PIVOT TALK FOOTBALL
世界的セットプレーコーチに学ぶ、コーナーキックの極意
(276)
5,654回視聴
2025年8月3日

セットプレーを制すことが試合を大きく左右する。そのセットプレーどこが重要なのか? 選手はどこを注意しなければならないのか? アストン・ヴィラFCセットプレーコーチであるオースティン・マクフィー氏にセットプレーの重要性を聞いた。 <ゲスト> オースティン・マクフィー|アストン・ヴィラFC セットプレ...
世界的セットプレーコーチが語る「コーナーキックの極意」と「ストライカー魂」
アストン・ヴィラのセットプレーコーチを務め、ポルトガル代表でもクリスティアーノ・ロナウドに指導するオースティン・マクフィー氏。そんな世界最高峰のセットプレー指導者がヴィッセル神戸の指導のために来日した際のインタビューから、サッカーのセットプレーに関する極意を紹介する。

Q. セットプレーで最も重要なことは何ですか?
セットプレーで最も重要なのは一貫性を保つことと、セカンドボール(こぼれ球)への対応です。興味深いことに、セットプレーから生まれるゴールのうち、最初のボールタッチよりもセカンドボールから決まるゴールの方が9倍も多いというデータがあります。
この知識を持つことで戦術的な考え方が変わってきます。セットプレーの最初の局面だけでなく、その後のフェーズにも注目することで、得点の可能性が大きく広がるのです。
Q. マクフィー氏はヴィッセル神戸でどのような指導を行ったのですか?
2024年7月にヴィッセル神戸を訪問し、セットプレーの指導を行いました。その後、ヴィッセルは2024年にセットプレーから24ゴールを挙げ、Jリーグで1位の数字を記録。リーグ優勝と天皇杯優勝に貢献しました。

しかし、マクフィー氏は「その仕事はヴィッセル神戸の人々によってなされたものだ」と謙遜しています。彼の訪問によってセットプレーの重要性への意識が高まり、クラブのコーチたちがその分野への集中を高めた結果だと説明しています。
Q. ヴィッセル神戸に伝えた重要なポイントは何ですか?
「アイデアを持つこと、それがどんなアイデアであれ、そのアイデアに対して一貫性を保とうとすること」が重要だとマクフィー氏は強調しています。
例えば、ブロックすることの重要性とその方法についての意識を高めることや、セットプレーのセカンドフェーズの重要性について伝えました。こうした1〜2の小さなポイントを明確なメッセージとして伝えることで、パフォーマンスの向上につながったと考えています。
Q. セットプレーの「原則」と「戦略」の違いは何ですか?
マクフィー氏はセットプレーにおける「原則」と「戦略」を明確に区別しています。原則とは、どのような試合でも変わらない基本的な考え方や哲学のことです。例えば「セカンドフェーズが重要である」という認識や、その後にクラブとして何をするかという方針が含まれます。
一方、戦略はそれぞれの試合のために特別に準備するものです。対戦相手を分析し、最初の選手、2番目の選手、ゴールキーパーの配置、どのマーカーをブロックするかなどを決めていきます。
Q. 相手チームに合わせたセットプレー戦略はどのように立てるのですか?
マクフィー氏は、相手チームによってセットプレー戦略を調整する例として興味深い質問を投げかけました:「アストン・ヴィラがマンチェスター・シティとアウェイで戦う場合、何本のコーナーキックを獲得すると思うか?」答えは「3本程度」。一方、「ホームでレスター戦なら?」という問いには「7〜10本」という回答がありました。
この違いが戦略立案に直結します。シティ戦では選手に多くの戦略を与えても混乱するだけなので、1つのアイデアを細部まで突き詰める方が効果的です。一方、レスター戦では12本程度のコーナーが予想されるなら、4つの異なるアイデアを準備することが可能になります。
Q. コーナーキックの練習方法と選手への指導はどのように行いますか?
マクフィー氏はまず、キッカーの特性を理解することから始めます。アストン・ヴィラでは「トラックマン」という装置を使用し、ボールの蹴り方(トップスピンかサイドスピンか)や正確性を分析します。これによって各キッカーがどこにボールを置けるかが明確になります。

また、選手によって学習スタイルが異なることも考慮しています。映像を見せたり、フィールドで練習したり、イラストを作成したり、スマートフォンにアイデアを送ったりと、3〜4つの方法を使って選手の記憶を助けます。
特に興味深いのは、すべての選手に同じ役割を求めるのではなく、個々の能力に合わせて役割を調整している点です。記憶力が高くない選手には全ルーティンで同じ簡単な役割を与え、理解力の高い選手には状況に応じて変化する役割を与えています。
Q. プレミアリーグで対策が難しかったチームはどこですか?
マクフィー氏によると、セットプレーで対策が難しいチームは3つのカテゴリーに分けられます:
1. ボーンマス:想像力があり、相手の守備構造を分析する点で最も優れている
2. アーセナル:直接的で良いブロックを伴うシンプルなコーナーキックが強み
3. ブレントフォード:ボールをペナルティエリアに入れる量が多く、パワーがあり、ロングスローやセカンドアクションも得意
これら3チームはそれぞれ異なるスタイルで脅威となり、対策も異なるアプローチが必要になります。
Q. セットプレーでの「ストライカー魂」とはどういう意味ですか?
マクフィー氏が強調する興味深い原則の一つに「ストライカー魂」があります。攻撃的なコーナーキックでペナルティエリアに入るディフェンダーは「私はストライカーだ」と感じる必要があるというものです。

普段は守備を担当する選手たちも、セットプレーの場面では子供の頃にゴールを決めるために夢中になっていたあの感覚を思い出す必要があります。なぜなら、ディフェンダーは通常シュート練習をしていないため、ゴールを決めるという意識を特別に持つことが重要だからです。
Q. クリスティアーノ・ロナウドへの指導はどのように行っていますか?
900ゴール以上を決めてきた選手には、すでにゴールを決めるための自分なりのアイデアがあります。マクフィー氏はロナウドについて「セットプレーの最初のアクションでは非常にプロフェッショナルでこちらの望む動きをしてくれるが、セカンドフェーズでは本能でゴールを狙ってほしい」と語っています。
セットプレーの最初の段階は構造化された攻防ですが、その後のフェーズではサッカーの本質的な部分、つまり選手の本能や感覚が重要になります。ロナウドのような選手がチームにとって不可欠な理由の一つはここにあるのです。
Q. ワールドカップでポルトガル代表にどう貢献したいですか?
ポルトガル代表監督ロベルト・マルティネスの分析によれば、ワールドカップで頂点に立つチームはセットプレーで最低1試合を勝ち取り、さらにPK戦でも1試合を勝利する必要があるとのこと。
マクフィー氏はセットプレーのコーチとして、その領域でチームにわずかでも勝負での優位性を生み出すことが自分の責任だと考えています。ワールドカップの歴史を見ても試合は非常に接戦になることが多く、セットプレーの重要性は変わらないのです。