ECONOMICS101
【東大生vs永濱】経済とキャリアの真実
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2025年7月1日

東京大学経済学部の精鋭10名が、日本を代表するエコノミスト永濱利廣氏に、忖度一切なしの鋭い質問を叩きつける。 <ゲスト> 東京大学 経済学部 10名
エコノミスト永濱利廣に聞く!経済学の実用性とキャリアの考え方

東京大学の学生たちとエコノミストの永濱利廣氏による対談から、経済学の学びと実社会での活用法、キャリア形成についての貴重な洞察をQ&A形式でまとめました。経済学を学ぶ学生や、自分のキャリアについて考えている方必見です。
「経済ニュースをどう受け止めたらいい?」
Q. 毎日のように様々な経済ニュースが飛び込んできますが、個人としてはどのように受け止めるべきでしょうか?
市場関係者とそうでない一般の人では、経済ニュースの受け止め方は異なります。投資家は各資産の理論的な適正価格を基準に持っており、突発的な出来事で一時的に価格が動いても、適正価格に大きな影響がない範囲であれば、あまり慌てずに対応します。しかし、もし適正価格自体に影響する出来事であれば、迅速に対応する必要があります。
一般の方は過剰に反応する必要はありませんが、全く見ないのが一番よくありません。特に日本企業と外資系企業では、外資系の方が景気変動の影響を受けやすく、ドラスティックな変化が起きることもあるため、自分のポジションによって必要な情報収集のレベルは変わってきます。
現在は一昔前と比べて、世界経済の不確実性が高まっています。かつては西側諸国中心で世界経済が回っていましたが、冷戦終結後のグローバル化により、中国やロシアなどの権威主義国家が力をつけてきました。そのため、西側諸国と権威主義国家の対立が続き、経済の変動性が高まっています。こうした背景から、経済ニュースをしっかりウォッチしておくことが重要です。
「キャリアをどう考えたらいいのか」
Q. 不確実性の高い時代において、自分のキャリアをどのように考えるべきですか?
昔と比べて、「就職」より「就社」に近かった30年前と違い、現在は転職が当たり前になっています。そのため、将来食べていくために必要なスキルを身につけやすい環境に身を置くことが重要です。「とりあえずコンサル」という選択を批判する意見もありますが、有名コンサルに入ることは転職時に有利になるため、決して悪い選択ではありません。
将来のキャリアに向けて、どの環境に置くことが自分のスキルを向上させるのに最適かを考えることが大切です。最近は第二新卒や転職もしやすくなっているため、様々な調整が可能です。
興味深いのは、東京大学出身者の中でも、なんとなく進学した人よりも、「自分はこれをやるんだ」という熱意を持った人の方が社会で活躍している傾向があります。また、大学時代に真面目に勉強していた人よりも、勉強は程々にして課外活動に積極的だった人の方が出世している例も多いです。
「日系企業と外資系企業の給与差について」

Q. なぜ日系企業と外資系企業では給与に差があるのでしょうか?日系企業はコンペティティブな給与を出すことができないのでしょうか?
日系企業は、外資系企業のように業績不振時に迅速に人員削減ができないため、同等の給与を支払うことは難しいでしょう。ただし、中には外資系に優秀な人材を取られないよう、初めから高い給与を提示する日系企業もあります。
日系企業と外資系企業を行き来するキャリアパターンも珍しくありません。外資系に転職して高い給与を得たものの、パフォーマンスを上げられずに職を失った人が、日本企業に戻るケースも見られます。日本企業は比較的受け入れ体制が整っているため、外資系でチャレンジしたい人は挑戦してみるのも良いでしょう。
ただし、外資系企業は日系企業より激務であることが多いため、給与そのものは高くても、労働時間あたりの報酬(コストパフォーマンス)で考えると必ずしも良いとは言えないかもしれません。
また、最近は中国からの留学生が増えていますが、これは中国経済が30年前の日本のようなバブル崩壊後の状態で、若年層の失業率が高くなっていることも一因です。中国の一流企業は競争が激しいため、より安定した生活を送るために日本企業を選ぶ人も増えています。
「金融業界の社会的役割とは」
Q. 金融業界は「社会に何も生み出さずにお金だけ稼いでいる」という批判もありますが、実際に果たしている社会的役割は何ですか?
金融の根本的な役割は「信用創造」にあります。銀行がお金を貸す際、単に預金者から集めたお金を貸しているわけではありません。事業を起こそうとしている企業が、その事業が成長して社会の役に立つという信頼性が高ければ、銀行はその企業の口座にお金を入れることで新たにお金を創造します。
この信用創造という機能がなければ、自己資金がなくても良い事業を起こして世の中を良くしようという動きが生まれません。金融機関はこの機能を通じて経済発展に大きく貢献しています。
また、エコノミストとしての役割として、政治家や中小企業経営者に経済見通しや政策の影響についてアドバイスを行い、それが実際の政策形成や企業の投資判断に影響を与えることもあります。地元の自治体の未来創生会議の委員を務めるなど、地域社会への貢献も金融業界の役割の一つです。
「経済学のモデルは現実でどう活かされるのか」

Q. 大学で学ぶ経済モデルは現実と乖離していると感じますが、実際にはどのように役立っているのでしょうか?
IS-LMモデルなどの基本的な経済モデルは、市場関係者の間では常識として活用されています。例えば、消費税を下げると円が暴落するという政治家の発言がありましたが、IS-LMモデルを理解していれば、減税によりIS曲線が右に動き、金利が上がって、開放経済では通貨高になることがわかります。
経済学の難しさは、自然科学と違い、人間の心理が関わるため、理論通りに動かないことにあります。経済モデルの多くは、経済主体が合理的に行動するという前提で構築されていますが、現実ではそうでないことも多いです。例えばロシアのウクライナ侵攻やトランプの関税政策は、経済合理性からすれば起きるはずのないことです。
学術の世界では常に新しいモデルが生み出されていますが、実務で役立つかは別問題です。日銀総裁の上田氏は「経済学は進化して数学的要素が強くなっているが、実際の政策運営では基本的な部分が中心になる」と述べています。つまり、複雑なモデルよりも基本的な経済理論の方が実務では活用されることが多いのです。
「経済学部の文系扱いについて」

Q. 日本では経済学部が文系として扱われていますが、海外ではそうではありません。この違いについてどう思いますか?
日本の経済学部が文系として扱われていることには違和感があります。経済学は数学的要素が強く、実際に大学院では経済学部出身者の方が数学を使いこなしている場合が多いです。私立大学では数学なしで経済学部に入れるケースもあり、これは問題です。
海外では文理の分け方があまりなく、日本もそのような方向に進むべきでしょう。東京大学のように、理系から経済学部に進む学生もいますが、まだ少数派です。上田日銀総裁も元々は理学部出身です。
市場関係者には理系出身者が多い傾向があります。経済学でのデータ分析やプログラミングなどの技能は、データサイエンス分野でも活躍できる可能性を開きます。
「大学院進学は必要か」
Q. 経済学の大学院進学(修士号、博士号の取得)は将来のキャリアにどう影響しますか?
マーケット関連の仕事を目指すなら、修士号は持っていた方が有利です。実務でも修士課程で学ぶ内容が活用されます。博士号については、主に学術界を目指す人向けですが、近年では民間企業での活躍の場も広がっています。
特に注目すべきは、いわゆる「マグニフィセントセブン」や「GAFAM」と呼ばれるテック企業には、博士号を持つエコノミストが多く採用されていることです。こうした企業では特にミクロ経済学の専門家が重宝されます。マクロ経済学は学派によって見解が分かれることが多いのに対し、ミクロ経済学は企業の利益最大化などを扱うため、企業収益の拡大に直接貢献できる可能性が高いからです。
大学院に行くか就職するかの選択は人それぞれですが、一度社会に出てから自分が何を学びたいかを明確にした上で、大学院に行くという選択肢もあります。