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中国が最も恐れる男が語る「日中関係の10年後、20年後」
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2025年8月5日

中国に5回長期滞在し、「中国が最も恐れる男」と呼ばれる元駐中国大使の垂秀夫氏。今の中国で何が起きているのか?10年後、20年後の中国と日中関係はどう変わるのか?『日中外交秘録』を上梓した垂氏に、中国の真実と未来について聞いた。 <ゲスト> 垂秀夫|元駐中国大使 1961年大阪府生まれ。京都大学法学...
日中関係の未来に向けて何をすべきか?元外交官が指摘する戦略的思考の重要性
「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」

Q. 日中関係の10年後、20年後、日本は何をすべきでしょうか?
未来のことは予言できないが、歴史という貴重な資産から学ぶことができる。ビスマルクは「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」と言った。今後10年、20年の日中関係を考える上で、ポスト習近平時代あるいはポスト共産党政権を視野に入れるべきだ。
中国の歴史を振り返ると、清王朝は何千年も続いた王朝の最後だったが、それを倒したのは列強でも日本でもなく、中国人自身だった。つまり、体制を変えるのは常に中国人自身なのだ。日本と中国の近代史、そして未来史は地理的に近いため必ず重なる。過去の経験から学び、賢者であるべきだ。

「中国共産党イコール中国ではない」という視点
Q. 新しい中国を作るかもしれない中国人との関係構築が重要なのでしょうか?
その通りだ。日本社会において中国に対する感情的な反応は理解できる。マナーを守らない旅行者や不適切な土地取引など、許しがたい行為もある。しかし、感情だけで対応すべきではない。日本の未来を考える上で中国の未来も視野に入れる必要がある。
その際に重要なのは「中国共産党イコール中国ではない」「中国共産党イコール中国人ではない」という視点だ。日本社会としてのルールをより厳格に規定し、それを守れない外国人には厳しく対応すべきだ。しかし同時に、心ある中国人との関係構築も大切な要素として考えるべきだ。
「戦略的餓死に衝動」の意味
Q. 「戦略的餓死に衝動」という言葉を書かれていましたが、日本はずっと戦略的に耐えていく段階なのでしょうか?
この言葉は特に尖閣諸島問題について言及したものだ。尖閣諸島は国際法上も歴史的にも間違いなく日本の主権領土だが、現在の総合国力において中国が相当強くなっているのも事実だ。
日本が3の対抗措置を取れば中国は10返してくる。日本が5返せば中国は30返してくる。そして日本には100返す国力がない。そのため今は「戦略的餓死に衝動」、つまり感情的に行動せず戦略的に考えるべき時だ。
中国の国力はピークを過ぎつつある。国力は常に右肩上がりではなく、上下する。下降局面に入った時こそ勝負のチャンスだ。例えば、ソ連崩壊時が北方領土問題の解決チャンスだったように、国力の差が明確になった時こそ領土問題は動く可能性がある。
米中関係と日本の立ち位置
Q. 米中が裏でディールすることに備える必要があるのではないでしょうか?
中国から見れば、米中関係は「中長期的・戦略的には闘争、短期的・戦術的には安定」を求めるものだ。中国は時間稼ぎが必要なため一時的に安定を求め、その中で米中ディールが起きる。アメリカは戦略的思考が不足しているため、中国に時間を与えてしまう。
しかし中国にとってより重要なのは闘争であり、アメリカ主導の国際秩序に代わる秩序を作ることが最終目標だ。米中ディールは起きても、中国の闘争の気持ちは常に存在する。
一方、現在のアメリカの対日政策は同盟国として適切とは言えない面がある。しかし、平時において、アメリカは日本の主権・領土にチャレンジしていないが、中国はしている。この点を考えれば、答えは明確だ。日本だけでは中国と対峙できないため、アメリカとの同盟関係は依然として重要である。
アメリカの外交能力と日本の戦略
Q. アメリカはなぜ中国のディールに乗ってしまうのでしょうか?
アメリカは外交が下手だからだ。歴史的にも多くの外交ミスがある。例えば、戦後にアチソン国務長官が防衛ラインを引いた際、韓国が含まれていなかったため朝鮮戦争が始まった。また、アメリカは国民党が共産党に勝つと思っていたが、実際は逆だった。中国は戦略的思考が強く、アメリカをうまく誘導する能力がある。

日本の安全保障戦略
Q. 日本を防衛するために日中間の軍事バランスを保つには何ができるのでしょうか?
日米同盟を維持しつつ、日本自身の防衛力も予算も増やして強化することが必要だ。また、日中のパイプも太くすべきだが、かつての「誰々に任せておけばいい」という時代は終わった。野中広務氏や二階俊博氏のような日中関係を一手に担う政治家の時代は終わり、中国側にもそのようなカウンターパートは出てこなくなっている。
日本は中国を敵視する必要はなく、祖国と国益に基づいて冷静に対応していくべきだ。ただし、尖閣諸島問題のようにエスカレートしてきた問題については忘れてはならない。
日本の国力強化の重要性
Q. 日本が有利になるフェーズは来るのでしょうか?
日本自身が国力を高めていくしかない。日本も中国も国力は低下傾向にあるが、日本経済が回復し、賃金が物価高を超えるような好循環になれば国力は強まっていく。これは日本自身の問題であり、できるかどうかは日本次第だ。
外交官という仕事について
Q. 外交官という仕事はこれからさらにスリリングになるのでしょうか?
外交官は国家の歴史を作る作業に関わる仕事だ。必ずしも大物外交官になる必要はないが、一人ひとりが国家の歴史の創造作業に携わっている。私自身は「歴史に恥じない外交をしよう」と自分に言い聞かせてきた。
外交文書は原則30年後に公開される。その時に「なぜこんな外交をしていたのか」と疑問視されるような恥ずかしいことはできない。30年後に自分が生きているかどうかに関わらず、歴史に恥ずかしい名前を残さないように努力することが大切だ。その意味で、外交官はとてもスリリングな仕事だ。
若い世代へのメッセージ
Q. 若い世代に伝えたいことは何ですか?
人生は一度きりだ。その一度の人生をどう過ごすかは自分次第である。人生の岐路で選択を迫られる場面が何度かあるだろう。その時、様々な人の意見を聞き、相談するのは良いことだが、最終的に決めるのは自分自身だ。そして、責任を取るのも自分自身である。
小さな後悔はたくさんあって構わない。それは次の成長の糧になる。しかし、取り返しのつかない大きな後悔はしないように、自分の人生を自分でしっかり生きてほしい。