PIVOT TALK BUSINESS
フジHD決算分析
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2025年6月5日

5月16日、フジ・メディアHDの決算報告で上場以来初の最終赤字が発表された。『決算分析の地図』著者の村上茂久氏は、「メディア・コングロマリットのカギは不動産にある」と語る。フジ・メディアHDの仕組みから最新の決算まで、徹底分析。 <ゲスト> 村上茂久|ファインディールズ代表 経済学研究科の大学院...
フジメディアHDを通じて日本企業の未来を読み解く - メディア企業の構造と収益バランス
業績悪化で注目されるフジメディアHDの決算分析。メディアグループ vs 不動産事業の「二足のわらじ」が意味するものとは?他のテレビ局との比較から見えてくる日本企業の将来像。

Q. フジメディアホールディングスの企業構造はどうなっているのでしょうか?
「フジサンケイグループ」「フジメディアホールディングス」「フジテレビ」という3つの言葉がよく使われますが、これらは異なる存在です。まず「フジサンケイグループ」は法人格のない概念的な団体で、79社4法人3美術館、約1万3000人からなる日本最大級のメディアコングロマリットです。第三者委員会の調査報告書によれば、このグループには規約や規定はなく、相互協力を目的とした緩やかな枠組みです。
その中核を成す「フジメディアホールディングス」は正式な株式会社であり、純粋持株会社です。自らは直接事業を行わず、フジテレビや産経新聞、日本放送、ポニーキャニオンなどの株式を保有しています。
現在のフジテレビは、実は「2代目」です。元々存在していたフジテレビが持株会社化して今のフジメディアホールディングスになり、その下に会社分割で作られた新しいフジテレビがあります。
Q. なぜフジメディアホールディングスは持株会社になったのですか?
2005年前後に発生したライブドア事件が契機です。当時、フジテレビの筆頭株主は日本放送(ニッポン放送)で、22.5%の株式を保有していました。これは戦後、ラジオ事業が先に始まり、その後テレビ事業が始まったという歴史的経緯からです。
しかし時代が進むにつれて、テレビの影響力が大きくなり、時価総額でも「子会社」のフジテレビの方が「親会社」の日本放送よりも大きくなりました。この「ねじれ構造」に目をつけたライブドアが日本放送の株式を買収しようとした結果、フジテレビを含むメディア業界全体が買収の対象になり得ることが明らかになりました。
この危機を回避するため、フジテレビは持株会社に移行し、現在のフジメディアホールディングスになりました。これにより、テレビ事業、ラジオ事業、新聞事業など様々な事業を持株会社の下に配置する現在の構造が生まれました。
Q. 他のテレビ局と比べて、フジメディアホールディングスの特徴は何ですか?
日本の主要テレビ局5社(フジテレビ、TBS、日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京)の中で、フジテレビは唯一、グループ内に新聞社(産経新聞)を持っています。他の4社は新聞社が親会社または筆頭株主となっています。例えば、日本テレビは読売新聞、テレビ朝日は朝日新聞、テレビ東京は日本経済新聞が筆頭株主です。

TBSは特殊なケースで、よく「毎日新聞と関係が深い」と言われますが、実際には毎日新聞との間に資本関係はありません。
この構造の違いは、株主分散の度合いにも影響します。筆頭株主が安定している日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京に比べ、フジテレビやTBSは比較的株主が分散しており、敵対的買収の対象になりやすい構造を持っています。
Q. 2025年3月期、フジメディアホールディングスが上場初の最終赤字となった理由は?
2025年3月期のフジメディアホールディングスは、営業利益では183億円の黒字でしたが、最終損益では201億円の赤字となりました。この差の主な原因は特別損失、特に281億円の減損損失です。
この減損損失は、フジテレビのお台場の土地・建物の評価減によるものです。テレビ番組制作という観点から見た土地・建物の価値が下がったと判断され、会計上評価を下げざるを得なくなりました。重要なのは、これはキャッシュアウト(実際のお金の支出)を伴わない会計上の処理であるということです。
一方でキャッシュフローは健全で、2025年3月期の現金残高は1,231億円と、前年の990億円から増加しています。営業キャッシュフローも584億円と、本業では依然として収益を生み出しています。
Q. フジメディアホールディングスの事業構成はどうなっていますか?
フジメディアホールディングスの事業は大きく分けて、「メディア・コンテンツ事業」と「都市開発・観光事業(不動産事業)」の2つです。
売上高の構成比では、メディア・コンテンツ事業が73%、都市開発・観光事業が26%と、メディア事業が主力です。しかし利益ベースで見ると状況は異なります。2025年3月期では、メディア・コンテンツ事業が41億円の赤字であったのに対し、都市開発・観光事業は245億円の黒字でした。
この傾向は最近始まったものではなく、2020年の時点ですでに利益の半分近くを不動産事業が占めていました。さらに、10年前の2015年と比較すると、不動産事業の売上は434億円から1,410億円へと3倍に、利益は53億円から245億円へと4.5倍に成長しています。フジメディアホールディングスは不動産事業を積極的に伸ばしてきたと言えるでしょう。
Q. フジテレビの収益構造はどのように変化していますか?
フジテレビの収益は主に「放送収入」(CM収入など)と「コンテンツビジネス収入」から成り立っています。2025年3月期の売上高は2,142億円で、そのうち放送収入が58%の1,238億円を占めています。
注目すべきは、この比率の変化です。5年前の2020年3月期には放送収入の割合は71%でしたが、直近では58%まで低下しています。一方、コンテンツビジネス収入は2020年3月期の425億円から2025年3月期には529億円へと増加しています。
つまり、従来のテレビ広告収入が減少する一方で、コンテンツビジネス(動画配信サービスなど)が成長しているという傾向が見て取れます。これはフジテレビに限った話ではなく、メディア業界全体の潮流と言えるでしょう。
Q. 他のテレビ局と比較して、フジメディアホールディングスのメディア事業の収益性はどうですか?
テレビ局各社のメディア事業の利益率を比較すると、日本テレビとテレビ東京が高い利益率を誇っています。特に日本テレビは12%と非常に高い利益率を達成しています。一方、フジメディアホールディングスとTBSは低い利益率となっています。

この差の背景には不動産事業の比重が関係していると考えられます。フジメディアホールディングスの売上に占める不動産事業の割合は26%と高く、利益の大部分を不動産が占めています。TBSも不動産事業の比率が高めです。一方、日本テレビの不動産事業は売上の3%、テレビ朝日とテレビ東京に至っては不動産事業はほとんど行っていません。
つまり、不動産事業に依存せず、純粋にメディア・コンテンツに集中している企業の方が、メディア事業自体の収益性が高い傾向にあります。
Q. 不動産事業の収益性について、フジメディアホールディングスと他社で違いはありますか?
不動産事業の利益率を比較すると、フジメディアホールディングスが17%であるのに対し、TBSは36%、日本テレビは39%と大きな差があります。しかし、この数字をそのまま受け取るべきではありません。
TBSや日本テレビの不動産事業は主に自社グループへのスタジオ貸出しが中心です。これは内部取引ですが、市場価格で行わなければならないため、見かけ上の利益率が高くなっています。また、TBSは「赤坂サカス」で商業施設からの収入もあります。
一方、フジメディアホールディングスの不動産事業は、一般的な賃貸ビル運営やホテル運営など、より幅広い事業を行っています。これが利益率の差につながっていると考えられます。
Q. 「コングロマリット・ディスカウント」とはどういう意味ですか?
コングロマリットとは複数の異なる事業を行う企業集団を指します。投資家の視点では、このような企業は「コングロマリット・ディスカウント」と呼ばれる現象により、企業価値が割り引かれる傾向があります。
例えば、A事業の価値が1,000億円、B事業が500億円、C事業が300億円の場合、単純計算では合計1,800億円の価値があるはずです。しかし市場評価では1,500億円と、単純合計より低く評価されてしまいます。
その理由としては、経営の非効率性や透明性の欠如、ガバナンスの問題などが挙げられます。典型的なケースとして、ある事業で利益を上げても、それを別の赤字事業の穴埋めに使ってしまうことがあります。投資家からすれば「儲かっている事業だけ切り出した方が価値が高まるのに、なぜ赤字事業を補填しているのか」という疑問が生じるわけです。
フジメディアホールディングスにおいても、メディア事業と不動産事業の間にシナジー(相乗効果)があるのかという点が問われています。特に都心部から離れた場所にある不動産事業と、メディアコンテンツ事業との間には、明確なシナジーを見出しにくい部分があります。