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中国が最も恐れる男が語る「中国の真実と10年後」
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2025年8月4日

中国に5回長期滞在し、「中国が最も恐れる男」と呼ばれる元駐中国大使の垂秀夫氏。今の中国で何が起きているのか?10年後、20年後の中国と日中関係はどう変わるのか?『日中外交秘録』を上梓した垂氏に、中国の真実と未来について聞いた。 <ゲスト> 垂秀夫|元駐中国大使 1961年大阪府生まれ。京都大学法学...
「中国は全く違う人種だ」元中国大使が警告する習近平の戦略と日中関係の未来
中国と日中関係の将来について、『日中外交秘録』を上梓した垂氏に聞いた。「日本人と中国人は全く発想が違う人種だ」と語る垂氏は、中国を正しく分析する方法から習近平体制の特徴、さらには10年後、20年後の中国と日中関係について、その豊富な経験と知見を基に語った。

Q. 中国を分析する基本的な姿勢として、どのようなことが重要ですか?
中国を分析する際には、感情を排して客観的・中立的な視点を持つことが極めて重要だ。最初から「中国は好きではない」「中国は怖い」といった先入観を持っていると、そのような見方に合致する情報ばかりを選んでしまう。
また、多くの情報を入手するために人脈ネットワークを構築することも不可欠だ。中国で勤務していた際は、昼夜問わず中国人と食事をし、時にはカラオケやサウナにも一緒に行くなど、仕事と遊びの境目なく交流を深めていた。
中国を理解するためには、中国共産党について知らなければならない。特に毛沢東思想は現在でも中国共産党の基本となっている。毛沢東の矛盾論や実践論、統一戦線工作理論などから来ているものが多く、これらを知らないと中国共産党の言葉の真意を読み取ることができない。

Q. 毛沢東の戦略的思考とはどのようなものですか?
毛沢東の発想自体が極めて戦略的だ。例えば、抗日戦争時代に毛沢東は「七二一指針」を出し、人民解放軍の前身である八路軍に対して「1割だけ日本軍と戦え。2割は国民党と一緒に戦ったふりをすればよい。7割は温存して農村で根拠地を作れ」と指示した。
愛国思想に騙されて前線に行って英雄になろうなどと思うな、国民党に戦わせておけばよい、自分たちは力を温存しておけ、と言ったのだ。その結果、日本との戦争が終わり、国民党と共産党の内戦になった時、国民党は疲弊していたのに対し、共産党は力を温存していたので勝利することができた。これが戦略的思考だ。
日本人が最も足りないのはこの戦略的思考だ。大きな戦略を描ける人間がほとんど出てこない。一方、中国人との付き合いでも、発想が全く異なることを理解すべきだ。
Q. 日本人と中国人の人間関係の築き方の違いはどのようなものですか?
中国人と日本人は顔も似ていて漢字も使うが、発想は全く違う人種だと理解すべきだ。普段の生活や人付き合いも全然違う。日本で中国的な生き方をすると社会的に切られてしまうし、中国で日本的な生き方をすると友人関係が広がらないし深まらない。
中国では「圏子(チュエンズ)」という友人の輪があり、その輪の中に入れるとみんな一気に友達になれる。「あいつは誰々が信頼した人間だ」と言われれば、みんなが信頼してくれる。日本ではそうはいかない。
例えば、日本では兄弟でも1週間も泊まり続けたら社会的に失格だが、中国では違う。相手に飛び込んでいかないといけない。中国人同士でもケミストリーが合う人と合わない人がいるが、10人付き合って3人と深い関係になれば非常に良いことだ。
Q. 習近平が目指す世界観とは何ですか?
習近平の目指す世界観は現代版の冊封体制だと言える。鄧小平時代の中国は現在の国際政治経済秩序に参画し、WTO加盟などを通じて利益を得ようとした。しかし習近平時代になると、現在の国際政治経済秩序は合理的でもフェアでもないと主張し、グローバルサウス(途上国)と共に国際政治秩序を変えようとしている。
中国からすれば、自分たちは「大きなファミリー」であり、G7などは「小さなグループ」だと言う。その「大きなファミリー」にはグローバルサウスが含まれている。中国は「一帯一路」による援助や投資、テイル借款などを通じて途上国に影響力を及ぼし、国連などでの投票行動を中国側に合わせさせている。
これは過去の冊封体制を彷彿とさせる。途上国が持ってくる「貢ぎ物」(投票行動)に対して、中国が「よし」と言って道路を作るなどのプレゼントを与える。これによって中国は自分たちの世界観を構築しようとしている。重要なポイントは、アメリカとの闘争を通じて自らに都合の良い国際政治経済秩序を作ろうとしていることだ。
Q. 習近平体制を分析するための「3つの視座」とは何ですか?
習近平体制を分析するためには、以下の3つの視座が重要だ:
1. 中国共産党の正統性
2. 一党支配体制から一人支配体制への転換
3. 「国家安全」という最優先国家戦略目標
中国共産党は一党独裁という宿命を背負っており、常に政権の正統性を示さなければならない。毛沢東時代は革命と建国、鄧小平時代は「私について来れば豊かになれる」という約束、そして習近平時代は「強くなる中国」を掲げている。
鄧小平時代までは政治局常務委員の間でチェック・アンド・バランスが機能していたが、習近平は他の常務委員を部下にしてしまい、毛沢東時代のような一人支配体制を構築した。普通は2期10年で引退するところ、習近平は3期目に入った。実際には権力基盤を固めるのに10年かかり、2022年からが「真の習近平時代」のスタートと言える。
習近平は鄧小平時代の「経済発展」よりも「国家安全」を優先している。これが福島処理水問題や対日本のスパイ防止法などにも表れている。経済よりも安全保障を優先するため、経済成長が減速している面もある。
Q. 中国経済の現状と今後の見通しはどうですか?
中国経済は表面上の数字よりも実態は悪い。中国は5%以上の成長率を発表しているが、実際には深刻なデフレに陥っている。世界中どこにもデフレの国で5%成長している国はない。実際の成長率は0〜2%程度ではないか。
特に不動産市場の問題が深刻だ。不動産価格は少しずつしか下落していないが、それでも人々は「さらに下がる」と考えて購入を控えている。日本のバブル崩壊時には価格を2割引に設定して半年払いにするなどの対応をしたが、中国ではそうした本格的な対応をしていない。表面上の資産価値は残っていても、実際には売れないため、資産価値はゼロと言える状況だ。
消費が回復しない大きな要因は、この不動産問題にある。BYDなどの電気自動車メーカーも実は問題を抱えており、表面上は成長しているように見えても、実態は厳しい。

Q. 台湾問題については今後どうなると予想されますか?
中国の対台湾政策には、武力統一、平和的統一、グレーゾーンの対応など様々な選択肢がある。軍事侵攻は「鞘の抜けない刀」のようなもので、準備はしているが簡単には使えない。失敗すれば政権の権威が失墜するリスクがある。
より可能性が高いのは、台湾を守る「城」の石垣を一つ一つ抜いていく戦略だ。これまで日本もアメリカも「両岸の当事者が平和的に話し合って解決すべき」と言ってきたが、この「平和的統一」の方が中国にとって安上がりで受け入れやすい。
蔡英文総統の強硬路線は理解できるが、台湾社会の分断を進めている面もある。10年、20年先も現在の曖昧な状況が続くかは台湾自身の判断にかかっている。日本やアメリカがどう協力するかも重要だが、単に「台湾は友人だ」と言うだけでは不十分だ。もっと戦略的な思考が必要だ。
Q. 日中関係の10年後、20年後はどうなると思いますか?
日本はこれまでの経験から学び、賢明な外交を展開すべきだ。中国という全く異なる思考を持つ相手と付き合うためには、日本自身が国力を高めていく必要がある。
外交は常に現在の状況を分析し、10年後、20年後を見据えた戦略的思考が求められる。時には相手の懐に飛び込み、時には距離を置くなど、状況に応じた柔軟な対応が重要だ。
過去の教訓を活かし、感情に流されず冷静に中国を分析する姿勢を持ち続けることが、日中関係の将来にとって不可欠だ。
