PIVOT TALK MONEY
2025年の金価格。3つのシナリオ
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2025年6月16日

近年、急上昇を続ける金価格。中国、アジアの爆買いの影響はどれくらいあるのか?今後、どんな推移が予測されるのか?ゴールド・ストラテジストのアーロン・チャン氏に聞いた。 <ゲスト> アーロン・チャン|State Street Global Advisors ゴールド ストラテジスト 外資系証券会社など...
ゴールド投資の未来~金価格の中長期見通しと個人投資家の戦略~
Q. 金(ゴールド)の特徴と希少性について教えてください。
金は非常に希少性の高い資源で、地上に存在する総在庫量は、オリンピック競泳用プール約4.5杯分しかありません。また、地中に残っている埋蔵量は推定5万4000トン程度で、競泳プール1杯分程度。現在の年間生産量3600トンで単純計算すると、あと145年でなくなる計算になります。
ただし、金価格が上昇すれば、これまで経済的に採掘できなかった鉱床も採掘可能になるため、埋蔵量の数値は変動する可能性があります。いずれにしても、金は非常に限られた資源です。

Q. 金の需要はどのような構成になっていますか?
過去10年間のデータを平均すると、金の需要は以下のように分類されます:
1. 宝飾品需要:49%
2. 投資需要:29%
3. 中央銀行需要:15%
4. 工業品需要:7%
宝飾品と工業品の需要は世界の経済状況に影響される傾向がありますが、投資需要はむしろ逆の動きをすることが多いです。市場が不安定な時期には安全資産としての需要が高まり、投資需要が上昇します。中央銀行の需要は比較的、世界経済の状況に影響されにくい特徴があります。
Q. 中央銀行の金購入動向はどうなっていますか?
過去70年の動向を見ると、1990年から2009年までは中央銀行による金の売却が続いていました。これは冷戦終結後、各国の中央銀行がドルに集中する動きが進んだためと考えられます。
しかし、2008年の金融危機をきっかけに、2010年から状況は一変し、中央銀行は金の買い手に転じました。特に2022年、2023年、2024年は3年連続で年間1000トンを超える歴史的なペースで購入が続いています。
この背景には、2022年のロシア・ウクライナ紛争開始後、ロシアのドル資産が凍結されたことがあります。新興国の中央銀行はドル資産凍結のリスクを認識し、外貨準備の一部を金にシフトする動きを強めています。
Q. 金価格はどのような要因で変動しますか?
金価格の短期的な変動要因は主に以下の4つです:
1. 不確実性・不透明性が高まった時:金価格は上昇
2. 期待インフレ率が上昇した時:金価格は上昇
3. 米国の短期金利が下落した時:金価格は上昇
4. 米ドルが下落した時:金価格は上昇
これらの要因の中で最も分かりやすい相関関係を示すのは米ドルの動きです。ドルが下落すると、金価格は上昇する傾向が明確に見られます。
ただし、単一の要因だけで金価格が決まるわけではなく、複数の要因が絡み合って動いています。例えば最近は金利が上昇しているにもかかわらず、金価格も上昇しているケースも見られます。

Q. 現在の金投資の需要状況はどうなっていますか?
2024年第1四半期の金需要は、前年同期とほぼ変わらない水準を維持しています。特に中国の投資家による需要が顕著です。中国では国内経済の低迷や不動産市場の悪化により投資先が限られており、金が人気の投資先となっています。
興味深いのは、中国では従来の宝飾品需要から投資需要へのシフトが見られる点です。宝飾品の購入量は減少しているものの、その分が投資に回っています。
一方、欧米では金利がまだ高い水準にあるため、投資家は金の購入に慎重な姿勢を示しています。ただし、今年に入ってからは欧州と北米のETFにもかなりの資金流入が見られるようになりました。
Q. 2025年の金価格の予想はどうなっていますか?
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによる2025年の金価格予想は以下の通りです:
基本シナリオ(確率50%):3,100~3,500ドル/オンス
強気シナリオ(確率30%):3,500~3,900ドル/オンス
弱気シナリオ(確率20%):2,700~3,100ドル/オンス
基本シナリオでは、貿易摩擦のピークは過ぎたかもしれないものの、不安要素が残り、市場のボラティリティも比較的高い環境が続くと予想されています。
強気シナリオは、貿易戦争がさらに悪化するなど、予想外の事態が発生した場合に実現する可能性があります。
弱気シナリオは、米国の貿易政策が和解に向かい、経済も懸念されていたほどは悪化しない場合に実現する可能性がありますが、確率は比較的低いと見られています。
Q. 金投資の意義は何ですか?
金投資の意義は主に4つあります:
1. 分散効果:金は株や債券とは異なる値動きをするため、ポートフォリオの分散効果が得られます。過去30年のデータでは、金と他の主要資産との相関は非常に低い水準にあります。
2. 危機時の備え:米国株式が大きく下落した際、金は比較的堅調なパフォーマンスを示します。例えば2008年のサブプライム危機の際には、S&P500が-51.93%だったのに対し、金は+31.81%のリターンを記録しました。
3. 長期的なリターン:過去30年のデータでは、金は米国債や日本国債、コモディティを大きく上回るリターンを提供し、場合によっては株式に近いリターンを実現しています。
4. インフレへの備え:金は物価に連動して変動する傾向があり、長期的には購買力が維持されてきました。特に高インフレ時には平均18.8%のリターンを記録し、同時期の米国株式を大きく上回っています。

Q. 金投資の主な方法にはどのようなものがありますか?
主な金投資の方法は以下の5つです:
1. 金地金・金貨の購入:実物の金を保有できる反面、購入時のコストや保管コスト、保険料などがかかります。新NISA制度の対象外です。
2. 純金積立:少額から始められ、毎月機械的に購入できるメリットがありますが、金地金と同様に購入時の手数料がかかり、少額だと割高になる可能性があります。
3. ETF(上場投資信託):コストを抑えられ、リアルタイムで売買可能です。新NISA制度の対象となる商品も多くあります。証券口座が必要です。
4. 投資信託:銀行や郵便局でも購入可能で、証券口座がなくても投資できます。ただし、ETFより手数料が高い傾向があります。
5. 先物・オプション・CFD:専門的な知識が必要で、リスクも高いため、経験豊富な投資家向けです。
Q. ポートフォリオにおける金の適切な配分はどれくらいですか?
ポートフォリオにおける金の適切な配分は、リスク資産の割合によって異なります:
株式だけのポートフォリオの場合:10~15%程度の金を組み入れるとよい
債券も含むバランス型ポートフォリオの場合:2~10%程度が推奨される
基本的に、リスクの高い資産が多いポートフォリオほど、金の割合を増やすことで一時的な大きな下落リスクを抑制できます。

Q. 金価格の中長期的な見通しはどうですか?
中長期的には、以下の要因から金価格の上昇が期待されています:
1. 財政の持続可能性への懸念:世界の負債は増加を続けており、第1四半期時点で約324兆ドルに達しています。そのうち約30%が政府の負債です。この傾向が続くと、将来的に財政危機の可能性が高まります。
2. 中央銀行の構造的な需要:新興国の中央銀行はドル資産やユーロ資産の一部を金にシフトする動きを続けると予想されます。下落時には中央銀行が買い支えるため、暴落のリスクは低いと考えられています。
3. 通貨の価値低下:歴史的に見ると、通貨の供給量がGDPの成長率を上回ると、インフレや通貨価値の低下につながります。1971年以降、主要通貨は金に対して価値が下がり続けており、この傾向は変わらないと予想されます。
4. 機関投資家の参入:2024年2月には中国の大手保険会社10社に、純資産の最大1%を金に投資できるパイロットプログラムが始まりました。こうした機関投資家の需要が増えることも金価格を支える要因となります。
5. アジアの文化的背景:中国やインドでは金と文化的なつながりが強く、例えば結婚式で金製品を贈る習慣があります。両国の経済成長に伴い、富の増加とともに金の需要も増加すると予想されます。