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「日本売り」の兆し。超円安再来のリスク
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2025年7月18日

7月に入ってから、円安と長期金利高騰が続いている。その背景には何があるのか?参院選後に政治が不安定化すると、為替にどんなインパクトがあるのか?為替ストラテジストの佐々木融氏に聞いた。 <ゲスト> 佐々木融|ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト 日本銀行で為替市場介入を担当し、ニュ...
日本で「円売り」が加速する3つの深刻な理由
7月に入ってから日本市場は「トリプル安」の様相を呈している。円安、長期金利上昇、株安が同時に進行する状況だ。特に円安は対ドルだけでなく、対ユーロやスイスフランなど他の主要通貨に対しても進行している。なぜ今、円売りが加速しているのか?その背景と今後の見通しについて為替ストラテジストの佐々木融氏の見解を紹介する。

Q. 7月に入ってから日本市場で何が起きているのですか?
7月に入ってから日本のトリプル安という状況が見られている。具体的には円安、金利上昇、株安が同時に進行している。円の名目実効レートは上昇(円安)し、日本の10年国債金利も上昇している。株式市場においては、アジア株やナスダックが強い一方で、日経平均やTOPIXは弱含んでいる。

Q. なぜ今、「円売り」が起きているのでしょうか?
背景には主に3つの要因がある。
1つ目は、参議院選挙による政治的不透明感だ。選挙で与党が過半数割れするかもしれないという懸念がある。政権が不安定化すれば、ポピュリスト的な政策が採用され、消費税減税や現金給付などのばらまきが行われる可能性がある。これは財政赤字の拡大を招き、国の債務残高を増加させる要因となる。
2つ目は、日米通商交渉の進展の遅れだ。通商交渉が長引くほど、日本はアメリカへの投資を増やしたり、アメリカからの輸入を増やしたりする必要が出てくる。これは日本の貿易赤字拡大につながり、円安圧力となる。例えば、2023年の日本の貿易赤字は5.5兆円だが、対米黒字が8.6兆円あるため、これがなくなると14兆円もの赤字になってしまう。
3つ目は、日本のインフレ率の高さだ。日本の消費者物価指数の前年比はG7諸国の中で最も高い状態が7ヶ月連続で続いている。一方で金利は依然としてG7で最低水準にあり、実質金利はマイナスだ。このため、円建て資産を保有すると価値が目減りする状況が続いている。

Q. インフレが高いにもかかわらず、なぜ政府は現金給付や減税などを検討しているのですか?
これはポピュリズム的な傾向が強まっているためだ。インフレで困っている状況で、現金給付や減税を行うと、さらにインフレを加速させる逆効果となる。お金をばらまけば通貨の価値が下がり、インフレ率が上昇する。コロナ禍で相当なお金が配られたことも、現在のインフレの一因となっている。例えば、国民一人当たり2万円を配ると、それだけで2兆円のお金が市場に出回ることになる。

Q. 円安は今後どこまで進む可能性がありますか?
現在、海外の投機筋は円ロングポジションを解消しつつある。5月頃からの相関関係で見ると、このポジションが完全に解消されると、ドル円は155円程度まで上昇する計算になる。さらに懸念されるのは、投機筋が円ショートポジションを取り始めた場合だ。その場合、160円台も視野に入ってくる。
また、対ドル以外の通貨、特にスイスフランやユーロに対しても円安が進行している。スイスフラン円は1975年からのチャートで見ても、過去最高値を更新する勢いだ。ユーロ円も発足以来の高値に近づいている。

Q. 円安が進行する中、政府は為替介入を行う可能性はありますか?
介入の可能性はあるが、効果は限定的かもしれない。2022年に行われた為替介入では、25兆円を使ったにもかかわらず、結局元の水準に戻ってしまった。日本の外貨準備高は約160兆円だが、家計は1000兆円以上の円建て資産を持っており、年間30兆円程度の実需の円売りが出ている。このような状況で、投機筋が参入した場合、外貨準備だけでは対応できない可能性がある。

Q. 日本経済にとって、この状況から脱却するには何が必要ですか?
供給サイドの改革が必要だ。特に労働力供給の最適化が重要となる。日本の就業者数は過去最高だが、一人当たりの労働時間は1990年と比べて20%程度減少している。また、雇用者の3割が55歳以上であり、20代は16%しかいない。このような状況で賃金上昇圧力が続き、それが物価上昇につながっている。

外国人労働者の受け入れ拡大や、働き方改革の見直しによって労働時間の柔軟化を図ることで、供給力を高めることが重要だ。また、日本企業が海外ではなく国内に投資するような環境整備も必要となる。
単なる現金給付や減税ではなく、こうした構造的な問題に取り組まなければ、インフレと円安の悪循環から抜け出すことは難しいだろう。