PIVOT TALK BUSINESS
“知らずに”著作権侵害を防ぐ
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2025年7月28日

昨今インターネットに溢れるAI生成画像。 スマホで作った「ジブリ風画像」をSNSにアップするのは著作権侵害にあたるのか? 早稲田大法学部・上野達弘教授に、AIと著作権の最前線を聞いた。 <ゲスト> 上野達弘|法学者・早稲田大学法学学術院教授 京都大学法学部卒、同大学大学院法学研究科博士課程単位取得...
生成AIと著作権の今とこれから - 法的グレーゾーンを超えて
生成AIの普及に伴い、著作権問題が国際的に注目されています。何がOKで何がNGなのか、各国の法律はどう違うのか、そして企業や個人はどう対応すべきなのでしょうか?早稲田大学法学部教授の上野達弘氏に、生成AIと著作権の最新事情を伺いました。

Q. 生成AIの著作権問題は現在どのような状況ですか?
最近、生成AIをめぐる著作権問題が国際的に大きな話題となっています。アメリカでは生成AIと「フェアユース」を巡る裁判が40件以上も進行中です。一方、日本では裁判例はまだ少ないものの、中国などではAI生成コンテンツの著作物性をめぐる裁判例も出始めています。

この分野では、主に3つの問題があります。1つ目はAIの学習段階での著作権問題、2つ目は生成AIの出力物が既存の著作物に類似する場合の問題、3つ目はAI生成物自体に著作権が発生するかという問題です。これらについて国によって法律や解釈が異なり、国際的な事業展開においては複雑な状況となっています。
Q. アンソロピック事件とは何ですか?その判決はどのような影響がありますか?
アンソロピック事件は、Anthropic社が開発したLLM(大規模言語モデル)「Claude」に関する裁判です。Claudeが学習のために書籍を使用したことについて、その書籍の著者が訴訟を起こしました。問題となったのは、Claudeの学習データに違法にアップロードされた海賊版コンテンツが数百万件も含まれていたことです。
2024年6月の判決では、「トレーニングのためのコピー」は変容的利用であるとして「フェアユース」に当たると判断されました。適法に取得したコンテンツをライブラリー化することも同様にフェアユースとされましたが、海賊版コンテンツを取得してライブラリーに保持し続けることはフェアユースに当たらないとされました。
この判決はAI開発側にとって一定の前進とされていますが、まだ地裁レベルの判断であり、最終的にどうなるかは不透明です。著作権者側からは批判も多く、今後も議論が続くでしょう。
Q. 情報解析に関する著作権法の国際比較はどうなっていますか?
各国のAI学習に関する著作権法の規定には大きな違いがあります。日本は2009年に世界で初めて「情報解析」の規定を設け、現在は著作権法30条の4として整備されています。この規定により、日本では多数の著作物やその他大量の情報から様々な情報を抽出する「情報解析」目的の利用は、原則として著作権者の許可なく行えます。
これに対して、EUは2019年に導入した規定では、営利目的の解析も一定条件で許容していますが、権利者が「オプトアウト」(解析拒否)を表明している場合は学習できないとしています。また、EUの規定では「適法にアクセスしたコンテンツ」しか使用できず、海賊版サイトからの取得は認められていません。
日本の規定は比較的緩やかで、オプトアウトの規定がなく、また違法コンテンツの使用を明確に禁じていない点が特徴です。ただし、文化庁のガイドラインでは海賊版コンテンツの使用は「慎むべき」とされています。
Q. 「○○風」のAI生成画像は著作権侵害になりますか?
これは多くの人が気になる問題です。結論から言えば、特定の「スタイル」や「画風」だけを模倣した場合、それは著作権法で保護されるのは「具体的な表現」であって「抽象的なスタイル」ではないという原則から、通常は著作権侵害にはなりません。

これは、スタイルを独占させると他のクリエイターの創作活動が制約されるためです。著作権は死後70年も続く強力な独占権であり、差し止め請求や損害賠償請求だけでなく、日本では最大10年の懲役という刑事罰も伴います。そのような強力な権利をスタイルにまで及ぼすことは避けられています。
ただし、単なる「風」を超えて、具体的なキャラクターや作品の創作的表現を模倣した場合(例えば「ハリーポッターのスネイプ先生がかつらをかぶっている」など)は、明らかに著作権侵害となります。
Q. 生成AIで作った作品に著作権はあるのですか?
AI生成物の著作権については、国によって判断が分かれています。基本的に著作権法は「人間が作った作品」に著作権を付与するもので、機械が純粋に生み出したものには著作権はないとされています。

ただし、「人間の創作的寄与」があるかどうかが重要なポイントです。機械をただの道具として人間が創作したと評価できる場合には著作権が認められる可能性があります。
中国ではAI生成物の著作権を認める傾向があり、アメリカでは著作権局のガイドラインで「人間のコントロールが具体的に及んでいること」が必要とされています。日本では、文化庁の「考え方」において、プロンプトの分量や選択、試行錯誤のプロセスなどを考慮する可能性が示唆されていますが、最終的な判断はまだ明確ではありません。
Q. 国際的なサービス利用の場合、どこの国の法律が適用されるのでしょうか?
これは非常に複雑な問題です。基本的には、学習を行っている国の法律が適用されると考えられますが、「どこで学習が行われているか」という判断自体が難しい場合があります。例えば、日本のサーバーにあるコンテンツをネット上で取得する場合、それがどこで行われていると言えるのかは明確ではありません。
また、ユーザー向けのサービス提供について、日本語で日本人向けに提供されているサービスでも、サーバーがアメリカにある場合、どこの法律が適用されるかは判断が難しくなります。
被害者が訴訟を起こす場所を選べる場合もありますが、日本で訴訟を起こしても、適用される法律は別問題です。日本の裁判所でも「アメリカで行われた行為だからアメリカ法が適用される」という判断がなされる可能性もあります。
Q. 企業がAIを活用する際に注意すべき点は何ですか?
企業が社内用にAIを最適化する場合、どのデータを読み込ませるべきかは重要な問題です。日本企業が追加学習を行う場合、基本的には日本法が適用されると考えられますが、国際的なコンテンツを扱う場合は注意が必要です。
また、AI生成物を公開する際には、既存の著作物との類似性に注意する必要があります。たとえAIが生成したものであっても、既存の著作物と類似していれば著作権侵害となる可能性があります。特に、具体的なキャラクターや作品の表現を模倣した場合は明らかな侵害となります。
最近の生成AIには、著作権問題を避けるためのプロンプトフィルタリング機能が組み込まれているものもあります。例えば、特定のキャラクター名を入力しても生成を拒否するといった機能です。このような技術的対策も重要ですが、生成AIによる出力を確認し、著作権侵害のリスクを自主的に判断することも必要です。