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商談中のアイコンタクト あなたは何回目をそらす?
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2025年7月15日

会議で発言しない日本人は世界からどう見られているのか?異文化理解を専門とする東京外国語大学・岡田昭人教授は自分の文化を客観視する必要性があると話す。日本人が世界で損をしないために、異文化理解の方法を徹底解説。 <ゲスト> 岡田昭人|東京外国語大学教授 留学生教育学会副会長、Oxford-Cambr...
空気を読まないと損をする?世界で通じる異文化コミュニケーション戦略
私たちは毎日、さまざまな場面でコミュニケーションを取っています。しかし、そのやり方が世界で通用するとは限りません。むしろ、日本人の「空気を読む」文化が、グローバルな場面では損をしてしまうことも。東京外国語大学の岡田昭人教授に、異文化コミュニケーションの基本から応用までを教えてもらいました。

Q. 異文化コミュニケーションとは何ですか?
異文化コミュニケーションとは、文化背景の違う人々が出会い、メッセージをやり取りすることで影響を与え合うことです。基本的には国と国の間のコミュニケーション(日本とアメリカ、日本と中国など)を指しますが、宗教間(イスラム教とキリスト教)や職業間(医師と看護師、医師と患者)のコミュニケーションも研究対象になっています。
実は職場内でも、世代間や部署間での「壁」を感じることがあるように、日常的に私たちは異文化コミュニケーションの課題に直面しているのです。
Q. 文化の「見える部分」と「見えない部分」とは?
文化は「氷山」に例えられます。海面上に見える部分はたった20%程度で、残りの80%は水面下に隠れています。

見える文化(表層文化)には、挨拶の仕方、音楽、食文化などがあります。これらは観光や文化紹介でよく目にする部分です。しかし、文化を本当に理解するには、水面下にある見えない部分を知る必要があります。
例えば、アイコンタクトの取り方。日本人は長時間目を見つめられると不安を感じますが、欧米や中東、中国の人々は逆に、会話中に視線を外されると「この会話に興味がない」「別のことを考えている」と誤解されます。ビジネスシーンでは、相手の目を10秒ほど見て、相手がそらさないようなら、こちらもそらさないよう心がけるといいでしょう。
Q. 日本人はビジネスでどんなところで損をしていますか?
アイコンタクトの少なさに加え、会議での発言の少なさも大きな損失ポイントです。日本では黙って聞いている人は「真面目に相手の話を聞いている」と評価されますが、アメリカやヨーロッパでは「意見がない人」と判断されてしまいます。
また、フランスやドイツでは、批判的な意見を述べることは「二人の考えをさらに深める」と前向きに捉えられています。日本人は批判されると個人攻撃と受け止めがちですが、欧米では建設的な行為とみなされるのです。
Q. ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違いは?
コンテクスト(文脈)とは、会話の背景にある文脈や取り巻く状況全体、いわば「空気」のようなものです。

日本人は高コンテクスト文化に属しています。言葉そのものより、言わなかったことから察する能力が重視されます。島国で長い間外国の人が入ってこなかった日本では、同じ経験、習慣、価値観を共有しているため、何も話さなくても相手の気持ちが分かる(分かってほしい)という「察し」のコミュニケーションが発達しました。
一方、ローコンテクスト文化(ドイツやスイスなど)では、言語が全てです。ヨーロッパのように国境が接している地域では、常に異なる文化背景を持つ人々が行き来するため、共通する「察し」が生まれません。そのため、論理的に言葉で表現しないと相手に通じないコミュニケーションスタイルになります。
興味深いことに、世界を引っ張る先進国(アメリカ、フランス、ドイツなど)は全てローコンテクスト文化に属しています。つまり、グローバルスタンダードはローコンテクストなのです。その意味で、実は私たち日本人こそが「異文化」なのです。
Q. ハイコンテクストとローコンテクストの人が出会うとどうなりますか?
日本人(ハイコンテクスト)とドイツ系スイス人(ローコンテクスト)が初対面で会話する場面を想像してみましょう。
日本人から見ると、ドイツ系スイス人は「ベラベラ話して、私の意見も言わせてよ」と感じます。反対にドイツ系スイス人からすると、日本人は「なぜいつも黙っているの?意見はないの?」と思います。お互いを疑いながら会話が進んでいくのです。
Q. メンツ(フェイス)を立てる方法も文化によって違いますか?
FTA(Face Threatening Act:フェイス・スレトニング・アクト)とは、相手のメンツを傷つけるような行為のことです。文化によってメンツが脅かされる状況は異なります。
例えば、子供の躾け方。日本では「みんなに迷惑がかかるでしょう」と言って叱ります。これは「恥の文化」です。周りの人に迷惑をかけないように、恥をかきたくないという気持ちから行動を制限します。
一方、欧米では「あなた自身が罪を犯している」と言って叱ります。これは「罪の文化」です。神に対して罪を犯しているからやめなさいという考え方です。
謝り方も異なります。日本人はすぐに謝りますが、アメリカ人は法廷で不利になる可能性があるため、理由を先に述べて最後まで謝らない傾向があります。
Q. 異文化に適応するには型があるのですか?
異文化適応には「W字曲線モデル」があります。最初は新しい文化への期待からワクワクした気持ちで高揚します(ハネムーン期)。しかし3〜6ヶ月すると、自分の期待と現実のギャップに直面し、落ち込みます(カルチャーショック期)。
時間が経つと体が気候に慣れ、言葉が分かるようになり、コミュニケーション方法も理解できるようになって、徐々に回復します。最終的には適応期に入り、「日本人としての自分」と「その国に慣れた自分」という2つのアイデンティティを持つようになります。この2つを状況に応じて切り替えられるようになると、非常に快適になります。
しかし、日本に帰国すると今度は「逆カルチャーショック」が起きます。外国にいる間に気づかなかった日本文化の特徴に気づき、傷つくのです。これも時間とともに回復し、再び日本文化に適応していきます。

このように、異文化適応は「W」の形をたどることから「W字曲線モデル」と呼ばれています。これは自然な生理現象なので、カルチャーショックを受けても恐れる必要はありません。
Q. 日本人の特性を活かした異文化コミュニケーションの方法はありますか?
日本人は元々、外国の発明やオリジナルのものを取り入れて変える能力を持っています。この特性を活かせば、ハイコンテクストとローコンテクストの会話を使い分けることができるでしょう。
ローコンテクストの人がハイコンテクスト文化のコミュニケーションを学ぶには何百年もかかるかもしれませんが、日本人なら両方のスタイルを使い分けられる可能性があります。これはいわば「文化的バイリンガル」になることです。
今後、グローバルビジネスで活躍するためには、従来の「察し」のコミュニケーションに加えて、積極的な発言や時には相手に対するネガティブなフィードバック(建設的な批判)ができるスキルも必要になってくるでしょう。