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LA抗議デモに兵士も派遣 深まる分断
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2025年6月10日

アメリカ・ロサンゼルスのダウンタウンで6日、当局が滞在資格のない移民を摘発。これに抗議した住民たちのデモの一部が暴徒化し、当局は催涙弾などで威嚇する事態に。アメリカの移民をめぐる背景、衝突激化の理由、そして今後の見通しを上智大学の前嶋和弘教授に聞いた。 <ゲスト> 前嶋和弘|上智大学 教授 現代ア...
トランプ政権はなぜロサンゼルスで移民摘発を強行?深まる社会分断とその背景
ロサンゼルスで移民摘発をめぐる衝突が発生し、トランプ政権が州兵を派遣する事態となっている。なぜこのタイミングで摘発が行われ、どのような背景があるのか。移民問題に詳しい前嶋和弘・上智大学教授に聞いた。

Q. ロサンゼルスで何が起きているのですか?
トランプ政権が不法移民の摘発をロサンゼルスで実施しました。移民関税捜査局(ICE)の捜査官が入って摘発を行い、その強引なやり方に対して反発が出ています。反発が出たところをトランプ政権は州兵を連邦化して派遣しました。
州兵(National Guard)とは本来は州知事の下にありますが、特別な時、国家安全保障上の問題がある時には連邦化、つまり大統領の権限で自分の指揮下に置くことができます。

シンプルに言うと、ICEを送って摘発をした→それに対する反発があった→反発があったところに州兵を送った→さらに揉めたら今度は海兵隊を送るぞと言っている、という流れです。トランプ政権のシナリオ通りに動いているのです。
Q. アメリカではそもそも「不法移民」という概念がどのように捉えられていますか?
アメリカでは我々が考える不法移民という概念を捨てて考えた方がいいでしょう。「不法」と「合法」の差はほぼないと言えます。
例えばアメリカでは出生地主義なので、不法移民の子供でもアメリカで生まれれば自動的にアメリカ人になります。両親が不法移民でも、子供がアメリカ人ならその両親を国外退去させるのは大変な問題になります。
そのため、全米の200〜300の都市は「サンクチュアリシティ(聖域都市)」として不法移民を一切摘発しません。それによってアメリカは成り立っているのです。多くの場合、難民として入ってきた人が難民キャンプから逃げ出し、サンクチュアリシティで仕事を探すケースが多いです。
不法移民と言っても、約6〜7割は税金を払っています。カリフォルニアでは自動車免許も認めています。事故を起こした時に保険がないと危険だからです。また、銀行口座を持つことも認められ、母国への送金も可能です。
Q. 具体的にどれくらいの不法移民がいるのですか?
カリフォルニアのサービス業の約12〜13%は非合法移民です。我々がロサンゼルスやサンフランシスコのファーストフードで会う人のかなりの部分が非合法移民だと考えてください。
私自身がカリフォルニアのサリナスというレタス農家を調査した時、そこで働く人々のほとんどが非合法移民でした。農場のオーナーは「彼らがいるからカリフォルニアのレタスが安く提供できる。全員から税金はしっかり取っている」と言っていました。
つまり、アメリカの社会は非合法移民が下から支えている部分があります。彼らは低賃金で働き、税金も納めているのです。
Q. なぜトランプ政権はこのタイミングで移民摘発を強行したのでしょうか?
これは選挙公約の実行です。トランプは前回の選挙で「移民たちはあなたたちの仕事を奪っている」と主張し、不法移民の摘発を大きな公約にしていました。
興味深いのは、トランプを支持する人々は主に都市部以外に住んでいて、実際には移民と接する機会がほとんどありません。彼らは移民を見たことがないからこそ、トランプの「移民は犯罪者だ」という主張を信じやすいのです。

実際には、統計によると非合法移民の犯罪率はアメリカ生まれのアメリカ人より2〜3割低いです。彼らは独裁政権や貧困から逃げてきて、ようやくアメリカに定住できた人々なので、わざわざ犯罪を犯してリスクを負うことはしません。
Q. 州兵の派遣は異例なことですか?
州兵は通常、州知事の要請があって大統領が判断するという形で派遣されます。1992年のロサンゼルス暴動の時は、州の側から「警察や州兵では対応できないから助けてほしい」という要請があり、連邦政府が派遣しました。
しかし今回はカリフォルニア州のニューサム知事もロサンゼルス市も「州兵は必要ない」と言っています。状況に問題はないのに、トランプ政権が一方的に州兵を派遣したのです。
連邦政府の判断だけで州兵を派遣した歴史的事例としては、1965年にジョンソン大統領が公民権運動の参加者を守るために州兵を連邦化したことがあります。しかしそれは人々を守るためでした。トランプは「カリフォルニアで大きな問題が起きている」という理由で介入していますが、実際には要請もなく、モラル的に問題があります。
Q. 今回の衝突の規模はどの程度ですか?
2023年6月9日の時点では、1992年のロサンゼルス暴動に比べるとかなり小規模です。コンプトンやファッションディストリクト、パラモントなど限られた地域での出来事であり、「何なんだ」という程度です。

一部の写真は意図的にドラマチックに見えるよう撮られています。車が燃えている上に人々が立ち、メキシコの旗を持っている様子は象徴的かもしれませんが、実際の規模はそれほど大きくないのです。
Q. 今後の展開はどうなりそうですか?
ニューサム知事はXで「大きくなった方がトランプ政権にとって対応しやすい」と指摘しています。トランプ側はこの事態を大きくしたいと考えているでしょう。
ICEが摘発活動を続ければ衝突は大きくなる可能性があります。トランプ政権は1798年の「適正外国人法」という古い法律を根拠に大統領令を出して摘発を行っていますが、この法律は本来、アメリカ西部開拓時代に先住民との衝突に対処するためのものでした。
現在アメリカは「溝の分断」と「溝の拮抗」の状態にあります。トランプの支持率を見ると、全体では43%(不支持53%)ですが、共和党支持者の中では90%が支持しています。一方、民主党支持者の中では4%しか支持していません。
トランプにとっては、この90%の支持者をしっかり固めることが重要です。大統領選挙の投票率は約6割で、共和党支持者と民主党支持者を合わせると6割程度。そのため、自分の支持層を固めれば勝てる可能性があります。今回の移民摘発と州兵派遣は、その支持層を固めるための「燃料投下」なのです。
Q. 私たちはこの問題をどう受け止めるべきですか?
2つのポイントがあります。1つ目は「これはアメリカの話だ」ということを理解すること。2つ目は「この議論を日本に持ち込まない」ことです。
アメリカは基本的に様々な人を受け入れて強くなってきた国です。1980年代には2億5000万人だった人口が、現在は3億5000万人ほどになりました。一方、日本は1億2500万人から少し減少しています。
OECD加盟国の中で人口が大きく増えているのはアメリカだけです。その増加には合法的に入国した人も違法に入国してアメリカ人になった人もいます。彼らがアメリカ経済を下支えし、技術発展にも貢献してきました。
トランプ政権は分断の中で、多様な人々と接していない人々に対して「不法移民は悪い奴だ」というレッテルを貼ることで支持を固めようとしています。このような感情的な議論に流されないように注意が必要です。