PIVOT TALK BUSINESS
CFOのリアルな仕事。1兆円買収と組織改革の舞台裏
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2025年7月7日

昭和電工と日立化成が統合して誕生したレゾナック。1兆円買収後にどう組織改革をし、CFO組織を整えたのか?CFOのリアルな仕事とは何なのか?メリルリンチ、ソニーなどを経てレゾナックCFOに就任した染宮秀樹CFOに聞いた。 <ゲスト> 染宮秀樹|レゾナックCFO 野村総合研究所を経て米系投資銀行に16...
CFOとは単なる「金庫番」ではない!レゾナックCFOが語るCFOの本質と変革
日本企業においてCFO(最高財務責任者)の役割が変化している。かつての「金庫番」から、企業変革の推進者へと進化するCFO像とは何か。レゾナックホールディングスの染宮秀樹CFOに聞いた。

Q. 日本企業のCFOの現状をどう見ていますか?
CFOという言葉は日本でもかなり普及してきましたが、本来CFOとして果たすべき役割を担える人材はまだ多くありません。マインドと役割が限定的な状況です。
日本の典型的な大企業のCFOは、元々経理部長や財務部長だった方が、実務能力の高さを評価されて財務経理担当役員になり、その肩書きでCFOと呼ばれるケースが多いです。
私が「金庫番」と表現する従来型CFOには5つの特徴があります。資金管理が中心で、実績の経理を主に担当し、将来にわたる中期計画や会社の戦略的方向性については戦略部隊や企画部門に任せています。また、縦割り意識が強く、リスク回避を重視する守りの姿勢が顕著です。
Q. レゾナックではCFO組織をどのように変革しましたか?
私がCFOに就任した際、まず組織のミッションを再定義しました。「財務戦略のプロとして、会社の企業変革を推進し、レゾナックグループの企業価値最大化のためにベストナビゲートする」というミッションを掲げました。
「ベストナビゲーター」という言葉が重要です。例えばレゾナック全体では、社長の高橋がドライバーで、私は助手席に座るナビゲーターです。ただし、一緒にラリーを戦っているので運命共同体です。同様に、各事業部を担当する私の部下たちも、それぞれの事業部長に対するベストナビゲーターでなければなりません。遠くから応援するのではなく、同じ船に乗って、同じ運命を共有する感覚で業務にあたることが必要です。
また、組織構造も大きく変えました。従来は本社CFO部隊と事業部・事業所の財務経理部隊が分断されていましたが、本社CFOが全事業所・事業部の財務経理メンバーの人事権を持つように変更しました。これにより、人材のジョブローテーションがしやすくなり、全社横断での方針徹底が可能になりました。
Q. ポートフォリオ経営における意思決定の基準は何ですか?
レゾナックでは事業ポートフォリオの入れ替えを積極的に行っています。4年間で13の事業を売却し、現在も石油化学事業のパーシャルスピンオフを進めています。
ポートフォリオマネジメントの大方針は、会社全体の戦略への適合性、採算性と資本効率の2点です。各事業が求められるハードルレートを上回るリターンを上げているか、またはそれを達成できる見込みがあるかを厳しく見ています。

さらに「ベストオーナー」という考え方も重視しています。その事業をレゾナックが所有し続けることが最適なのか、それとも別の企業に託した方が事業や従業員にとって良いのか、という視点です。例えば、再生医療事業は当社ではリソース投入に限界があり、より理解して投資してくれる企業に売却することで、事業の成長につながると判断しました。
Q. 既存社員の能力開発にはどのように取り組んでいますか?
外部から人材を採用することもありますが、既存のCFO組織のメンバーも非常に優秀でした。働き方やマインドを変え、業務をより効率化し、ルーチン業務より付加価値の高い業務を増やすことで、劇的な変化が生まれました。

私は「染めラボ」というリーダー育成プログラムを社内で運営しています。多くの社員は専門能力を高めることには熱心ですが、リーダーになろうという意識を持つ人は少ないのが現状です。プログラムでは7ヶ月間、ケーススタディや座学、グループワークを通じてフレームワークを学び、最後の5ヶ月間でレゾナックへの戦略提案を作成します。
レゾナックはさまざまな修羅場があるため、専門能力を高めるには良い環境ですが、一定の経験を積んだら転職しようと考える社員も少なくありません。そうした人材がレゾナックでリーダーになる道を示すことで、優秀な人材の定着を図っています。
Q. 日本企業でポートフォリオの入れ替えを進める際の課題は何ですか?
日本企業では事業売却に対する抵抗感がまだ存在します。しかし、丁寧に説明すれば理解は得られます。例えば石油化学事業のケースでは、「レゾナックの中にいると投資は減価償却の範囲内に制限されるが、グループ外に出れば自分たちのキャッシュフローを自分たちの判断で使える」と説明することで、納得感を持ってもらえます。

最も大変だったのは組織の横串化です。事業部や事業所の経理部隊の人事権を本社CFOが持つようにした際、事業部長や事業所長から「なぜ自分たちの人材を奪うのか」という反発がありました。しかし「一人ひとりの能力をより育てるためにはこの仕組みが良い」と説得し、社長の後押しもあって実現しました。
Q. 今後のCFO組織の課題は何ですか?
これまでは比較的「ローハンギングフルーツ」と呼ばれる、実行しやすい事業売却を行ってきましたが、今後のポートフォリオアクションはより難易度が高くなります。よりメスさばきが上手でなければなりません。
また、企業価値を上げる意識をさらに社内に浸透させるため、ROC(Return on Capital、投下資本利益率)という指標を事業ごと、製品ごと、現場ごとに落とし込み、「あなたがこれを頑張ると事業部のROCが上がる」と具体化する取り組みを全社に広げたいと考えています。
Q. これからのCFOに必要な資質は何ですか?
金庫番思考でダウンサイドリスクを管理するだけでなく、適切にリスクを取って企業価値を上げるアップサイドをドライブする意識を持った人材が必要です。アントレプレナーシップを持つCFOは貴重であり、事業側と渡り合える能力を持つことが重要です。
多様な経験を積むことも大切です。30代半ばくらいまでは、自分が置かれた環境で精一杯バットを振ることが大事で、その後、人を動かす力を培っていくべきでしょう。そして、青臭いことをいっぱい語りながらも、それを真顔で推進できる、ドライブできる人が日本には必要です。