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20、30代にとって、下剋上の時代だ
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2025年7月1日

生成AIの勃興などにより、大きく変わる20、30代のキャリア。失敗のコストが低いこの時期をどう戦略的に過ごすべきなのか?『人生の経営戦略』の著者である山口周氏に聞いた。
20-30代と教育に役立つ「人生の経営戦略」 - 山口周氏インタビュー
日本社会における若者のキャリア観と教育の在り方について、著作家・独立研究家の山口周氏が語る。子供たちの選択肢が狭まっている現代において、どのように自分らしいキャリアを見つけ、挑戦していくべきか。「下克上の時代」を生きる若者へのメッセージ。

Q. 現代の子供たちの選択肢が狭まっているのはなぜですか?
現代の子供たちの選択肢(オプションバリュー)が減っているのは、子供たち自身よりも親の影響が大きいと考えています。親自身はオプションバリューが増えている状況で、その中で成功する人としない人との差が開いてきているため、子供には「勝ちパターン」の人生を歩んでほしいという思いから、逆に子供の選択肢を狭めているのです。
例えば、都内の小石川周辺では小学生の7割が中学受験するような環境があります。そこでは「どこの塾がいいか」という話題が中心になり、子供の幸福は二の次になっています。私が海沿いの地域に引っ越した際、「いい塾がないのでは」と心配されましたが、子供にマリンスポーツなど多様な経験をさせることを重視しました。結果的に、子供たちは「ヨットをやらせてくれてありがとう」と感謝してくれました。塾に行かせてくれてありがとうと感謝される親はあまりいないでしょう。
Q. 日本の教育システムの問題点はどこにありますか?
日本の教育の最大の問題は、子供が自分の好きなことや得意なことを見つける機会を奪っていることです。中高で自分が何が好きなのかを発見することが教育の重要な役割のはずですが、日本の教育はその機能を果たしていません。むしろ、各科目を嫌いにさせるようなプログラムになっているのではないかと思えるほどです。
ニュージーランドでは「偏差値」という概念がなく、学校のランキングもありません。各学校がそれぞれ特色を持ち、子供の興味に合わせて学校を選べる仕組みになっています。一方、日本では中高で完全に子供に序列ができ、7割の子供は「自分は頭が悪い」と思わされています。本来、人間の知性は多様で、数理処理や言語処理以外にも音楽的知性や空間的知性など様々な種類があるはずです。しかし受験ではそれらが評価されず、多くの子供が自分の得意な分野を見つけられないまま社会に出ています。

Q. 若者が陥りがちな「賞賛依存症」「達成依存症」とは何ですか?
これはハーバード大学の行動心理学者デイビッド・マクレランドの研究から来ています。人間の動機には様々なタイプがありますが、「達成」や「賞賛」がモチベーションになっている人は、それがなくなると生きられなくなり、依存症のようになってしまいます。
特に20代の若い時期に活躍して周囲から評価されると、その状態から抜け出せなくなります。しかし人間は必ずどこかで能力の限界が来るので、この依存症から抜けないと苦しむことになります。スポーツ選手は体力の限界という明確な形で引退時期が分かりますが、ビジネスの世界ではそれが明確でなく、「伝説的な人物」として周囲も本人も気づかないまま、過去の栄光にしがみつくことがあります。
若い時から「人からすごいと言われる高校」「すごいと言われる大学」「すごいと言われる会社」と、常に外部からの評価を基準に選択してきた人は、自分が本当に何をして楽しいのか、何に情熱を感じるのかを問いかけることすらしません。これが賞賛依存症の危険性です。

Q. 賞賛依存症から脱却するにはどうすればよいですか?
脱却の鍵は「挫折」です。例えば、ソニーミュージックでミリオンセラーのヒットを連発した後、ニュージーランドに移住した吉住大輔氏の例があります。彼も賞賛依存症にかかっていましたが、一度大きな失敗を経験して周囲から批判を受けたことで、逆に楽になったと言います。「私は見かけ倒しでした」と自ら認められるようになり、そこから自然体で仕事ができるようになりました。
挫折は自分を見つめ直す重要な機会です。エリートほど挫折を避ける傾向がありますが、挫折なくして本当の成長はありません。外資系コンサルティングファームや投資銀行などでは、厳しい環境の中で多くの若者が挫折を経験します。そのプチ挫折が「自分は何がやりたかったのか」を考えるきっかけになることがあります。
問題は日本の大企業に入った優秀な若者です。彼らは甘やかされ、真の挫折を経験せず、40代になっても自分の本当の適性や情熱を見つけられないまま過ごしてしまうケースが多いのです。

Q. 若者がキャリアを考える上で重要なことは何ですか?
若者、特に20代は「試行錯誤のコストが最も低い時期」です。この時期に様々なことを試し、自分の適性や情熱を見つけることが重要です。しかし多くの若者は「失敗するのが怖い」という理由で、リスクを取らない選択をします。
ここで大切なのは、「度胸」や「勇気」だけで動くのではなく、「合理的な判断」に基づいて行動することです。例えば私が電通を辞めた時、周囲からは「度胸がある」と言われましたが、実際には冷静な計算の結果でした。そのビジネスモデルの限界と自分の適性を見極め、合理的に判断した結果の行動だったのです。
また、リスクを取る際も戦略的に行うことが重要です。Googleの創業者やAppleのウォズニアックは、大学や勤め先を辞める前に、新しいビジネスの可能性を十分に検証していました。リスクを小さくコントロールすることで、逆に大胆なチャレンジができるのです。
Q. これからの20-30代にとってのチャンスはどこにありますか?
今は「下克上の時代」です。新しいテクノロジーが次々と登場し、環境が大きく変化する中で、これまでの経験や知識、スキルが急速に価値を失っています。10年の経験や専門スキルが武器にならない時代になり、競争環境がフラットになっています。
このような時代において重要なのは、①世の中を見る力、②考える力、③新しいテクノロジーを使いこなす力です。歴史を見ても、新しいテクノロジーに最初にアクセスした人が下克上を起こしてきました。織田信長が鉄砲を導入して戦場の常識を覆したように、新技術をいち早く取り入れた人が勝利するのです。
また、日本企業ではバブル世代が大量に在籍し、若い世代がポジションを得られない「経験のデフレ」が起きています。かつての明治維新や戦後の高度経済成長期は、20代や30代が国や企業の中心で活躍していました。今の若者は戦略的に自分の仕事の幅を広げ、経験値を高める努力が必要です。

Q. 若者へのアドバイスをお願いします
まず、「失敗を恐れないこと」です。20代は「しくじり」を積み重ねるべき時期です。多くのシリコンバレーの起業家は何度も失敗した後に大成功を収めています。失敗から学び、次のチャレンジに活かすことが重要です。
次に、「自分の好きなことを見つける」ことです。日本の教育では見つけられなかった自分の強み、情熱、適性を社会に出てから探す必要があります。これには様々なことに挑戦し、試行錯誤することが欠かせません。
そして、「下克上の時代を生きる」意識を持つことです。テクノロジーの変化が激しい今の時代は、若い人たちにとって大きなチャンスの時代です。新しい技術や考え方をいち早く取り入れ、従来の常識や序列を覆す可能性に満ちています。
最後に、勝ちパターンにこだわらず、自分らしい道を見つけることです。周囲の評価や世間の常識に縛られず、自分が本当に情熱を感じることを追求してください。それが真の意味での成功につながります。