EDUCATION SKILL SET
長時間保育は子どもの発達に良い【早期保育と3歳児神話】
(1784)
1.8万回視聴
2025年8月21日

母親の就労が育児に与える好影響。母親たちに出回るあの噂は本当?医師が伝えたい、12歳までの育児の真実とは。漫画『コウノドリ』取材協力医師でもある小児科医・今西洋介氏に聞いた。 ▼講師▼ 今西洋介|小児科医・新生児科医/日本小児科学会専門医/日本周産期・新生児医学会新生児専門医/医学博士(公衆衛生学...
【保育園vs在宅育児】早期保育は子どもの発達にどう影響する?「3歳児神話」の真実を小児科医が解説
「集団生活が子どもの発達を伸ばす魔法の力」

Q. 3歳までは母親が家庭で見るべきという「3歳児神話」は本当なのでしょうか?
子育て中の親なら一度は耳にしたことがある「3歳児神話」—3歳までは親(特に母親)が家庭で育てるべきという考え方。この神話に悩まされている親は多いでしょう。特に仕事と育児の両立に奮闘する親にとって、子どもを保育園に預けることへの罪悪感の原因にもなっています。

しかし、今西洋介医師(小児科医・新生児科医)によれば、この神話には科学的根拠がないと言います。むしろ、研究データは早期保育が子どもの発達にポジティブな影響を与える可能性を示しています。
1歳未満から保育園に通った子どもの方が発達が良好
Q. 早期保育は子どもの発達にどのような影響を与えるのでしょうか?
環境省主導で行われた14万人のデータを使った研究によると、1歳未満から保育園に通い始めた子どもたちは、3歳までに保育園に通わなかった子どもたちと比較して、発達面で優位な結果が出ています。特にコミュニケーション能力において顕著な差が見られました。
「保育園の何がいいかというと集団生活なんです。集団生活は魔法の力と言われるほど、子どもの発達に良い影響を与えます。家で一人でいるより刺激が全然違うんですよ」と今西医師は説明します。
保育園では多様な子どもたちとの関わりから、言葉のやり取りが増え、様々な刺激を受けることができます。これは一人の大人と過ごす環境では得られない多様な経験につながります。
半日より1日保育の方が発達に良い影響
Q. 早く迎えに行った方が子どものためになるのでしょうか?
「半日預ける保育園と1日預ける保育園で発達がどちらが良いかという研究もあるんですが、それによると1日預けた方が良いんです」と今西医師。
多くの親が「仕事が終わった後、できるだけ早く子どもを迎えに行くべき」と考えがちですが、実は保育園での時間が長い方が発達面ではプラスになる可能性があるのです。子どもが家庭で過ごす時間は、ともすれば画面を見る時間が増えがちです。一方、保育園では多様な活動や人との関わりが継続的に提供されます。
母親の就労は子どもの発達にポジティブな影響も
Q. 母親が働くことは子どもにどんな影響があるのでしょうか?
研究によれば、母親が働いている方が子どもの発達が良いという結果も出ています。これは単純な因果関係ではなく、複数の要因が絡み合っています。

「母親が労働することで世帯収入が上がり、選択肢が増える。さらに、労働することで母親の自尊心が高まります。自分でずっと家の中にこもっているとどうしても社会から取り残されている感覚になりがちですが、働くことで世界が開け、自信を持つ姿を子どもたちが見ることが良い影響を与えているのでしょう」と今西医師は分析します。
保育園選びで重要なのは「質」と「口コミ」
Q. 質の高い保育園とはどのようなものでしょうか?
早期保育の効果は、その質に大きく左右されます。今西医師によれば、保育園の質とは「しっかりと子どもを見て、双方向的なコミュニケーションをとること」が重要だと言います。
良い保育園を見極めるポイントとしては「母親たちの口コミ」が最も確実な方法だそうです。「一番確実なのは親たちの口コミです。例えば育児支援センターなどで上の子がいる母親と仲良くなって情報を得るのが良いでしょう」とアドバイスしています。
寝かしつけの「ネントレ」は脳に有害か?
Q. 泣いても放置する「ネントレ」は子どもの脳に悪影響がありますか?
子育てで悩むことの一つに赤ちゃんの睡眠があります。「ネントレ(睡眠トレーニング)」は、泣いていても一定時間見守るという方法で知られていますが、親の間では「脳に有害なのでは」という懸念もあります。
今西医師によれば、研究ではネントレをしても18ヶ月時点での愛着形成に問題がなかったというデータがあります。「ネントレをしなくても、してもその後の発達に特に影響はありませんでした」と説明します。

また、今西医師は「ネントレという言葉が先行していますが、本質は家庭ごとに最適な寝かしつけの方法を試行錯誤しながら決めていくこと」だと指摘します。重要なのは睡眠習慣の獲得であり、それは暗い環境、決まった時間、寝る前の過ごし方など、基礎的な生活リズムを整えることから始まります。
スクリーンタイムとの付き合い方
Q. 子どもとスクリーン(テレビやスマホ)との関わりはどうすべきですか?
「スクリーンタイムは長いと視力低下などの影響がありますが、現代生活からメディアをなくすのは難しい。大切なのはうまく付き合うこと」と今西医師。
スクリーンが悪いとされる理由は、情報が一方的に入ってくることにあります。改善策として「親が横にいて一緒に見て、双方向的に会話しながらメディアを見ると悪影響が弱まる」とアドバイスしています。例えば、テレビで車を見ていたら「この前同じ車を見たね」などと話しかけることで、受動的な視聴から能動的な学習に変えることができます。
年齢によって異なりますが、目安としてのスクリーンタイムは1日1時間程度とのことです。
「3歳児神話」を超えた子育て
今西医師の解説からわかるのは、「3歳児神話」のような固定観念に縛られるよりも、科学的根拠に基づいた子育てが重要だということです。保育園での集団生活は子どもの発達に良い影響をもたらす可能性が高く、母親が仕事をすることもポジティブな側面があります。
子育てにおいて大切なのは、流行りの育児法や周囲の評価に振り回されるのではなく、各家庭の状況に合わせた「テイラーメイド」のアプローチを取ることではないでしょうか。