PIVOT TALK BUSINESS
徹底シミュレーション:日産の不動産リストラ。追浜工場跡地は「サーキット×IR」がベスト
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2025年6月4日

本社売却、追浜工場閉鎖の可能性が報じられた日産自動車。日産の持つ主要不動産の価値はどれくらいあるのか?どう再活用するのがベストなのか?オラガ総研代表の牧野知弘氏にシミュレーションしてもらった。 <ゲスト> 牧野知弘|オラガ総研 代表 東京大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、BCGを経て、三井...
日産自動車不動産リストラの未来図 Q&A ~グローバル本社は900億円? 追浜工場はIRとサーキット場の可能性も~
日産自動車のリストラが話題となっている。人員削減や工場閉鎖が注目されるが、実は不動産の活用方法も大きな課題だ。本社ビルや工場はどのくらいの価値があり、今後どのように活用できるのか。不動産のプロフェッショナルが詳細に分析する。

Q. 日産自動車のグローバル本社ビルはいくらで売却できる?
日産自動車の横浜みなとみらいにあるグローバル本社ビルの価値を算出すると、約900億円から1000億円程度と見積もられる。これは不動産投資の考え方に基づく計算だ。
このビルは土地面積が約1万平米(約3000坪)、建物の延べ床面積が約9万2000平米(約2万8000坪)ある。みなとみらい地区の賃料相場は1坪あたり2万円から2万1000円程度。東京都心に比べると半分程度の水準だ。
実際に投資家がこのビルを買った場合、全フロアの60〜65%程度が賃貸可能面積となる。空室率も考慮する必要があり、みなとみらい地区は約10%の空室率がある。これらを計算すると、年間賃料収入は約38億円と見込まれる。
建物の管理費などの経費率は高層ビルの場合25%程度なので、実際の営業利益(NOI)は約28億円となる。投資家が期待する利回りを3%とすると900億円程度、4%だと700億円程度になる。
みなとみらい地区にある同規模の港未来センタービルが2年半前に約1000億円で売却された実績があり、日産本社も同程度の価格になると予想される。ただし、日産のクレジットリスクや本社仕様の特殊性を考慮すると、評価額は変動する可能性がある。
Q. 日産の追浜工場はどのくらいの価値があり、どう活用できる?
追浜工場は非常に広大な敷地を持ち、面積は約170万平米に達する。これは東京ドーム(4万6000平米)の約37倍という規模だ。
この土地の資産価値を国土交通省の公示地価(1平米あたり7万4500円)から計算すると約1270億円となる。実際の取引では2割増しの約1500億円程度になる可能性がある。
しかし、この巨大な土地を買える事業者は限られている。工場の解体費用や土壌汚染の処理費用も考慮すると、単純に住宅地として開発するのは現実的ではない。さらに横須賀市は人口減少が続いているため、住宅需要も限られている。

この土地の活用法として考えられるのは、テーマパークやIR(統合型リゾート)施設、サーキット場などだ。面積的には東京ディズニーランド(200万平米)より少し小さく、USJ(54万平米)の3倍以上ある。
特に注目すべきは「サーキット場+IR」の組み合わせだ。日産の追浜工場には既にコースがあり、これを拡大して首都圏に近いサーキット場を作れば集客が期待できる。IRを併設すれば、シンガポールのマリーナベイサンズやセントーサ島のリゾートワールドのような施設が可能だ。これらの施設は年間2000万〜4500万人の来場者があり、横須賀市の再生の起爆剤になり得る。
Q. 日産車体の湘南工場はどのような活用が考えられる?
日産車体の湘南工場(平塚市)も売却対象となる可能性がある。敷地面積は約17万2000平米で、公示地価から計算すると約200億円程度、実際の取引価格では約250億円と見込まれる。
この規模の土地は、まとまった形で売却できる可能性がある。実際に10年前、日産車体は同じ湘南工場の一部(14万3000平米)を三井不動産に約160億円で売却した実績がある。その跡地には「ららぽーと湘南平塚」が建設された。

今回の土地も商業施設として活用できる可能性があるが、既に周辺には大型商業施設があり、市場は飽和状態にある。商業施設業界は「大きいものが勝つ」という特性があり、新たな施設を建設する場合は既存施設との競争が激しくなる。
他の活用法としては、マンション開発や学校誘致、物流施設などが考えられる。特に留学生を多く受け入れる大学や専門学校は、このような土地を取得する意欲がある。物流施設も可能性があるが、データセンターは地盤条件などから適していない可能性がある。
Q. 今後、不動産リストラはどのような形で増えていく?
今後は産業構造の変化に伴い、多くの企業で不動産リストラが進むだろう。自動車産業のように日本を代表してきた産業が変革期を迎え、これまで誇りを持って所有していた不動産が不要になるケースが増える。
特に私立学校のような教育施設も今後注目される。少子化により定員割れする学校が増加し、校舎や敷地の活用が課題となる。学校は比較的広い敷地を持ち、立地条件も良いことが多い。
これらの遊休不動産を活用するには、従来の発想(住宅・オフィス・商業施設)を超えた新しいアイデアが必要だ。日本はコンテンツやキャラクターなどの優れた文化資源を持っているが、それらを不動産と有機的に結びつける発想が不足している。

今後は、不動産開発とコンテンツ開発を融合させる「不動産プロデューサー」のような新しい職種や事業が重要になるだろう。不動産だけでなく、そこに入れるソフトウェア(コンテンツ)を考える人材が求められている。
日本の産業構造が変わる中で、不動産活用の可能性は無限にある。それを実現するためには、不動産会社だけでなく、エンターテイメント企業や様々な専門家による「連合軍」が必要だ。