ECONOMICS101
東アジアの若者が結婚しない理由 後編
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2025年8月5日

東アジアを覆う、静かなる人口動態の危機。日本をさらに下回る出生率に喘ぐ中国・韓国・台湾の若者たちは、なぜ結婚を選ばないのか。エコノミストの永濱利廣氏が、当事者の声から「非婚化の構造」を解き明かし、日本が打つべき次の一手を模索する。 <ゲスト> 永濱利廣|第一生命経済研究所 首席エコノミスト 早稲田...
東アジアの若者が子どもを持たない理由とは?各国のリアルな声から見える共通点
東アジアの少子化問題が深刻化する中、日本・中国・韓国・台湾の若者たちは結婚や出産についてどう考えているのか。各国出身者の本音から、子どもを持たない選択をする背景と、その先にある社会の姿が見えてきた。

Q. 中国では35歳が「危ない年齢」と言われるのはなぜ?
中国は学歴社会で、職場での競争も激しい。特に35歳頃が最も危険な時期と言われている。どんなに高い給料をもらっていても、新しく入ってくる25歳の若手に負けてしまうこともある。そのため「明日から来なくていい」と突然解雇されるケースも少なくない。
このような不安定な雇用環境が、中国人が日本企業に魅力を感じる理由の一つになっている。日本の伝統的な企業は、年功序列で同じ会社に長く勤めるほど恩恵を受けやすく、簡単に解雇されることも少ない。そのため、中国から日本の中学受験に挑戦し、そのまま日本の大学に進学して日本企業に就職したいと考える若者も増えている。
Q. 韓国や台湾の雇用環境はどうなっている?
韓国も日本と比べると厳しい環境にある。サムソンなどの一流企業では40代になると厳しい状況に置かれることが多い。直接解雇ではなく、部署を転々とさせられるなど、自ら退職せざるを得ない状況に追い込まれるケースがある。

一方、台湾では古い企業でも簡単に解雇することは難しく、不当解雇の場合は訴訟を起こす人が多い。台湾人は自分の権利を守るために積極的に行動する傾向がある。無料の法律相談などを利用して、証拠を残すようアドバイスを受けるなど、労働者の権利意識が高い。
また台湾の大手企業、特にTSMCなどでは成果主義が徹底されており、入社1年目でも成果を上げれば年収1000万円近くになることもある。日本のTSMC熊本工場の給料は台湾本国と比べると低いと言われている。
Q. 子どもを持ちたいと考える人はどのくらいいる?
番組に出演した東アジア出身者のうち、子どもが欲しいと答えたのはわずか1人だった。その理由として「自分が子どもの頃、優しい両親の姿を見て、自分もそういう親になりたいと思った」「子どもが可愛いから」「甥や姪を見ていて、自分の子どもも欲しいと思った」などが挙げられた。
また「結婚をしたい理由は子どものため」という意見もあった。
Q. 子どもを持ちたくない理由は何?
子どもを持ちたくない理由としては、以下のような意見が出された:

1. キャリアを諦めたくない(特に女性)
妊娠したら仕事を辞めなければならない状況になる可能性がある
管理職として働いている場合、特に影響が大きい
2. パートナーとの時間を大切にしたい
子どもができると二人の時間が減る
「子育ては二人で一緒にやるもの」という考えがあり、相手が積極的でなければ諦める
3. 経済的な負担
出産費用や子育て費用が高い
特に日本では出産費用が台湾の3〜4倍かかる
台湾では産前検査が国の補助で無料だが、日本では自費の検査も多い
4. 親としての自信がない
立派な大人に育てられるか不安
子どもが将来犯罪者になったらと考えると怖い
5. 子どもに辛い思いをさせたくない
世の中は辛いことが多い
一つの命をこの世に連れてくる責任が大きすぎる
6. 出産のリスクを避けたい
特に外国人として日本で出産することの難しさ
家族のサポートが受けられない環境での子育ての大変さ
7. 自分自身の時間やアイデンティティの喪失への不安
「○○さんのママ」として呼ばれるようになり、自分自身が失われる感覚
Q. 若者の価値観の変化は経済とどう関係している?
東アジアの国々は共通して国民性が真面目で、物事を深く考える傾向がある。それが少子化の一因になっている可能性もある。
また、過去のリーマンショックやコロナショックなどの経済危機を経て、若い世代はリスクに対して敏感になっている。クレジットカードより即時払いのデビットカードを好む若者が増えているという例もある。
一方で、少子高齢化が経済に及ぼす影響も各国で異なる。日本では少子高齢化の影響で経営者が悲観的になり、前向きな投資が減少している面もある。しかし韓国や台湾は日本より1人当たりGDPが高く、人口減少や少子高齢化が経済に与える影響は日本ほど深刻ではない可能性がある。
Q. メディアの報道姿勢は国によってどう違う?
日本のメディアは経済について悲観的な報道をする傾向があるのに対し、韓国のメディアはより楽観的な報道をする傾向があるという。これが国民の意識にも影響している可能性がある。

日本では悲観的な報道によって国民も悲観的になりがちだが、他の国では国の経済状況よりも自分自身の生活を中心に考える人が多いのかもしれない。
Q. どうしたら結婚や出産を前向きに考えられる社会になる?
結論として、多くの人が共感したのは「結婚するかしないか、子どもを持つか持たないかを聞かれること自体が嫌」という意見だった。「勝手にしなよ」と社会が個人の選択を尊重する姿勢になれば、かえって自然な流れで結婚や出産を選ぶ人も増えるかもしれない。
国や企業が何かプラスになる支援をできないか、ということも検討の余地がある。しかし最終的には個人の気持ちが尊重されるべき問題であり、文化や背景を理解した上での議論が必要だ。