PIVOT TALK FOOTBALL
三木谷浩史が語る、オーナー論・Jリーグ改革論
(514)
7,801回視聴
2025年6月14日

ヴィッセル神戸オーナーとして、連覇を果たした楽天創業者の三木谷浩史氏。サッカービジネスの可能性、オーナーの役割、Jリーグ・日本サッカーの改革論まで、PIVOTレギュラーメンバーが質問をぶつけた。 <ゲスト> 三木谷浩史|楽天グループ創業者 ヴィッセル神戸オーナー 2004年からヴィッセル神戸のオー...
サッカーオーナーとしての役割と展望:三木谷浩史が語るJリーグの未来

Q. 日本サッカーを盛り上げるために、クラブオーナーはどのように関与すべきだと思いますか?
私は、クラブオーナーとしての役割は勝利と敗北で異なると考えている。勝った時は現場と選手が称賛を受けるべきで、オーナーは表に出る必要はない。しかし、結果が出ない時こそオーナーが前面に出て責任を取るべきだ。

ヴィッセル神戸が2回降格した際も、ブーイングされようが出て行って謝罪した。そうすることでサポーターとの信頼関係を構築できたと思う。CTを招聘した時も議論があったが、私が責任を取る姿勢を示した。
大きな方向性や戦略については、データに基づいて組織内で議論し、それを現場に落とし込むプロセスが重要だ。自分の好みだけでチーム作りを指示することはない。GMやスポーツディレクターとのコミュニケーションを通じて、どのようなデータに基づいてどう進めるかを話し合っている。
Q. ヴィッセル神戸はどのような哲学や理念を持ってクラブ運営をしていますか?
私たちが目指しているのは、単なるサッカースタイルよりも、クラブとしての文化や哲学の確立だ。バルセロナのラ・マシアのように、サッカーだけでなく人間教育も含めた総合的な育成システムを作りたいと考えている。
私が神戸のオーナーになった当初、練習グラウンドは1面のみで、プレハブのようなクラブハウスしかなく、ユース組織も形だけの状態だった。そこから育成型クラブを作ることを目指してきた。例えば、ユース選手には英語も勉強してもらい、国際的に通用する人材に育ってほしいと考えている。
サッカースタイルについては、時代の変遷とともに変わるものだ。バルセロナも昔ほどポゼッションサッカーではなくなってきており、カウンターで点を取ることもある。自分の好みもあるが、現実的には所属選手のタイプによって柔軟に対応する必要がある。食材にあった料理法と同様に、持っている選手に合った戦術を採用することが重要だ。
Q. Jリーグが国際的に競争力を持つために、どのような課題があると思いますか?
Jリーグは、やり方次第で欧州の大きなリーグに並ぶ存在になれる可能性がある。特にアジアをバックグラウンドに考えれば、リーディングクラブになることは十分可能だ。そのためには、いくつかの課題に取り組む必要がある。

まず、海外選手を引き寄せるための環境整備が必要だ。スペインではベッカム法があり、海外から来た選手は5年間は最高税率が20%に抑えられていた。イタリアは肖像権に対する税金を撤廃し、スター選手を引き寄せた。一方、日本は逆に海外選手に対する税金を上げてしまい、獲得が難しくなっている。
また、選手の将来保障も重要だ。高額な年俸を得る選手は所得税で55%ほど持って行かれるが、30代で引退すると収入がなくなる。大リーグのような年金制度を整備し、引退後も安定した収入が得られるようにすれば、選手は安心してプレイに集中できる。
さらに、Jリーグの組織構造にも問題がある。現在はJFAの下にJリーグがあるが、これを横並びの関係にすべきだ。例えば審判の問題も、ほとんどがアマチュアで翌日には学校や仕事に行かなければならない状況では限界がある。日本プロ野球機構のように、プロサッカーだけを統括する組織があるべきだ。
Q. Jリーグの経済的な成長のために、どのような戦略が必要だと考えますか?
Jリーグの経済的成長には、収益源の多様化と拡大が不可欠だ。かつてプレミアリーグとJリーグは同時期に始まり、当初はJリーグのクラブ収入の方が大きかった。しかし現在は大きな差がついてしまった。その理由の一つは放映権収入の違いだ。
放映権についてはダゾーンが独占的に扱っているが、これには二面性がある。収入は確保できるものの、幅広く見られないという課題もある。特にJ2やJ3のクラブの露出が限られてしまう。NBAのように試合ごとに放映権を売る「コマ売り」のシステムも検討する価値がある。
また、スタジアムの活用も重要だ。Jリーグの試合は年間30試合程度で、残りの330日以上はスタジアムが空いている。この未使用期間をコンサートなどのイベントに活用すべきだ。そのためには、天然芝ではなく人工芝の導入も検討する必要がある。

移籍金ビジネスも大きな可能性を秘めている。現在、日本は移籍市場でマイナス収支となっている一方、ヨーロッパでは1兆円規模の市場がある。若い選手が安い移籍金で海外に出て行く原因の一つは、契約期間の短さだ。5年契約が標準だが、残り1年になると少しでも移籍金を得るために安く売ってしまう傾向がある。より長期の契約や、ポスティングシステムのような仕組みの導入を検討すべきだ。
Q. メディアとの関係について、どのようにお考えですか?
オーナーの発言や決断がメディアによってネガティブに報道されることがあるが、これは日本特有の現象だと思う。海外ではオーナーが戦略や強化に関して意見することは当然視されている。
日本では「出る杭は打たれる」風潮があり、オーナーが前面に出ると批判の的になりがちだ。しかし、オーナーがチームの方向性を決め、それを現場に落とし込むのは自然なことだ。自分の会社でマーケティング部門や営業部門に指示を出すのと同じように、サッカークラブでも指示を出すのは当然だ。
今後は、オーナーの存在やビジョンをより積極的に発信していくべきだ。ドキュメンタリーなどを通じて、オーナー、監督、スポーツディレクター、選手たちがどのように協力してチームを作り上げているかを示せば、Jリーグの魅力も高まるだろう。そうすることで「Jリーグのオーナーになりたい」と思う人が増え、リーグ全体の価値も向上する。
ただし、私自身は勝利の場面では表に出る必要はないと考えている。称賛は選手や監督が受けるべきで、オーナーはクラブの大きな方向性を理解してくれる人がいればそれで十分だ。