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日経平均最高値更新の理由。上限は44,000円だ
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2025年8月19日

最高値更新が続く日経平均株価。なぜ今、株価が高騰しているのか?どこまで高騰は続くのか?理論株価をベースにしながら、今後の株価をマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストに展望してもらった。 <ゲスト> 広木隆|マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 博士(経済学)。社会構想大学院大学教授。国内...
日経平均株価最高値更新の理由とこれからの展望
Q. 日経平均株価の最高値更新が続いていますが、何が起きているのでしょうか?
株価は本来上がるものであり、驚くべきことではありません。しかし、最近の上昇ペースは速く、急に強い動きが出てきたという印象があります。
この背景として大きいのは、「トランプ関税」の通商交渉が決着したことです。これにより不透明要素が取り除かれました。株式市場は不透明なことを嫌うため、関税がかかるにしても「このぐらいならば」という見通しが立ったことが重要でした。

また、欧米の株価が高値更新を続ける中、日本株だけが出遅れ感がありました。株式だけでなく、ビットコインや金など様々な資産が買われている状況で、割安だった日本株に海外からマネーが流入してきています。
Q. 上昇し過ぎではないか、強過ぎるのではないかという声がありますが、どう捉えるべきでしょうか?
確かに理屈では説明しづらい面があります。株価の主要な決定要因は企業業績の予想と金利ですが、これらから導き出される理論株価は実際の日経平均と乖離しています。
現在、日経平均は最高値を更新していますが、理論株価はむしろ低下しています。4-6月期の第1四半期決算は「よくもなく悪くもなく」といった内容で、上方修正より下方修正が若干多く、業績予想は上向いていません。同時に10年債利回りもじりじりと上昇しており、理屈の上では株価が上がる要素は少ないのです。

このギャップの理由は、投資家が現在発表されている業績予想を信じていないからでしょう。現時点での日経平均ベースの今年度予想EPSは6%程度の減益ですが、市場はこれを織り込まず、実際には今年度も増益になる、あるいは少なくとも来年度は増益になるだろうと見込んで買いに行っているのです。
Q. 市場は企業業績がどの程度改善すると予想しているのでしょうか?
現在の株価水準を見ると、かなり強気の見方をしていることがわかります。
具体的には、現在の金利水準(10年債利回り1.55%程度)と業績予想(前年比-6%)から計算すると、理論株価は3万7700円程度となり、4万円にも届きません。しかし実際の日経平均は4万3000円台をつけています。
この水準が適正となるためには、EPSの増加率が10%程度必要です。つまり市場は、今後企業業績が10%増益になることをすでに織り込んでいると考えられます。
Q. なぜ市場はそこまでの業績改善を織り込むようになったのでしょうか?
まず、国内のGDP成長率が予想以上に良かったことが挙げられます。特に設備投資が伸びた点が重要です。これまで日本の成長が停滞していた原因の一つは投資不足でしたが、人手不足やインフレなどの要因により、企業が設備投資に資金を使い始めたことで、国内景気が上向き始めています。
さらに、世界経済の見通しも改善しています。アメリカでは利下げが見込まれており、景気後退に陥る可能性は低くなっています。また、米中対立についても、両国は強気の姿勢を見せながらも実際には対立を先送りする形となっており、世界経済の悪化懸念が和らいでいます。

日経平均株価は国内産業も多く含みますが、グローバル製造業の比重が大きく、世界景気に連動します。国内景気の回復と世界経済の安定が見込まれる中、企業業績の上向きが期待されているのです。
Q. 円安の継続も株価上昇に貢献しているのでしょうか?
円安は大きな要因の一つです。日銀の利上げについては、昨年の唐突な変更とは異なり、今回は慎重な姿勢を見せています。
また、仮に日銀が利上げを行ったとしても、せいぜい1回か2回程度と見られており、円買いの材料としては長続きしないでしょう。一方、アメリカも利下げの可能性はあるものの、インフレ懸念が完全に消えたわけではなく、大幅な利下げは見込めません。そのため、日米の金利差は縮まるとしても、依然として大きな差が残ることになります。
さらに重要なのは、日本とアメリカの通商交渉で日本が5500億ドルの投資を約束させられたことです。韓国も3500億ドルの投資を約束しており、日韓合わせて9000億ドル(約135兆円)の枠が設定されました。
これは日々のトレーディングとは異なる「実需」のお金であり、一度ドルを買うと数年は売らない性質を持ちます。このような巨額のドル調達需要が発生することが見込まれており、円高になりにくい環境が形成されています。これはグローバル製造業が多い日本企業にとって追い風となっています。
Q. 株価高騰の中でも国民の景気感との乖離があると言われますが、どう考えればよいでしょうか?
この乖離は避けられない面があります。日経平均株価は日本企業の中でもトップクラスの225社で構成されており、これらの企業はすでに日本を飛び出して世界中で稼いでいます。トヨタ自動車やファーストリテイリングなど、日本を代表する企業の業績や株価が最高値を更新していることと、日本全体の景気感覚には差が生じるのは自然なことです。
仮に日本が鎖国状態で、企業が国内でしかビジネスができないならば、株価と国民の景気感は一致するでしょう。しかし現実はそうではありません。
ただし、こうした状況を悲観する必要はありません。私たちは日々の仕事を頑張りながら、同時に世界で活躍する日本企業の恩恵も受けることができます。例えば、ソニーや三菱UFJ銀行などの一流企業に就職するのは難しいかもしれませんが、これらの企業の株主になることは誰でもできます。
今後はインフレが続く中で、賃金の上昇が追いつかない状況が続く可能性もあります。そのため、仕事で収入を得ながら、投資を通じて資産を増やしていく「二重の戦略」が必要になってくるでしょう。
Q. 今後の日経平均株価のレンジ予想と、大きく左右する要因は何でしょうか?
現在の相場は先走りすぎている面があり、目先の4万3000円台後半から4万4000円は「いっぱいいっぱい」の水準です。この水準を超えて更に上昇するのは行き過ぎでしょう。少なくとも次の中間決算で業績のアップデートを確認するまでは、上値4万4000円台は抜けないほうが健全です。
今後の株価を左右する大きな要因としては、金利の動向が挙げられます。日銀は慎重な姿勢を見せていますが、長期金利の上昇は金融政策だけでなく、日本の財政に対するリスク評価も影響します。
政治面では、単純な財政拡張型の政策が株価上昇に直結する時代ではなくなっています。ただバラマキを行えば財政不安から金利が上昇し、それが株価のブレーキになる可能性があります。

重要なのは、成長期待を伴う経済政策です。防衛費や社会保障など使うべきところにはしっかり使い、引き締めるべきところは引き締める、そうした良識あるバランスの取れた政策運営が求められています。短期的な人気取りのためのバラマキではなく、持続可能な成長につながる政策が株価の安定的な上昇には不可欠です。