはエネルギー源としての活用です。カロリーが含まれているため燃料になるという点が重要です。例えば、牛の糞を燃料電池車に使用すると、1頭の乳牛から1台分の年間燃料が賄えるという計算になります。単純計算すると、国内に約131万頭いる乳牛から、131万台分の車を年間走らせることができる計算です。

また、下水熱の活用も注目されています。マンホールの中を流れる下水の熱を空調に利用する取り組みがあります。マンホール内の気温は年間を通して17℃前後で保たれているため、夏は涼しく冬は暖かいという特性を活かして冷暖房に使えるのです。六本木のトラノモンヒルズなどの大型施設で実際に活用されています。
Q. 牛の糞が適切に処理されていないケースもあると聞きました。どのような問題が起きているのでしょうか?
北海道を中心に畜産動物が一つの地域に集中しがちなため、周辺の土地に過剰に糞が撒かれるという問題が昔から存在します。これが環境汚染、特に水質汚染につながっています。
北海道では周辺の漁業者から「栄養が流れすぎている」という苦情が入るケースがあります。九州ではよく見られる問題として、井戸水が使えなくなるというケースもあります。ウンチ由来の物質が基準値を超えて土地に入りすぎることで、飲料水として使用できなくなってしまうのです。
こうした問題の解決策として、牛の糞を燃料などで活用することが進めば、状況は大きく変わる可能性があります。みんながその価値を認識し、積極的に活用するようになれば、処理問題の解決にもつながるでしょう。
Q. 下水熱の利用はどのくらい普及しているのでしょうか?
下水熱の利用は徐々に広がりつつあります。梅田や博多などの新しい町の再開発では、下水熱を活用した空調システムが取り入れられることが増えています。新潟では寒い時期に雪を溶かす方法としても活用されています。

面白いのは、実際にその恩恵を受けている人々が、それが下水熱によるものだと知らないケースが多いことです。例えば新潟では、人力で除雪していると勘違いしている方もいました。目に見えない形で私たちの生活を支えているのです。
下水熱利用の歴史を見ると、環境対応の波が来るたびに導入が増え、波が引くと減少するという傾向があります。現在は環境対応への関心が高まっているため、再び導入が増えている状況です。
Q. 下水熱利用のビジネス面での課題はありますか?
下水熱利用は初期投資がかかりますが、ランニングコストは比較的安く、環境に優しいエネルギーです。しかし、現状ではマンホールは自治体が管理しており、多くの場合は使用料を徴収していません。
ビジネスとしては成立している事例もあります。新潟の企業「コア」は下水熱利用のシステム導入を事業として展開しています。ただ、同社が抱える課題として、競合や協業先が少ないことが挙げられます。この技術が経済的にも成り立つということが広く知られ、参入企業が増えることが業界の活性化につながるでしょう。
最近の動きとして、札幌市が下水熱の使用料を徴収する仕組みを構築中です。これが全国に広がれば、自治体に適切にお金が還元される仕組みができるでしょう。インフラ維持費の不足が課題となっている現在、下水道事業自体で収益を上げる新たな方法として期待されています。
Q. 世界ではどのようなウンチの活用事例がありますか?
燃料としての活用は特にヨーロッパで進んでいます。乳牛などの排泄物からバイオガス発電を行ったり、トラクターの燃料にしたりする取り組みが進んでいます。
日本でも農家が糞からガスを発生させて、それをトラクターの燃料にしたいという動きはあります。しかし、ガスに関する法規制が障壁となっています。ヨーロッパではガス充填施設に関する規制が日本ほど厳しくないため、各農家でトラクターの燃料として活用できています。

ニューホランドという会社からは関連製品も発売されており、日本法人も日本での導入を検討していますが、法規制が足かせとなっている状況です。
Q. 下水処理の過剰な浄化が問題になっていると聞きましたが、どういうことですか?
下水処理場から出る水が「綺麗になりすぎた」という問題があります。下水処理場では排水基準に従って大腸菌の数などを減らさなければならず、結果として必要な微生物まで減少してしまうことがあります。
これに温暖化による海水温度の上昇も影響し、必要なプランクトンが足りなくなり、海苔の養殖がうまくいかなくなるといった問題が生じています。

この問題に対応するため、兵庫県の明石市などでは、法律で許される範囲内で浄化レベルを緩め、海苔の色付きを良くする取り組みを行っています。複合的な要因があるため単純な因果関係は見えにくいですが、少しずつ改善の兆しが見えています。
Q. 私たちが「ウンチ」について持っておくべき考え方は何でしょうか?
まず認識すべきは、自分が毎日トイレでしている「ウンチ」が実は貴重な資源だということです。口から栄養を取り入れ、体内で処理した後に排出されるものには、まだ多くの栄養やカロリーが含まれています。
現状では、多くの場合それは単に燃やされて終わってしまいますが、肥料として使ったり、下水管の熱を空調に活かしたりすることで、経済的にも環境的にも良い影響をもたらす可能性があります。
「ウンチ」を資源として見る視点を持つことで、世界の見え方が変わり、新たな可能性に気づくことができるでしょう。