マーケット超分析
円高VS円安/ドルは「基軸通貨」であり続けるか?/プラザ合意2.0は2027年?
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2025年7月18日

月イチで株式相場の解説を行う、「マーケット超分析」の7月回。後編は、内田稔と木野内栄治が年後半の為替相場を予測。 <ゲスト> 木野内 栄治|大和証券 チーフテクニカルアナリスト 内田稔|高千穂大学教授 https://www.youtube.com/@professoruchida
実質金利から読み解く!中長期の為替相場を大胆予測

Q. 円安傾向が続いている理由は何でしょうか?
2024年に入り、ドル円相場はドル安円高の動きを見せていますが、これは円高ではなくドル安によるものです。年初来の通貨ペアを指数化したチャートを見ると、スウェーデンクローナ円やスイスフラン円、ユーロ円、ポンド円など、多くの通貨ペアで円安が進行しています。特にスイスフラン円は史上最高値を記録しています。

幅広い通貨に対して円安が進行している中、市場では「アメリカが利下げで日本が利上げ方向だからドル安円高になる」という見方が広がっています。しかし実際には、すでに利下げを実施している国の通貨に対しても円安が続いています。
例えば、スイスは0.5%の利下げを行い、日本は0.25%の利上げを実施したため、政策金利差は0.75%ポイント縮小しました。理論的にはスイスフラン安円高を示唆する方向ですが、現実はスイスフラン高円安となっています。同様に、ECBは今年1%ポイントの利下げを行いましたが、ユーロ高円安が続いています。
Q. 名目金利差よりも重要な指標は何ですか?
為替相場や実体経済においてより重要なのは、名目金利からインフレ率を差し引いた「実質金利」です。この実質金利が根強い円安圧力を作り出しています。
日本の政策金利は0.5%、長期金利は1.5%程度ですが、3%台半ばのインフレ率を差し引くと実質金利はマイナスになります。2023年にはアメリカが1%の利下げを行い、日本が0.35%の利上げを実施したにもかかわらず、ドル円は年初の140円から年末には155円とドル高円安になりました。
金融政策の方向性や政策金利の動きから予想される為替変動とは逆の動きが起きているのは、この実質金利の影響が大きいと考えられます。日本の実質金利が他通貨より低く、マイナス圏にあることが、円安圧力を生み出しています。
Q. 実質金利を上げるにはどうすればいいのでしょうか?
実質金利は「名目金利-インフレ率」で算出されるため、実質金利を上げるには二つの方法があります。一つは利上げによって名目金利を上げること、もう一つはインフレ率を下げることです。

利上げを行えば名目金利が上昇し、その結果としてインフレ率も収まると、実質金利は上昇します。実質金利が上昇すれば、円高に向かう可能性が高くなります。
しかし現状では、アメリカの関税政策の影響もあり、日銀による利上げは難しい状況です。日本の政策金利が中立金利より低い状態が長引けば、ある程度のインフレが継続し、実質金利がマイナス圏にとどまる可能性が高いため、円高には向かいにくいと予想されます。
現在、先進国でインフレ率が3%台なのは日本とイギリス、オランダくらいです。特に日本は、インフレ目標2%を3年以上超過しているにもかかわらず、利上げを遅らせ過ぎた結果、インフレが継続している状況です。
Q. ドル相場の今後の見通しはどうなっていますか?
4月から5月にかけて「アメリカ売り」というテーマが出現し、財政拡大による金利上昇がドル売りにつながる動きがありました。しかし6月以降、アメリカの長期国債入札が予想以上に好調だったため、財政拡大が「悪い金利上昇」につながるという見方は弱まっています。
そのため、金利が横ばいか若干上昇すれば、ドルも底入れして持ち直す可能性があります。政策金利は低下しても、インフレなどを見越した長期金利はそれほど下がらないか、むしろ上昇する方向に動く可能性があり、それによりドルも持ち直すと予想されます。
一時的に言われた「ドル離れ」や「アメリカ売り」は落ち着いた見方ができます。ドルに代わる明確な基軸通貨候補がない状況では、一時的なテーマとしてドル安になっても、持続的な動きにはなりにくいと考えられます。
金利とドルの関係性は、4月から5月の「逆相関」(金利上昇→ドル下落)から、6月以降は再び「順相関」(金利上昇→ドル上昇)に戻っています。そのため、今後は金利上昇がドル高につながる方向に戻ると予想されます。
Q. 2024年後半から2025年にかけての為替相場はどう変化すると予想されますか?
専門家の間でも見方が分かれています。一方は円安継続を予想し、もう一方は秋以降の円高を予想しています。
円安継続派の見方では、日本のインフレが続くことで実質金利がマイナス圏に留まり、円安圧力が続くと予想しています。また、日本企業による海外M&A(例:日本製鉄によるUSスチール買収)なども円安要因となっています。
一方、秋以降の円高を予想する見方もあります。これは世界景気の減速を背景にしています。アメリカの関税政策により、外国企業は価格引き下げを余儀なくされ、アメリカのインフレは予想より抑制される可能性があります。その結果、消費者のインフレ期待が低下し、消費も減少する恐れがあります。
こうした状況下でFRB(米連邦準備制度理事会)が急速かつ大幅な利下げを行えば、ドル安になる可能性があります。世界の中で利下げの余力があるのはFRBだけであり、景気悪化を受けて「なりふり構わず」の金融緩和を行えば、秋以降はドル安円高になると予想されます。
Q. 2027年頃に「マルアラーゴ合意」は実現するのでしょうか?
「マルアラーゴ合意」とは、1985年の「プラザ合意」のように、主要国が協調してドルの切り下げと他通貨(特に中国元)の切り上げを行う合意を指します。トランプ氏のフロリダの別荘「マルアラーゴ」で行われるとの憶測から、この名称で呼ばれています。
高度経済成長と通貨切り上げのパターンを分析すると、2027年頃に「マルアラーゴ合意」が実現する可能性があると指摘する声もあります。歴史的に見ると、高度経済成長を遂げた国(ドイツ、日本、中国)は、労働力の増加や自動車産業の発展に伴い、鉄などの原材料価格が上昇する「非鉄インフレ」を経験し、その後に通貨切り上げが行われてきました。

現在のインフレ環境下ではドル切り下げは難しいですが、2027年頃に景気がスローダウンした後であれば、ドルの切り下げと元の切り上げが行われる可能性があります。その場合、円も無傷ではいられず、円高になる可能性があります。
ただし、プラザ合意当時と現在では状況が異なります。当時はアメリカの最大の貿易赤字相手国が同盟国(日本など)でしたが、現在は中国が最大の赤字相手国です。米中関係が同盟関係ではないため、交渉での通貨調整は難しいかもしれません。
Q. 今後の為替変動に備えて、投資家はどのような準備をすべきでしょうか?
短期的には、秋頃までに株式の利益確定を検討するのも一案です。円高になれば生活は一時的に楽になりますが、日本の経済成長には逆風となる可能性もあります。
長期的には、日本はインフレ経済に移行していると考えられるため、日本株を長期目線で保有することが推奨されます。インフレ下では、企業収益や企業価値が変わらなくても、数字は大きくなっていく傾向があるためです。
また、為替リスクを考慮した投資としては、日本株に加えてアメリカ株への投資も検討すべきです。アメリカ株に投資すれば、円高になってもアメリカ株の上昇によって円高の影響を吸収できる可能性があります。
為替変動が心配な場合は、米国株を買うと同時に、FXでドル売り円買いのポジションを持つことで、為替ニュートラルな状態で株価上昇分だけを獲得する戦略も考えられます。