PIVOT TALK BUSINESS
「JAL」と「ANA」過去最高売上もピンチ
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2025年7月11日

JALとANAが、変わろうとしている。国内線は赤字、マイル制度は改定され、LCCとの競争は激化。かつて“稼ぎ頭”だったビジネス客が減り、今や主役は訪日外国人。だが、そのインバウンド客さえも「新幹線」を選ぶ時代──。 空の経営をどう立て直すのか。ZIPAIR・Peach・AirJapanの再編、欧州路...
「国内線が曲がり角に」ANAとJALが過去最高売上も抱える落とし穴とは?
航空業界専門家が語る、絶好調に見えるANAとJALの企業戦略の違いと実は迫る危機。

Q. JALとANAがともに過去最高の売上高を記録したと聞きました。この背景には何があるのでしょうか?
インバウンド需要の回復が大きな要因です。訪日外国人観光客が日本を訪れる数は、過去最高のスピードで回復しています。さらに、日本発のビジネス需要も回復しつつあります。
コロナ禍で直行便が途切れた時期に、両社は成田空港などをハブにして、アジアから北米、北米からアジアへという「三国間流動」を取り込む戦略を展開しました。加えて、現在の円安も追い風となり、結果として両社とも過去最高の業績を記録しています。
Q. ANAとJALの企業戦略の違いはどこにあるのでしょうか?
一言で表すと「若年層狙いのJAL、国際線拡大のANA」という違いがあります。
JALは若い世代を取り込むために、グループ内のLCC(格安航空会社)であるZIPAIRやSPRING JAPANを活用しています。また、ラウンジで提供しているカレーの販売など、航空運送以外のビジネス展開にも力を入れています。
一方、ANAは国際線の強化に注力しています。2023年12月以降、ヨーロッパに3路線(ミラノ、ストックホルム、イスタンブール)を新たに就航させました。同じスターアライアンスに所属するシンガポール航空などとの提携も深めており、島国である日本の人口減少を見据え、いかに国際線で稼ぐかという戦略を打ち出しています。

Q. 両社の最新の決算内容を詳しく教えてください。
JALは2024年3月期の決算で、売上収益が1兆8,440億円(前年比12%増)と上場後最高を記録しました。特筆すべきは、すべての事業セグメントで増収増益を達成したことです。これには国際線のほか、グループLCCやマイレージなどの非航空事業も含まれます。
ANAホールディングスも2024年3月期に売上高2兆2,618億円と過去最高を更新しました。特に国際線収入は8,055億円と過去最高となりました。ただし、ANAは増収ながら営業利益は若干減少する「増収減益」となりました。
これは運行規模の拡大にともなうコスト増加と円安の影響によるものです。ANAは国内線の便数も国際線も多く、それだけ運行コストがかかるため、JALと比較すると利益率では差が出ています。
Q. 両社とも好調のように見えますが、実は航空業界に落とし穴があるとも聞きました。それはどういうことですか?

実は、国内線が大きな曲がり角を迎えています。そのため、5月30日に国土交通省航空局が「国内航空のあり方に関する有識者会議」を開催しました。
国内線はコロナ前、航空会社の営業利益の約4割を占めていましたが、テレワークの普及により出張需要が大幅に減少しました。オンラインで済ませられる会議が増え、ビジネス需要が戻らないという事実は覆せません。
加えて少子高齢化により、そもそも国内の市場は縮小傾向にあります。一方で、円安の影響で航空機材や部品、燃料などドル建ての費用が増加しており、国内線の収益性が悪化しています。
Q. 有識者会議ではどのような問題点が指摘されましたか?
主に3つの課題が浮き彫りになりました。
1. 公的支援なしでは赤字 - 実は数年前から国内線は航空会社の内部補助だけでは維持できなくなりつつあります。特に離島路線は採算が厳しく、公的支援が前提となっています。意外にも大阪・伊丹から地方都市への路線はほぼ例外なく赤字です。
2. 訪日外国人は新幹線を好む - 国内線の乗客に占める外国人比率は最大でも4%程度に留まっています。外国人観光客は日本の「バレットトレイン」と呼ばれる新幹線に魅力を感じ、移動手段として選ぶ傾向があります。新幹線は保安検査不要で気軽に乗れる点も評価されています。
3. ホテル代の高騰 - 世界的なホテル価格の上昇により、旅行全体の予算が圧迫され、移動手段に割く金額が減少しています。例えば、以前は1万円台で泊まれたハワイのホテルが3万円以上になると、家族旅行では宿泊費だけで数十万円の差が生じます。
Q. 国内線の未来はどうなるのでしょうか?
今のような路線規模や航空会社の数を維持できるかは不透明です。特に国内線はマーケットが限られており、JALとANAの間でも協力の動きが出始めています。
例えば、九州の地域航空会社ではJALグループの航空会社が運航している便にANAの便名を付けるコードシェア(共同運航)が始まっています。限られたリソースを効率的に使うため、競争すべきところは競争しつつも、手を組むべきところは協力するという方向性が見えてきています。

Q. テクノロジーの進化で打開策はありますか?
JALはドイツのメイブジェット社と基本合意を結び、ハイブリッド飛行機の開発に関わっています。こうした新技術が将来的に航空業界の課題解決につながる可能性があります。
また、両社とも機内サービスの向上に力を入れています。JALの新しいファーストクラスは完全個室型で、頭上の収納棚がなく開放感があります。モニターは4K対応で、2席に1人のCAが対応するなど、付加価値の高いサービスを提供しています。
テクノロジーとサービス両面からの改革で、航空業界は次の成長を模索しています。