PIVOT TALK BUSINESS
日本郵便で何が起きたのか②
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2025年7月10日

6月に日本郵便の「不適切点呼」問題で下された“最重処分“。 トラック運送事業の許可取り消しを経営陣はどう受け止めているのか? 日本の物流の未来は?執行役員の五味儀裕氏に直撃した。 <ゲスト> 五味儀裕|日本郵便執行役員 2003年に総務省(旧:日本郵政公社)入省。郵便・物流部門において、営業、新規...
日本郵便が考える信頼回復と将来展望 - 五味儀裕執行役員インタビュー
日本郵便の点呼記録不備問題から楽天との連携まで、執行役員が率直に語る再生への道筋。「公益性と営利性のバランスが難しい」と認めつつも、デジタル技術の活用や物流戦略で新たな成長を目指す姿勢を明らかにした。

Q. 点呼記録不備問題の受け止めは?
法令違反として極めて重大な事案だと認識している。郵便事業は社会インフラの一つとして公道を使用して運営しているが、安全の要である点呼管理がおろそかになってしまった。これは会社の存在意義そのものが問われる重大事案だ。
6月25日には一般貨物自動車運送事業の許可取り消しという極めて重い行政処分を受けた。これは主にトラック事業が中心だが、軽自動車事業についても安全確保命令が出されている。現在、軽自動車事業については特別監査が順次実施されており、全国で75%近くの郵便局で不備が確認されている状況だ。
Q. トラック2500台の運行停止後、事業はどう維持している?
トラックの運行停止は主に集配郵便局での集荷や近隣郵便局間の運送に使用していた車両だ。全体では軽自動車を含め3万台近くあるため、その一部が影響を受けている。
対応としては、全国の運送事業者からの協力を得て約6割をバックアップしてもらい、残り4割は自前の軽四輪車両などを融通して業務を継続している。7月は中元シーズンや参議院選挙の時期と重なり荷物が増える時期だったが、利用者に迷惑をかけるような状態にはなっていない。
ただし委託費などの増加により短期的な経営への影響は出ている。今後は業務方法を見直し、効率化を図って影響を最小限に抑える計画だ。
Q. 一連の不祥事からガバナンスの問題をどう考えている?
この問題の根深さを改めて深刻に受け止めている。かんぽ生命の不適正募集問題をきっかけに「バッドニュースファースト」を掲げ、風通しの良い組織づくりに取り組んできたが、十分ではなかった。
対策として「未来会議」と呼ぶ現場との対話の場を全国で何千回も実施し、業務の総点検も行ってきた。しかし、これだけ大きく長期化する問題を事前に発見できなかったことは非常に悔しい。

会社として二度とこのような問題を起こさないためには、口で言うよりも難しい地道な取り組みが必要で、現場を巻き込んで一人ひとりが変わっていくレベルまで変革を進める必要がある。
Q. 点呼管理の具体的な改善策は?
確実に点呼管理を実施するため、動画映像や第三者による検証を導入した。また、顔認証やアルコールチェックを組み込んだデジタル技術の仕組みを早急に導入しており、すでに一部の郵便局で実証を始めている。
9月頃までを目処に毎週のように順次拡大していく予定だ。これにより記録の改ざんができなくなり、本社も含めて記録を共有できるようになる。また、抜け漏れのアラートも出せるようになる。
ただし、デジタル技術を導入するだけでは解決しない。その仕組みを運用する一人ひとりの意識が重要なので、動画研修や理解度チェック、スモールミーティングなどで地道な取り組みを続けている。
Q. 郵便事業の将来展望をどう描いている?
郵便物数は2001年をピークに25年間で約2%ずつ減少し、現在はピーク時の約半分になっている。昨年は30年ぶりに値上げを行ったが、人口減少や電子メールなどの普及により、手紙や年賀状の減少傾向は世界共通の現象だ。

事業構造も大きく変わっている。5〜6年前は郵便と荷物の割合が7対3だったが、直近では2対1になっている。2030年前後には1対1になると予測される。利益面でも、従来は郵便が収益を支えていたが、近年は郵便が赤字で荷物分野が黒字という状況になっている。
郵便については独占事業で社会インフラという性格から、国の料金政策委員会でサービスのあり方を含めた議論が始まっている。今後は荷物分野、特にeコマース関連の強化が重要になる。
Q. デジタルアドレスとは何か?また将来性は?
デジタルアドレスは、従来の数字だけの郵便番号に加え、アルファベットも組み合わせた7桁コードと個人の住所を紐付けるシステムだ。このコードを入力するだけで正確な住所が表示される。
日本の住所表記は「霞ヶ関」の「ヶ」のように表記揺れがあったり、住所に振られている番地と実際の建物の入口が離れていたりする問題がある。デジタルアドレスはこれらの問題を解決し、物流業務の効率化に大きく貢献する。
郵便物は減少しているとはいえ年間140億通近く扱っており、これらのトランザクションデータがデジタル化されれば社会的便益が高まる。日本郵便だからこそできる取り組みとして、ビジネスの種にしていきたい。
Q. 楽天との連携など物流戦略について
将来的には総合物流企業、物流のプロフェッショナルを目指している。現在は主にラストマイル配達に特化しているが、今後は倉庫のロジスティクスなど上流工程も含めた総合的なサービスを提供したい。

宅配荷物の半分以上がeコマース関連になっている中、楽天との資本業務提携でJP楽天ロジスティックを設立した。これにより需要予測が正確にできるようになり、在庫拠点のコントロールも可能になった。例えば福岡向けの荷物が100個出るとわかれば、事前に福岡拠点に在庫を移しておき、リードタイムとコストを削減できる。
また、トナミ運輸との連携では、B2Bトラック輸送の分野を強化する。業界再編の中で得意分野に特化し、限られた供給力で効率を上げる取り組みを加速させたい。
Q. 最後に視聴者へのメッセージは?
点呼問題を中心に、利用者の皆様に心配をおかけしていることを心からお詫びしたい。郵便局というインフラの存在は、地域や生活に密着した形で長年サービスを提供してきた。
この事業を変えるべきところは変え、新しい時代に必要とされる郵便局になっていきたい。信頼回復のため、社員一人ひとりが汗を流し、生まれ変わる決意だ。新しい取り組みにも注目いただき、引き続き郵便局を応援していただければ幸いだ。