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保守新党の台頭:ライトな排外主義
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2025年7月24日

今回の参院選で躍進した参政党や、一定の支持を集めた日本保守党など、保守を掲げる新興政党。この現象をどう捉えるべきか?彼らの主張、そしてどのような層の有権者が、どのような背景でこれらの政党を支持しているのか。今後、保守新党が日本政治においてどのような存在感を増していくのか、同志社大学の吉田徹教授がその...
参政党と右派の躍進、背景には「経済苦境」と「無党派の取り込み」
参議院選挙で大躍進を果たした参政党。欧米メディアは「ついに日本でも右派ポピュリスト政党が誕生した」と注目している。なぜ今、参政党をはじめとする新たな保守政党が支持されるのか。同志社大学の吉田徹教授に聞いた。

Q. 参院選での参政党や日本保守党の躍進をどう評価していますか?
参政党が14議席を獲得するなど、保守を掲げる政党が議席を得た今回の参院選について、海外メディアは「日本でついに右派ポピュリスト政党が誕生した」と論評しています。

一般的に欧米のポピュリスト政党には2つの特徴があります。1つは経済政策において、かつての左派政党のように保護主義的で市場介入的な政策を掲げること。もう1つは社会政策において、個人の自己決定権より共同体(家族・地域・国)を重視することです。
この基準に照らすと、特に参政党は欧米のポピュリスト政党の特徴を兼ね備えていると評価できます。
Q. なぜ参政党は大きな支持を得ることができたのでしょうか?
出口調査によると、参政党支持者は40代・50代がボリュームゾーンで、若年層と高齢者はさほど支持していません。つまり現役世代の人たちが支持しているという状況です。
大きく3つの理由が考えられます。
1つ目は、現役世代の経済的困窮です。過去3年間、数ヶ月を除いて実質賃金がマイナスになっており、日本人はどんどん貧しくなっています。その中でも負担感が強いのが現役世代です。
2つ目は、岩盤保守層の取り込みです。特に安倍政権以降、自民党が中道化してきたことで右側の空間が空き、そこにいた保守層が自民党に不満を持っていました。参政党がそこにうまくフィットしたのです。
3つ目は、無党派層の取り込みです。日本の有権者市場の特徴として無党派層が多く、少なく見積もっても3割、大きく見積もると6〜7割います。第三の選択肢として新党が出てくると、無党派層はそれに期待します。世論調査で勢いがある政党に「勝ち馬効果」で支持が集まることもあります。
Q. 参政党は「日本人ファースト」というスローガンを掲げていますが、これはどのように有権者に響いたのでしょうか?
生活が苦しかったり将来に不安を抱えたりしている人々は、自分が苦しい理由を分かりやすく説明してくれるスローガンに引きつけられる傾向があります。

日本の「失われた30年」や実質賃金が下がっている背景には複数の理由がありますが、分かりやすく「敵」を名指しして「あれが問題だ」と言われると納得感が高まります。その「スケープゴート」として今回は外国人が名指しされました。
Q. 「外国人問題」と一言で言っても、様々な側面がありますね?
おっしゃる通りです。「外国人問題」には多くの次元があります。例えば京都ではオーバーツーリズムが問題になっていますし、反中国的な意識を持つ人もいます。産業空洞化で苦しんでいる人はグローバル資本を目の敵にするかもしれません。
日本で暮らしていると、誰もが何らかの形で「外国人問題」と呼ばれるものを個人的に経験しています。それをまとめて「外国人問題」「日本人ファースト」というと、誰にでもどこかしら響くものがあるのです。
参政党は、それぞれの論点を拾いつつ「日本人の方が優遇されるべきだ」という主張を展開しています。日本人としてのアイデンティティは、経済状況や性別に関わらず誰もが持っているので、幅広い層に響くメッセージになります。
Q. 安倍政権以降、自民党が中道化したとのことですが、もう少し説明していただけますか?
第二次安倍政権、特に2012年から始まった政権の特徴は、自民党が右寄りになったことです。その支持基盤には「岩盤保守」と呼ばれる層が大体1割から2割、大きく見積もって25〜30%いました。

安倍政権は、支持率が下がる時期があっても一定以上下がらないという特徴がありました。それは何があっても安倍政権を支持するという岩盤保守層がいたからです。
しかし、菅政権、岸田政権、そして石破政権と進むにつれ、この層が少しずつ剥がれていっています。安倍晋三が持っていた会見スタイルや中国に対する強硬な姿勢などが徐々に和らいできたことに、岩盤保守層は反感を持ち、代わりの投票先として参政党を選んだ側面があります。
Q. 参政党と日本保守党の決定的な違いは何でしょうか?
1つは、参政党がかなり臨機応変に主張を変えるのに対し、日本保守党はより確固としたイデオロギーを持っている点です。日本保守党を創設した人々やサポーターは、安倍自民党を熱心に支持していた人たちで、かなり旧来の保守的なイデオロギーを持ち、ぶれません。会見や伝統的な日本のあり方を全面に掲げる、イデオロギー色の強い政党です。対して参政党は、必ずしもそこまでイデオロギー的なものが背景にあるとは言えません。
2つ目の違いは組織化の程度です。参政党は党員が6万人ほどおり、北海道から沖縄まで全選挙区に候補者を立て、各都道府県に支部があり、地方議員も持っています。選挙時に実際に活動するのはこうした「兵隊」たちで、彼らの活動量の多さが有権者へのリーチを可能にしました。日本保守党はそこまでの全国的組織はなく、それが結果の違いとして現れました。
Q. 欧米のポピュリズム勢力と比較して、似ている点や違う点はありますか?
似ている点は、経済政策では保護主義的・財政拡張主義的な立場をとり、社会政策では保守的・権威主義的な価値を掲げていることです。これは他国のポピュリスト政党と共通しています。
違う点は、日本の「外国人問題」が比較的ライトなことです。日本は移民社会ではなく、外国人人口は3%程度。ヨーロッパでは10%を超えています。また日本人の排外主義的意識は先進国の中でかなり低く、ハードな外国人排斥主義を持つ人は1割にも満たないとされています。テロやヘイトクライムも比較的少ないです。
そのため、参政党の「日本人ファースト」もヨーロッパの右派ポピュリスト政党に比べると穏健なものになっています。
Q. 今後、与党や他の政党が参政党の主張に近づいていく可能性はありますか?
今回の選挙で「外国人問題」が政治における争点であることが明らかになりました。外国人問題を自分たちの論点に転換しようとする勢力は今後も出てくるでしょう。日本でも移民問題・外国人問題が政治争点化していく最初の参議院選挙だったと振り返られることになると思います。
与党も外国人問題への対処を主張し始めたので、参政党は別の論点を持ち出して有権者を動員しようとするインセンティブが出てくるでしょう。
ただし、「法と秩序」の問題では、より強硬なことを言う政党の方が支持を集める傾向があります。経済政策や社会政策なら合理性や予算が問われますが、外国人排斥は価値の問題です。参政党が主張を穏健にせず、むしろより急進的なことを言い、他の政党がそれに追従する結果、社会全体が右傾化していく可能性も否定できません。