PIVOT TALK FOOTBALL
ルイス・エンリケの素顔。最前線で見る欧州サッカー(前編)
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2025年6月7日

イングランド2部でコーチを務める日本人、白石尚久氏。これまで、欧州で監督やコーチとして活躍、本田圭佑選手の個人分析官も務めてきた。最前線で見る欧州サッカーについて、話を聞いた。 <ゲスト> 白石尚久 1975年、香川県出身。選手としてアルゼンチン、フランスなどでプレー 【主な指導歴】 2008:F...
元ACミラン・本田圭佑の個人分析官が語る、選手の潜在能力を引き出す指導法
サッカー指導において、選手の隠れた才能をいかに引き出すかは永遠のテーマだ。イングランドでコーチを務める白石尚久氏と、シュワーボ東京監督のLeo the football氏が、選手育成の秘訣について語り合った。特に白石氏は本田圭佑や中村敬斗など日本人選手の才能を開花させた経験から、独自の指導哲学を展開している。

Q. 本田圭佑選手との仕事はどのようなものでしたか?
本田選手は非常に個性的で、ある意味で指導が難しい選手でした。しかし、その裏返しとして非常に純粋で勉強熱心、努力を惜しまない選手でもありました。私の指導方法は、選手の年齢に関係なく、その選手が持っている潜在能力を引き出すことを常に意識しています。

当時本田選手はACミランというビッグクラブに所属し、日本代表の中心選手でベテランの部類に入っていました。選手にはプライドがありますが、私は彼のまだ眠っているポテンシャルを引き出したいと考えていました。そのため、選手のプライドと私の期待の間で、意見がぶつかることもありました。
Q. 具体的にどのようなトレーニングを行っていたのですか?
私のトレーニング方法は、「フィジカル」「テクニック」「メイクディシジョン(意思決定)」「戦術的理解」の4要素を組み込んだ個人トレーニングを一度に行うものです。データと映像の分析から課題を抽出し、それをピッチに落とし込んでいきます。
本田選手の場合、右ウイングのポジションだったので、パスを受けてからドリブルで高い強度を保ちながらシュートまで持っていくことを課題としていました。練習後にフィジカルメニューとして、ラダーやポールを使ったスプリントやダッシュの後にドリブルからシュートを打つといった内容のセッションを組んでいました。
Q. 意思決定の指導はどのように行っていますか?
私が選手に教えているのは、ボールを持っている時の選択肢は3つだということです。また、ボールを持っていない時は、ペナルティエリアに入っていくことを徹底しています。
一例として、中村敬斗選手には「自陣でボールを受ける時にはプレーに絡み、パスを出した後に次に絡むのはペナルティエリアの中だけ」と明確に伝えていました。さらに、ペナルティエリア内のどこに入るかも具体的に指示します。プレミアリーグやチャンピオンシップでは、ペナルティエリア内の特定のゾーンからのゴール確率が53〜55%と高いエリアがあるので、そこに入ることを徹底させています。
選手には多くの情報を与えすぎず、各状況で3つの選択肢を提示するようにしています。それでも多いくらいで、1〜2つの選択肢の方が実行しやすいでしょう。
Q. 中村敬斗選手の指導で特に注力したポイントは何でしたか?
中村選手がシントトロイデンに来た時は19歳で、まだ体も細くメンタル面でもこれからという段階でした。しかし私が彼に見たポテンシャルは、足の速さ、180cm以上の身長、そして優れたフィニッシュ能力です。
彼はまだ自分のポテンシャルをどう活かすかを知らなかったので、フィジカル、スピード、テクニック、サッカーインテリジェンスを徹底的に鍛えました。例えば、60〜70メートルのスプリントを何本も走らせ、ペナルティエリアに入って戻る、また入って戻るというトレーニングを繰り返し行いました。
Q. ルイス・エンリケのサッカー哲学についてどう見ていますか?
ルイス・エンリケのサッカーは非常にオフェンシブで、これはディフェンスも含めてアグレッシブに行くという意味です。相手陣地でも、ミドルブロックでも、ローブロックでもアグレッシブにプレスをかけます。

彼の分析方法も特徴的で、以前は「ボールを持っているところから、ボールを失って、再び取り返すまで」の4つのモーメント(攻撃、守備移行、守備、攻撃移行)を1つのユニットとして分析していました。どのようなルートで攻撃できているか、ボールをロストした時にどこでリカバリーしているか、ロスト時にどこにスペースが空いているかなどを分析し、トレーニングに落とし込んでいました。
しかし現在は、ハーフピッチの敵のゾーンを全てリカバリーゾーンとし、ボールがどこにあってもアグレッシブにプレッシャーをかけ、マンツーマンで奪いに行くというシンプルな方法に変わっています。
Q. イングランドのサッカーと日本人選手の適応について
イングランドのチャンピオンシップ(2部リーグ)は非常にレベルが高く、トップ8のクラブはブンデスリーガの中位クラブ程度の力を持っています。そのため、Jリーグから来る選手は適応する時間が必要です。

イングランドのサッカーは「時計のようなサッカー」と表現できます。リズム良く明確にボールをさばいていきます。田中碧選手や坂元達裕選手はチャンピオンシップでもトップクラスの選手ですが、彼らのような選手でも海外環境に慣れるには時間が必要です。
Q. 指導者として海外でキャリアを築く難しさはありますか?
ベルギーのデインズで監督を務めた際は、日本人経営陣のもとで日本人監督という立場で反発もありました。外国人選手からは「このリーグのことを知っているのか」という懐疑的な見方をされることもあります。
また、自分の理想とするオフェンシブなサッカーを実現するためには、それに適した選手が必要です。ベルギー2部ではそういった選手が揃っていなかったため、選手の特性を理解し、彼らに合わせたサッカーを構築することの重要性を学びました。
現在は時代も変わり、選手との信頼関係を築けば、選手がパフォーマンスを発揮することで周囲の見方も変わります。監督として成功するには、柔軟に変化することも必要なのです。