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外国人不動産規制で、都心の地価は下がるか?
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2025年7月17日

東京都心の急激な価格上昇により、「外国人による投資を規制すべき」との声が高まっている。海外に倣って規制すべきなのか?規制の実行は可能なのか?不動産アクティビストの動きと合わせて、オラガ総研代表の牧野知弘氏に聞いた。 <ゲスト> 牧野知弘|オラガ総研 代表 東京大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行...
不動産アクティビストと外国人購入の規制、同じ穴の問題だ
「不動産アクティビスト」と「外国人による不動産規制」という一見別々の問題は、実は同じ穴の問題かもしれない。日本の大企業が持つ不動産に物申すアクティビストと、マンションを爆買いする外国人投資家。両者の活動により、日本人の居住環境や企業活動が脅かされる可能性について、オラガ総研代表の牧野知弘氏に聞いた。

Q. 不動産アクティビストとは何ですか?
不動産アクティビストとは、株主の立場を利用して企業の経営戦略や経営陣に物申す「物言う株主」のことだ。彼らは日本の多くの大企業が古くから保有する不動産の上であぐらをかいていると批判し、不動産の含み益を実現して本業に投資するよう提言する。
例えば、ダルトン・インベストメンツがフジメディアホールディングスに対し、不動産の分離を求めたケースが有名だ。また現在は村上系のファンドも同社の株式33%取得を目指し、東京汐留ビルを中心とした不動産の外出しを提案している。

Q. 外国人による不動産買収と何が共通しているのでしょうか?
両者は「外国資本による日本の不動産の買収」という点で共通している。アクティビストが企業に不動産売却を迫ると、その不動産は市場に出る。そして高額入札に勝つのは多くの場合、外資系ファンドだ。一方、外国人投資家による区分所有マンションの購入も増加している。
国籍は異なるものの、外国マネーによって日本の不動産が買われていくという構造は同じだ。これにより、一般市民が不動産を取得することが困難になり、また日本企業がオフィス賃料という形で外国資本に支払いを続けることになる。

Q. なぜ日本の不動産が外国投資家に人気なのですか?
日本は完全な所有権が認められ、不動産取得に関して日本人も外国人も完全なイコールフッティングという、世界的にも珍しい緩やかな規制環境にある。これに対し、タイやマレーシアなどの東南アジア諸国では、外国人の不動産所有に制限がある。中国においては外国人が不動産を所有すること自体が基本的に認められていない。
さらに、円安の進行により、外国人投資家にとって日本の不動産は割安に見える。また、アジアの諸都市と比較してもキャップレート(不動産投資の利回り)が割安とされ、投資対象として魅力的に映っている。
Q. 日本の企業が不動産をアクティビストの要求で売却した例はありますか?
サッポロホールディングスの例がある。同社はアクティビストの要求に応じ、恵比寿ガーデンプレイスを含む不動産事業の分離を決め、現在入札を実施中だ。恵比寿ガーデンプレイスは土地だけで約2万5000坪あり、31階建てのオフィスビルを含む複合施設となっている。
このオフィスビルだけでも年間賃料約92億円、期待利回り3.5%で計算すると約2000億円の価値があると見積もられる。ホテルや商業施設を含めた全体では4000億円から5000億円の価格がつくと予想されている。

Q. この入札にはどのような企業が参加しているのですか?
日本のデベロッパーも手を挙げているが、ほとんどが外資系ファンドとパートナーを組んで参加している。例えば東急と外資系、三菱と外資系といった形だ。単独で4000億円から5000億円の投資を行うのは規模的に難しく、リスクも大きいため、外資系資本と組んで入札するのが一般的になっている。
こうした大規模な不動産取引では、買収後の出口戦略としてパートナーの日本デベロッパーへの売却や、バリューアップ後の売却など、様々な選択肢を持たせることができる。
Q. 外国人によるマンション購入の実態はどうなっていますか?
三菱UFJ信託銀行の調査によれば、千代田区・港区・渋谷区の新築マンションの2〜4割が外国人による購入と言われている。しかし、実態はさらに多い可能性もある。
外国人が直接購入せず、東京に設立したペーパーカンパニーを通じて買ったり、日本人が代理で購入したりするケースも多い。また「専有下ろし」と呼ばれる手法では、デベロッパーが大量のマンションをまとめて中堅不動産会社に卸し、その会社が外国人に販売するため、元のデベロッパーには外国人購入の実態がつかめない。
そのため、マンションの管理組合に参加してみたら4〜5割が外国人だったという話がよく聞かれる。

Q. 諸外国ではどのような規制がありますか?
カナダでは2023年から外国人の住宅購入を原則禁止している。ニュージーランドとオーストラリアも同様に外国人による住宅購入を厳しく制限している。
シンガポールでは外国人に対する印紙税(不動産取引時の税金)を60%に設定し、実質的な参入障壁を作っている。韓国は比較的緩やかだが、規制強化を検討中だ。スイスやデンマークは許可制を採用している。
一方、イギリスは日本と同様に自由市場型のアプローチを取っている。

Q. 日本でも規制すべきだという声がありますが、法的に可能なのでしょうか?
政府・自民党の見解では、WTO(世界貿易機関)のガッツ協定(サービス貿易に関する一般協定)において、日本は不動産分野を留保事項としなかったため、内国民待遇(自国民と外国人を同等に扱うこと)が求められるとしている。
しかし、国防上・安全保障上の理由であれば規制が可能だ。実際、重要土地規制法によって、原子力発電所や自衛隊基地周辺の不動産取引には一定の制約がある。ただし、東京23区のような都市部全体を国防上の理由で規制するのは難しい。

Q. どのような規制が現実的でしょうか?
まず、国防上・安全保障上重要な土地とそうでない土地を区分けすることが必要だ。次に、外国人を「在留外国人」と「非居住者」に分けるべきだ。
日本に住み、働き、税金を払う在留外国人は日本人と同等に扱う。一方、単なる投資目的で日本に住まない非居住者による不動産取得に対しては、取得税を日本人の倍にしたり、固定資産税を10年分まとめて前払いさせたりする方法が考えられる。
これならガッツ協定が求める内国民待遇の原則を維持しつつ、投機的な購入を抑制できる。シンガポールの印紙税のように、取引の入り口で捕捉する方法が最も効果的だ。
Q. 空室税という案もありますが、どう思いますか?
空室税は実務的に困難だ。空室をどう認定するのか、例えば長期海外出張者や2拠点生活者の住居はどう扱うのかなど、多くの問題がある。
また、現在政府が推進している多拠点生活や空き家対策、地方創生といった政策とも矛盾する可能性がある。理論上は理解できるが、実態把握が難しく、運用コストも高くなるため現実的ではない。

Q. 投資目的の「即転売」も問題になっていますね?
最近の高額マンションでは、物件引き渡し直後から中古市場に高値で出される例が増えている。さらに進んで、物件引き渡し前の「購入権」が取引される事例も出ている。これは単なる転売目的で、税制上も不動産取得税や登記が不要なため、投機的取引が促進されている。
この対策としては、昭和62年に一時導入された「超短期不動産譲渡税」の復活が考えられる。当時は個人の場合、所得税50%、個人住民税15%が課されていた。このような即時に導入可能な対策で、投機的な転売を抑制することができる。
Q. 規制導入によって不動産価格は下落しますか?
激烈な総量規制のような急激な介入は避けるべきだが、転売屋のような過度な投機的取引を抑制する程度の規制であれば、マーケットは冷静に反応し、全体的に少し下がる程度だろう。
問題は、現在の日本では年収700万円程度の人が東京都内の標準的なマンション(約1億円)を購入しようとすると、住宅ローンの返済と固定費で年間約300万円必要となり、手取り550万円から考えると残り250万円で生活するという厳しい状況になっている点だ。平均的な収入の人が平均的なマンションすら購入できない状況は、国として異常と言える。
投資マーケットと一般の居住用マーケットは分けて考えるべきで、投資目的の高額物件が高騰するのは構わないが、一般市民がその影響を受けている点が問題だ。
