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ロシア・ウクライナ:50日以内停戦はあり得るか?
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2025年7月20日

ロシア・ウクライナ停戦交渉の最新状況はどうなっているのか。トランプ大統領と個人的なつながりがあるとされるプーチン大統領との交渉が難航する背景は?アメリカからウクライナへの武器供与の新たな枠組みとは?なぜトランプ大統領は「50日以内の停戦合意なければ100%関税」を提案したのか?そしてロシアの反応は?...
トランプ大統領の方針転換:ロシアとウクライナの停戦はどうなる?
ウクライナ戦争の停戦を目指すトランプ大統領の政策が大きく転換しました。当初「24時間で解決する」と豪語していたものの、実際にはプーチン大統領との関係構築に苦戦。そして先週、武器支援の一時停止から継続へと方針を変更する出来事がありました。この変化の背景には何があるのでしょうか?ロシアへの制裁と中国・インドとの貿易交渉とのバランスをどう取るのか?明海大学教授の小谷哲男氏に詳しく解説していただきました。

Q. トランプ大統領は就任後、ロシア・ウクライナ停戦に向けてどのような動きをしてきましたか?
トランプ大統領は大統領選挙中に「自分が就任すれば24時間でウクライナ戦争を終わらせる」と主張していました。選挙で勝利した後すぐに、ウクライナ問題担当特使としてキース・ケロッグ氏を任命し、就任前から問題に取り組む姿勢を示しました。
就任から約1ヶ月後の2月にはプーチン大統領と電話会談を行い、停戦に向けて動くことを確認しましたが、その後の交渉はうまく進みませんでした。当初トランプ大統領は、ロシアの方が停戦に前向きで、むしろウクライナが後ろ向きだと考えていたようです。

このためウクライナに対しては、鉱物資源を巡る協定をアメリカと結びました。2月末にはゼレンスキー大統領がホワイトハウスを訪れた際、この鉱物資源協定にサインする予定でしたが、バンス副大統領の「ゼレンスキー大統領はトランプ大統領に感謝していない」という発言から両者の間で険悪な雰囲気になり、停戦仲介が滞る場面もありました。
しかし、その後トランプ大統領はウクライナよりの姿勢を示すようになり、むしろプーチン大統領の方が停戦に後ろ向きだと認識を変えました。7月に入ってからはウクライナ支援を継続する一方で、ロシアへの制裁を課すという方向に転換しています。
Q. トランプ大統領とプーチン大統領の関係は現在どうなっていますか?
トランプ大統領は自分とプーチン大統領の個人的な関係を活用すれば停戦に持ち込めると信じていたようです。しかし、プーチン大統領が停戦に応じず、トランプ大統領との電話会談直後にもウクライナへのミサイルやドローン攻撃を続け、民間人の死者を多数出す事態が続いたことから、トランプ大統領もプーチン大統領が停戦に前向きでないことに気づきました。現在、両者の間で停戦に向けた動きは完全に止まっています。
プーチン大統領は戦争の根本的問題として、ゼレンスキー政権を「ネオナチ政権」とみなしています。そのため、ゼレンスキー大統領を排除し、ウクライナを事実上ロシアの領土にすることが戦争の目的であり、これが達成できない限り停戦に応じるつもりはないと考えられます。
Q. トランプ大統領はなぜプーチン大統領との関係構築に失敗したのでしょうか?
トランプ大統領は元不動産開発者であり、国の領土を主権を伴った領土ではなく単なる不動産とみなす傾向がありました。ウクライナの領土を一定程度ロシアに与えれば、プーチン大統領は満足して戦争を止めるだろうと甘く見ていた節があります。
この問題でトランプ大統領の特使としてプーチン大統領と4度も会談したケロッグ氏も不動産開発の出身です。プーチン大統領からウクライナの東部・南部の領土を全て得なければ戦争を止められないと言われると、「そうですか」という態度でウクライナ側に領土譲歩を迫るようなこともありました。
トランプ大統領がプーチン大統領との個人的関係を過信したこともありますが、不動産開発の発想でこの和平問題に取り組んだことが大きな失敗の原因だったと思われます。
Q. ウクライナへの武器供与の一時停止と再開はどのような経緯があったのですか?
今回問題となったウクライナへの武器支援の一時停止は、トランプ政権というよりも国防総省の判断で行われた側面が強いです。ウクライナだけでなくイスラエルにも多数のミサイルを供与し、先月はイランとイスラエルの戦闘が本格化する中で、アメリカの防空システムを中東に展開してイランのミサイルやドローンを撃墜しました。
これによってアメリカ軍の在庫がかなり減少し、このままでは他国との戦争が起きた際に自国を守るミサイルが不足するという懸念から、ペンタゴン(国防総省)の判断で供与を停止したのです。しかし、この判断はトランプ大統領に事前に伝えられていませんでした。
トランプ大統領はゼレンスキー大統領やドイツの首相から知らされ、面目を失った面もありましたが、ウクライナ支援を継続すべきだという判断に至り、米軍の在庫が減少しても武器支援を続けるという方針に切り替わりました。
Q. 今回決定した武器支援はこれまでと何が違うのですか?
これまでウクライナに供与されてきた武器はバイデン政権時代に決定されたものです。今回は約100億ドル規模になると言われていますが、トランプ政権として初めてウクライナへの武器支援を決定することになります。

新しい点としては、武器自体はアメリカが提供するものの、これを購入するのはヨーロッパ諸国という点です。ヨーロッパがアメリカから武器を買い、それをウクライナに供与するという形になります。バイデン政権時代はアメリカの予算でウクライナに武器を供与していましたが、今後はヨーロッパの資金で行われます。
これはトランプ大統領の支持者たちが「自分たちの税金をウクライナ支援に使うこと」に反対していることを反映しています。トランプ大統領としては、アメリカの武器が評価され、さらにアメリカに資金が入ってくるという点で支持者にアピールできる形になります。
また、注目すべき点として、この武器支援パッケージに防空ミサルのような防御的兵器だけでなく、長距離の攻撃能力も含まれるかどうかがまだ決まっていません。トランプ大統領は当初これに前向きでしたが、支持基盤が攻撃的兵器の供与に反対していることから、防御的兵器のみになる可能性もあります。
Q. 50日以内に停戦交渉で合意しなければ関税を課すという方針の狙いは何ですか?
この関税を手段として使うというのは、実はアメリカの議会で準備されているロシアに対する制裁法案の中で議論されていることです。議会の法案ではロシアからエネルギーを買っている国に対して500%の関税をかけるという内容になっています。
ウクライナ戦争開始後、ロシアからエネルギーを買っている主な国は中国とインドであり、事実上この二国を狙い撃ちにした制裁法案となっています。しかし、トランプ大統領は現在中国とインドと貿易交渉をまとめる最中であり、議会主導でこの法案が通れば交渉カードが減ってしまいます。

トランプ大統領が発表したのはロシアに対する100%の関税と、ロシアと貿易している国への100%の関税です。議会案の500%から100%に下げたことからも、ウクライナ停戦よりも中国・インドとの貿易交渉を優先したい意向が読み取れます。50日間の猶予を設けたのも、中国やインドとの交渉中であり、一定の猶予を持たせたいという思惑があるようです。
ロシアに対する制裁や二次制裁を実施する方針自体は評価できますが、同時に進行中の貿易交渉もトランプ大統領にとっては優先順位が高いことがうかがえます。
Q. 50日以内に停戦交渉で進展があるでしょうか?
進展の可能性は極めて低いと思われます。ロシアはトランプ大統領の提案後もウクライナへの攻撃を続けており、特に東部では戦線の拡大を目指す動きも見せています。ちょうど気候的に大規模な軍事作戦がしやすい時期であり、ロシアがこの50日間で停戦に応じるとは考えにくいでしょう。

逆に言えば、この50日間という猶予をロシアは戦線拡大のために利用する可能性もあります。
Q. 今後のロシア・ウクライナ停戦のカギとなる要素は何でしょうか?
アメリカからウクライナへの攻撃的兵器の供与が復活するかどうか、そしてその射程がどの程度のものになるかが重要なポイントです。
現在、ウクライナは自国開発のドローンを使ってロシア軍の攻勢を何とか食い止めていますが、物量面ではロシアにまだ余裕があります。さらに北朝鮮が砲弾やミサイルを提供し、兵士まで派遣してロシアを支援しているため、全体的にはロシアが優勢な状況です。
ここにアメリカ製の長距離攻撃能力が加われば、ロシアの戦線拡大を阻止できる可能性が出てきます。トランプ大統領はゼレンスキー大統領に「ウクライナはモスクワなどロシアの主要都市を攻撃できる能力があるのか」と質問したと伝えられており、長距離攻撃能力の供与を検討している可能性もあります。ただし、最近の発言では長距離攻撃能力は供与しないとも述べており、射程500kmや1000kmのミサイルを供与する可能性は低いかもしれません。
停戦の見通しとしては、ロシアの継戦能力が続く限り難しいでしょう。ロシア経済は悪化していますが、いつ戦争継続が不可能になるかが重要です。少なくとも今年いっぱいはロシアは戦争を継続でき、さらに1-2年続く可能性も高いと考えられます。