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少子化の原因は未婚化なのか?
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2025年8月3日

少子化が進む日本において何が必要なのか。必要な政策や対策はどのようなことなのか。変わりつつある結婚観、主流になりつつあるマッチングアプリでの出会い。様々な少子化問題について慶應義塾大学准教授の阪井裕一郎氏に聞いた。 <ゲスト> 阪井裕一郎|慶應義塾大学 准教授 1981年愛知県生まれ。専門は家族社...
結婚と出産の未来:社会学から探る少子化対策のヒント
少子化対策のカギは結婚?マッチングアプリの台頭?海外との比較で見えてくる課題とは?家族社会学の視点から、現代の結婚事情と少子化問題の真相に迫ります。

Q. 少子化の原因は「未婚化」にあるという指摘についてどう考えますか?
イエスでもありノーでもあります。日本社会に限って言えば、確かに未婚化の進行と出生数の減少には明確な関係があります。未婚率は上昇を続け、2020年のデータでは男性が約28%、女性が約18%となっています。これは1980年代の数値(男女ともに5%程度)と比較すると、急激な上昇です。
一方で日本以外の国々、特に欧米諸国を見ると、必ずしも未婚化が少子化に直結するわけではありません。例えばフランスやスウェーデンなどでは、結婚せずに子どもを持つケースが一般的になっています。いわゆる「婚外子」が過半数を占める国も13カ国あります。

興味深いのは平均初婚年齢と第1子出産時の母親の年齢の関係です。日本では結婚が先で出産が後という順序が強く守られていますが、欧米諸国では結婚よりも出産が先という傾向も見られます。つまり、婚姻制度と家族形成が必ずしも一致していないのです。
Q. 結婚観はどのように変化してきましたか?
90年代以前と以降で大きく変わりました。かつては女性にとって結婚は「生きる手段」という側面がありました。就職する際に「結婚するまで」という前提の契約をすることも当たり前でした。
しかし1985年以降、男女雇用機会均等法の施行などにより女性の就労機会が拡大し、経済的自立が可能になりました。世界的にもジェンダー平等の意識が高まり、結婚は「強制されるもの」から「個人の自由」へと変化しました。
多くの人は「いつかは結婚したい」と考えていますが、「結婚する必要はない」と考える人も増えています。結婚の自由度が高まった一方で、結婚相手を探すことが「自己責任」となり、第三者の介入が減少しました。これは個人のプライバシー尊重という点では良い変化ですが、パートナー探しが完全に個人の能力に委ねられるようになったという側面もあります。
Q. マッチングアプリはどのくらい広がっていますか?その影響は?
現在、結婚した人の出会いのきっかけとしてマッチングアプリが最も多くなっています。最新の調査では、この1年以内に結婚した人の約25%(4組に1組)がマッチングアプリで出会っており、職場や学校、知人の紹介(それぞれ10%程度)を大きく上回っています。この傾向は年々上昇しています。

マッチングアプリの普及は必然的な流れです。恋愛関係に限らず、仕事や人間関係全般がデジタル化している中で、結婚相手を見つけるプロセスもオンライン化するのは自然なことです。
ポジティブな面としては、コミュニケーション能力を補完し、出会いの入り口のハードルを下げる効果があります。また、セクシャルマイノリティなど、従来の方法では相手を見つけにくかった人々にとって有効なツールとなっています。
一方でネガティブな面もあります。自分の好みの条件で最初からフィルタリングをかけるため、価値観が固定化されやすく、「偶然性」が排除されます。本来なら意外な出会いから生まれる可能性が減少するのです。また、選択肢が多すぎることで決断ができなくなったり、「もっといい人がいるのでは」という不安から関係の持続性が脅かされることもあります。
Q. 出会いの場はどう変化してきましたか?
高度経済成長期には、職場が重要な出会いの場でした。企業が安定した帰属先であり、職場での出会いや仕事関係での紹介が一般的でした。

しかし90年代以降、企業文化の変化やハラスメント意識の高まりにより、職場は出会いの場から「最もリスキーな場所」へと変わりました。かつては女性が結婚退職するのが前提だったため、職場での恋愛も許容されていましたが、現在は結婚後も同じ職場に残るケースが増え、トラブルのリスクが高まっています。
Q. 女性の社会進出は少子化の原因になっていますか?
単純にそうとは言えません。1980年代後半から90年代にかけて、先進国は大きく二つのグループに分かれました。出生率を回復したグループと、下がり続けたグループです。
北欧諸国などは女性が働くことを前提としたワークライフバランス政策を進め、出生率を回復しました。一方、日本や韓国、南ヨーロッパ諸国などは従来の政策を変えずに少子化が進行しました。
2000年代初頭のデータでは、女性の就労率が高い国ほど出生率も高い傾向がありました。つまり、女性の社会進出を支える仕組みがあれば、必ずしも出生率は下がらないのです。ただし、2010年代以降はOECD諸国全体で出生率が下がっている点には注意が必要です。
Q. 伝統的な家族観への回帰の動きはありますか?
確かにそうした傾向は見られます。社会問題が「伝統がなくなったから」と結びつけられることもあります。
例えば、ジェンダー平等の議論の中で「専業主婦が否定されているように感じる」という声もあります。これまで女性だけが担ってきたケアの価値は重要ですが、これまでのジェンダー平等は「女性のライフスタイルを男性に近づける」方向に進み、「男性がケアの領域に降りてくる」という変化が不十分でした。
最近では「対岸の家事」などのドラマが示すように、専業主婦も働く女性も、様々な生き方を肯定する視点が広がりつつあります。選択肢の多様性を認める社会への模索が続いています。