PIVOT TALK BUSINESS
AI時代の住宅選び。タワマンの次はシュウマイ
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2025年6月30日

生成AIの誕生により、シミュレーションの精度と速度が大きく進化。建築と住宅購入のあり方が大きく変わっている。今起きている変化と、今後の住宅選びのヒントを、建築家で起業家の谷尻誠氏に聞いた。
AI×建築の新潮流「収益型マイホーム」で住宅購入の常識が変わる
住宅購入はこれからどう変わるのか。AIが変える建築の未来と日本の住宅事情について、建築家の谷尻誠氏に聞いた。

Q. AIによって顧客から見た住宅購入体験はどう変わりますか?
家を作りたい人や買いたい人はたくさんいます。AIによって建物の金額、大きさ、ビジュアルなどが見える化されることで、購入に踏み切る安心感が大きく変わると思います。
また、より自分にパーソナライズされた、オリジナルな家を持ちやすくなります。普通の人は自分の家を作れると言われても言語化できないものですが、AIがあれば「こんな感じ」という抽象的な言葉でも推薦してくれ、自分のイメージを具体化していくことができます。それを信頼できる建築家に統合してもらい、具体化してもらう流れになるでしょう。
これまでは「広い家が欲しい」と言っても、数字的に小さくても広がりがあればいいのか、天井高があればいいのか、「広い」とは何なのかを共通言語化する必要がありました。ビジュアルがあれば、より明確にコミュニケーションができます。さらに将来的には「こう変えたらこれがいくら」という見積もりもリアルタイムに近い形で出せるようになるでしょう。
Q. 建築費高騰は今後どうなりますか?
建築費は今後も上がり続けると思います。日本ではこれまで都心にサラリーマンが家を持てる状況でしたが、ニューヨークやロンドンでサラリーマンが都心に家を持つことはありません。日本もこれから世界基準に合っていく、やむを得ない変化だと思います。

私は事務所を開いて25年ですが、建築費が下がったことは一度もありません。コロナ期間中は特に高騰のスピードが速く、見積もりを出してから3ヶ月間コスト削減作業をしても、その間に材料費が上がって元に戻るということもありました。
現在は施工会社側が仕事に困っていない状況で、以前は施工会社が「ぜひうちにやらせてください」と言って入札で競争していましたが、今は「半年後から着工予定なので何とか予定を空けておいてください」と建築家側からお願いする状態です。また職人の数も減っており、人口減少と働き方改革の影響で人件費も上がっています。
Q. 建築家の役割とは何ですか?
建築家は単に設計するだけでなく、コストのマネジメントも重要な役割です。工事費の10%程度を設計料として支払うことに抵抗がある人もいますが、建築家は通常、工事費の10%程度は削減できます。例えば5000万円で作るつもりが6000万円の見積もりが上がってきた場合、1000万円減らす作業を建築家が行います。

プロがいなければ「安くしてください」としか言えず、「これ以上無理です」と言われたらそこで終わってしまいます。設計料を払うことで適正価格で良い品質のものができるのです。
また、コストだけでなく、資産形成の観点からどういう家を建てて運用すべきか、利回りが回るのか、売却できるのか、相続をどうするのかまで理解できれば、より総合的なファイナンシャルアドバイザーのような役割も果たせます。土地購入の不安、お金の不安、将来的な不安、相続の不安などをサポートすることで、より安心して建物を建てていただけると思います。
Q. 日本の家リテラシーが低い理由は何ですか?
欧米と比べて日本の家リテラシーが低い理由のひとつは、ホームパーティーの文化の違いだと思います。海外では人を招くためにインテリアや花を飾るなど、生活文化が育っています。日本では「うちなんて人を招けない」という人が多いですが、素敵な家を作ることで人を招き、文化的な活動が行われれば、自然とリテラシーも上がっていくでしょう。
また、日本の家は狭く、断熱性能も低いと言われてきました。ようやく法律も厳しくなり、性能を担保したものを作ることが義務付けられるようになりましたが、まだまだ欧米に比べると見劣りします。
家を豊かにするためには、AIによる見える化で家の中の美意識にこだわったり、画一的でない自分たちの価値観を活かした予想をしていくことが必要です。建築家は敷居が高そうに思われがちですが、むしろもっと建築家を使い倒して、自分の欲しいものをちゃんと手に入れるべきだと思います。
Q. 不動産投資のおすすめはありますか?
東京の中古物件は住んでいるだけで値段が上がるという、日本の中では非常に良い資産運用だと思います。賃貸を否定するわけではありませんが、毎月家賃を払うなら買った方が良いでしょう。ローンを5年払い続けた後、買った値段と同じ値段で売却できれば、その間貯金していたことになります。

また、私がおすすめしているのは「収益型マイホーム」、略して「シュウマイ」です。これは自宅の一部を賃貸にして収益を得る方法です。私の自宅も3階建てで、1階と3階は賃貸、2階は自宅として使っています。建物は大きくなるので借入額は増えますが、テナントからの賃料でローン返済ができます。東京の真ん中に広さのある家に税金だけ払って住んでいる状態です。
多くの人は借入額を減らしたいと考えますが、借入額が少し減っても返済額はあまり変わりません。むしろ借入額を増やして自分の負担が減る方が心は穏やかです。東京で借りられる属性の人であれば、収益型マイホームはおすすめです。
さらに建築家がデザインした物件は賃料が上がります。有名な建築家だとさらに家賃が上がるので、利回りも良くなります。投資コストを抑えることも大事ですが、家賃が利回りに大きく影響するので、デザイン性の高い物件は投資としても魅力的です。
収益型マイホームが増えれば、低層でデザイン性の高い家が日本中に増え、街の豊かさにもつながるでしょう。AIが働く時代に自分の労働だけでローンを返済するのではなく、建物に働いてもらう「リアルAI」として収益型マイホームを考えてみてはいかがでしょうか。