PIVOT TALK BUSINESS
(305)
7,275回視聴
2025年7月22日

トランプが打ち出したゴールデンドーム計画とは。人類は経済成長の最後のフロンティアである宇宙進出を進める中での覇権争いはどうなるのか。これからの宇宙防衛に関して長島純氏に聞いた。 <ゲスト> 長島純|中曽根平和研究所研究顧問 防衛大学卒業後、1984年に航空自衛隊入隊。筑波大学大学院地域研究科(欧州...
「大規模なシステム、宇宙空間を使ったシステムを作らなければならない」と語る専門家。1750億ドル(約25兆円)規模の野心的計画の全容とは。
トランプ大統領のゴールデンドーム構想とは?

トランプ大統領が就任直後に発表した構想で、アメリカの広大な本土をミサイルなどの脅威から守るための防衛システムです。イスラエルの「アイアンドーム」に着想を得たものですが、守るべき領域が比較的小さいイスラエルと異なり、アメリカでは数十倍、数百倍広い地域を守る必要があります。そのため、より大規模なシステムが必要で、宇宙空間も活用する構想となっています。
宇宙空間を活用する防衛の仕組みとは?
これはレーガン大統領時代のSDI計画(スターウォーズ計画)の発想を引き継いだものです。長距離弾道ミサイルは一度宇宙空間に入り、大気圏を超えて落下してきます。従来の防衛システムは落下してくる最終段階での迎撃を主としていましたが、新たな構想では宇宙空間からの対処も視野に入れています。

弾道ミサイルは打ち上がった直後が最も速度が遅く、軌道変更もしていないため、この段階で打ち落とすのが効果的です。さらに宇宙空間から攻撃することで、他国の領土や主権の問題を回避できるという利点もあります。
現代の脅威の多様化にどう対応するのか?
現代の脅威は極超音速ミサイルや軌道を変えられる可変型ミサイル、レーダーに映りにくい巡航ミサイル、さらには大量のドローン攻撃など多様化しています。これらに対応するために、宇宙空間と地上のシステムを組み合わせた総合的な防衛網が必要になっています。
ゴールデンドーム構想では、ミサイルの飛行段階を3つに分け、それぞれで対処します。打ち上げ直後の「ブースト段階」、宇宙空間を飛行する「ミッドフェーズ」、そして落下してくる「ターミナルフェーズ」です。これらすべての段階で迎撃能力を持たせる計画です。
開発期間と予算規模は?
トランプ大統領は約1750億ドル(約25兆円)の予算で3年計画として提案しています。非常に野心的な計画ですが、レーガン時代のSDI計画と比較すると、今は技術的な状況が大きく異なります。

現在は宇宙がビジネスの成長フロンティアとなり、民間企業の宇宙技術が急速に発展しています。例えばスペースXのような企業の技術を活用することで、かつてより実現可能性は高まっていると考えられます。
また、製品開発もスパイラル方式で段階的に完成度を高めていくアプローチを取る可能性が高く、最初からすべてを完成させるのではなく、できたものから実用化していくでしょう。
アメリカの宇宙防衛における民間企業の役割は?
アメリカでは現在、この構想を巡って大きなうねりが生じています。かつてのアポロ計画やマンハッタン計画のような国家的事業になると、アメリカはイノベーションを加速させ、世界最先端の技術を追求します。
特に今回の場合、民間技術の進化が著しく速いため、政府だけでなく民間企業とアカデミックな世界も加わった官民学の連携が進んでいます。多くの企業がこの計画に参画を目指しており、アメリカ宇宙軍を中心に取りまとめが行われています。
特にイーロンマスク率いるスペースXは、NASAや軍の打ち上げを担当するなど、アメリカ政府は宇宙ビジネスをこの企業に依存する傾向が強まっています。費用対効果や開発スピードの面でスペースXの技術は不可欠となっているのです。
同盟国との協力はどうなるのか?
現時点で正式な発表はありませんが、日本とアメリカの宇宙空間における安全保障協力は非常に進展しています。アルテミス計画(月探査計画)などでも日本は月面ローバーや衛星システムの共同開発に参画しています。
この構想は非常に大規模で、アメリカ一国では完成が難しいと考えられます。3年という短い期間で実現を目指すなら、同盟国の協力が不可欠です。価値観を共有する国々、具体的にはオーストラリア、ニュージーランド、フランス、ドイツ、イギリス、インド、カナダなどの協力を得ながら開発が進むでしょう。
軍拡競争につながる懸念はないのか?
この点についてはアメリカ国内でも議論があります。確かに中国やロシアがさらに強力な兵器を開発する可能性はありますが、逆にそれは相手国にもコストを強いることになります。

相手国としては、自国の兵器がゴールデンドームによって無効化されれば、さらに多くの資源を投入する必要が生じます。これは軍事費の競争を強いることになり、結果として交渉の場に戻ってくる可能性もあります。
レーガン政権時代のSDI計画も、結果的にソ連に経済的負担を強い、冷戦終結の一因となりました。軍備競争は生存競争に例えられ、完全に止めることは難しいものの、こうした緊張関係が最終的に軍縮交渉につながる可能性もあります。
宇宙の軍事利用に関する国際ルールは?
宇宙空間が混雑し、競合し、時に敵対する場へと変化する中で、ルール作りの必要性が高まっています。現在、人工衛星は約2万5000個程度軌道上にあり、一つの衛星が破壊されると3000から5000個の宇宙デブリが発生するという問題もあります。
宇宙の軍事利用については、既存の条約ではあいまいな部分が多く、新たな国際的枠組みの構築が課題となっています。国際社会はこの問題に対処するため、宇宙での軍事活動に関する規範づくりを進めていますが、各国の利害が対立する中で、包括的な合意には至っていません。