
日常の延長にある防災対策
「ローリングストック」で始める無理のない防災対策とは? セブンイレブンが挑む災害への取り組み

Q. 日本は災害大国と言われていますが、実際に国民の防災意識はどうなのでしょうか?
日本人の防災意識は高いと言われていますが、実際の行動が伴っていないのが現状です。2023年の南海トラフ地震の臨時情報が出た際も、何らかの対策を行った人は約1/5にとどまり、8割の人は情報を知っていても行動に移していません。外出時の備えとなると、さらに9割の人が特に何もしていないという状況です。

Q. 防災対策を実行に移せない理由はどのようなものですか?
主な理由として3つ挙げられます。まず「面倒くさい」という気持ちがあります。忙しい日常の中で、いつ起こるか分からない災害への準備は後回しになりがちです。次に「自分は大丈夫」という楽観性バイアスがあります。これまで大きな災害に遭っていないため、これからも大丈夫だろうという意識です。3つ目は「国や自治体に依存する気持ち」ですが、人口減少や高齢化が進む中、公的機関の対応能力にも限界があります。
Q. 企業はどのように防災意識を高める取り組みができますか?
企業が防災意識を高めるためには「訓練」が非常に重要です。現状の避難訓練は予定されたものが多く、実際の災害は予測困難です。予測困難な状況を意図的に作り出し、その時にどう対応するかを訓練することが必要です。危機の時のリーダーシップは平時とは異なるため、答えが分からない中でも判断して行動できる力を養う必要があります。こうした訓練を定期的に行い、社員の家族まで含めた意識付けを行うことが理想的です。
Q. セブンイレブンジャパンはどのような災害対策を行っていますか?
セブンイレブンジャパンでは2020年にリスクマネジメント室を設置し、事業継続計画(BCP)を大幅に改定しました。それまでは地震対策に限定されていましたが、より包括的な対策に変更。また「人命最優先」「早期復旧による利便性提供」「地域社会への貢献」という3つの理念を掲げています。

具体的な取り組みとしては、経営層を含めた災害訓練を実施し、「セブンVIEW」というシステムで全国の店舗状況をリアルタイムで把握できるようにしています。また加盟店向けの災害対応マニュアルや全社員向けのポケット版災害ガイド、防災に関するEラーニングなども実施しています。
Q. BCPの改定によって実際に効果はありましたか?
2020年9月1日(防災の日)に初めて台風シミュレーションの訓練を実施し、BCPを改定して「5日前からの行動計画」を導入しました。翌日に発生した台風15号の対応では、この新しいBCPに基づいて5日前から情報収集を始め、2日前に災害対策本部会議を開いて計画的な休業を決定するなど、訓練通りの対応ができました。
また2024年の能登半島地震の際にも、1時間以内に情報共有体制を構築し、現地の避難所に出向いてニーズを把握。初期は水やカップ麺の提供が中心でしたが、次第に「野菜が食べたい」という声に応えて、温度管理された車両で野菜サラダを提供するなど、状況に応じた支援を行いました。
Q. コンビニ業界全体での取り組みはありますか?
セブンイレブンジャパンは日本フランチャイズチェーン協会を通じて、国や自治体と共同で「大規模災害対応共同研究会」を立ち上げました。セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、セイコーマートの5社が協力し、災害時の物流確保などについて検討しています。
具体的な成果として、災害時に配送車両が被災地に入るために必要な「緊急通行車両確認標章」の発行手続きを簡素化することができました。これは競争分野ではなく、手を取り合う分野として企業の枠を超えた取り組みとなっています。
Q. 日常生活で簡単にできる防災対策はありますか?
「ローリングストック」という方法があります。従来の防災備蓄は、カンパンや保存水を箱に入れて押し入れにしまい込むというスタイルでした。しかし賞味期限が来ると廃棄することになり無駄が生じます。
ローリングストックでは、普段から食べているもの(パスタ、缶詰、レトルト食品など)を少し多めに購入し、古いものから順に消費して、また新しく買い足すという循環を作ります。これにより特別な「備蓄」という意識なく、自然と災害に備えることができます。
Q. ローリングストックに適した食品はどのようなものですか?
常温保存が可能で賞味期限が比較的長いものが適しています。例えばパスタは3年近く持ち、缶詰やレトルト食品も長期保存が可能です。普段から食べているものを少し多めに買っておくことがポイントです。

また災害時には停電や断水の可能性もあるため、カセットコンロや予備のガスボンベも準備しておくと良いでしょう。調理の際はラップやアルミホイルを使うことで、洗い物に使う水を節約することもできます。
Q. 災害時はどこで過ごすべきですか?
東京都知事も推奨しているように、耐震性の高い住宅に住んでいる方は「在宅避難」が基本です。東京都の1400万人の住民のうち900万人がマンションやアパートに住んでおり、こうした建物は比較的耐震性が高いため、避難所に行くよりも住み慣れた自宅で過ごす方が良いとされています。
そのためにもローリングストックは便利な手段となります。普段食べ慣れたものを食べられることは、精神的な安心感にもつながります。
Q. 防災対策に対する今後の展望はどのようなものですか?
一人ひとりの生き方から始まる社会変革が重要です。災害多発国である日本だからこそ、ローリングストックのような考え方を集合知として実践していくことが必要です。
企業と行政が連携し、民間と官の知見を組み合わせることで、より効果的な防災対策が可能になります。特に「バウンダリースパナー」と呼ばれる官民の境界を超える人材の役割が重要で、両方の視点を持って取り組むことで社会全体のレジリエンス(回復力)を高めることができます。