政策超分析
韓国大統領選②/朝鮮半島の核リスク増大/李在明の外交戦略は
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2025年5月31日

「政策」や「国際情勢」に焦点を当て、徹底分析する「政策超分析」。今回のテーマは「韓国大統領選」。後編では、大統領選の結果が東アジアの安全保障環境に及ぼす影響を議論した。 <ゲスト> 牧野愛博|朝日新聞 元ソウル支局長 著書『韓国大乱』 https://x.gd/xK8Ku 李相哲|龍谷大学 教授 ...
韓国大統領選挙はどうなる?日韓関係・北朝鮮問題への影響を専門家が解説
韓国では6月3日に大統領選挙が行われる。この選挙結果が日韓関係や北朝鮮問題にどのような影響を与えるのか。専門家の見解を交えながら、主要候補者の政策や特徴、そして選挙後の展望について詳しく解説する。

Q. イ・ジェミョン氏はどのような人物で、当選した場合、北朝鮮との関係はどうなりますか?
北朝鮮との関係については、イ・ジェミョン氏は表向きは「段階的な核削減」や「緊張緩和」を掲げているが、実際には南北首脳会談は難しいと発言している。これは現実的な認識だと言える。専門家によれば、誰が大統領になっても北朝鮮は南北首脳会談を行わないだろうとの見方がある。その理由は、北朝鮮が「文化侵略」を恐れているためだ。南北首脳会談を通じて経済協力を得ても、その代わりに文化が流入して国の根幹が揺らぐことを警戒している。
また、イ・ジェミョン氏は米朝首脳会談の仲介を掲げているが、これも現実的には難しいとされる。北朝鮮は既にアメリカとの直接のパイプを持っており、韓国を介する必要性を感じていない。過去の米朝協議では、韓国や日本の政府関係者は「廊下を走り回る」だけで、実質的な交渉には参加できなかった経緯がある。
Q. イ・ジェミョン氏の支持団体と北朝鮮の関係はどうなっていますか?
イ・ジェミョン氏は今回の大統領選に出馬後、5月10日に進歩党と候補一本化している。この進歩党は元々「統合進歩党」という政党から派生したもので、過去に内乱を画策したとして韓国憲法裁判所で解散命令が出された経緯がある。この残党が作ったのが進歩党であり、イ・ジェミョン氏の判断で国会に3名が送り込まれている。
さらに懸念されるのは、北朝鮮と繋がりがあるとされる「地下革命組織」の出身者の中に、現在もイ・ジェミョン氏の周辺で政策担当秘書や政策室に入っている人物がいることだ。これらの人物が国会議員になれば、例えば軍事産業の秘密情報にアクセスできる立場になる。
ただし、こうした北朝鮮との繋がりについては、ユン・ソンニョル政権が取り締まりを強化してきたため、北朝鮮勢力はかなり弱まっているとの見方もある。一方で、進歩勢力は国家情報院の共産主義勢力に対する捜査権を制限するなど、双方が対立している状況だ。

Q. 保守派の候補者キム・ムンス氏はどのような人物ですか?
キム・ムンス氏も貧しい家庭で生まれ、7人兄弟の末っ子として慶尚北道の山奥で育った。ソウル大学経済学部に入学したものの、民主化運動に参加し、一時大学を中退。その後20年かけて大学卒業証書を取得した経歴を持つ。
国会議員を3期務め、慶尚北道知事を2期8年務めた後、雇用労働部長官を経て今回の大統領選に出馬している。注目すべきは、その清廉潔白なイメージだ。国会議員、知事、長官といった地位を歴任したにも関わらず、依然としてソウルの公営住宅(24坪)にしか住んでおらず、今回の主要候補4人の中で最も資産が少ないとされる。
政策面では「大韓民国を偉大な国に」というスローガンを掲げ、企業が経営しやすい環境を作ることを重視している。イ・ジェミョン氏が再分配政策を強調するのに対し、キム・ムンス氏は国際競争力の強化を主張している。

Q. 選挙結果は日韓関係にどのような影響を与えますか?
イ・ジェミョン氏が当選した場合、ユン・ソンニョル前大統領の路線を継承せず、むしろ否定する可能性が高い。朝鮮問題では、現政権の対日三者宣言が無視される恐れもある。また、イ・ジェミョン氏は過去に福島第一原発の処理水放流問題で日本を激しく批判しながら、同日夜には韓国の民主党幹部と刺身を食べていたというエピソードがあり、政治的な立場と個人的な行動に矛盾が見られる。
一方で、専門家は「誰が大統領になっても日韓関係は重要」と指摘する。両国は経済的に緊密に結びついており、例えば韓国の半導体産業は日本の技術なしでは成り立たない。砂からチップになるまでの5段階のうち、3段階で日本の技術が決定的な役割を果たしているという。
また、近年の国際情勢、特に中国の脅威に対応するためには、日韓協力が不可欠となっている。トランプ政権下での関税交渉や台湾有事の可能性など、様々な課題に対して日韓が共同で対応する必要性が高まっている。
Q. 台湾有事に対する韓国の立場は候補者によって異なりますか?
この点は両候補で大きく異なる。キム・ムンス氏はユン・ソンニョル前大統領の路線を継承し、台湾有事に関しても現実的な対応を取る可能性が高い。一方、イ・ジェミョン氏は過去に「中国と台湾が争おうがしまいが韓国とは関係ない」と発言したことがあり、台湾有事に対する認識が浅いと指摘される。
台湾有事は韓国も巻き込まれる可能性が高い問題であり、米韓同盟や中国との関係をどう管理するかが問われる。両候補とも米韓同盟の重要性は認識しているが、中国やロシアとの関係についての姿勢には違いがある。
専門家は、北朝鮮問題についてもキム・ムンス氏が厳しい態度で臨むのに対し、イ・ジェミョン氏は「北朝鮮にそんなに厳しい態度で望んだらダメ」という立場を取っていると指摘する。イ・ジェミョン氏は「戦争より汚い平和がいい」と発言したこともあり、北朝鮮に対して柔軟な姿勢を示す可能性がある。
Q. 選挙結果は日本の安全保障環境にどのような影響を与えますか?
北朝鮮の核開発は日本にとっても大きなリスクである。特に懸念されるのは北朝鮮の内部の不安定さだ。北朝鮮が内政的にコントロールできなくなった場合、核兵器の管理体制も不透明であり、様々なリスクが考えられる。
また、米中対立が激化する中で、在韓米軍の位置づけも変わりつつある。ウォールストリートジャーナルが報じたように、アメリカは在韓米軍2万8500人のうち4500人を引き上げる検討をしているとされる。これは北朝鮮対応ではなく、中国に対する戦略の一環と見られている。
台湾有事の際には、韓国が北朝鮮からの脅威に対応することが期待されており、日米韓の協力体制が試される。日本は台湾有事においてポーランドのような位置にあり、直接的な軍事介入ではなく、後方支援や自国防衛に徹する立場を取る可能性が高い。
Q. 韓国大統領選挙の情勢はどうなっていますか?
現時点(5月29日)ではイ・ジェミョン氏がリードしているが、選挙当日までに情勢が変わる可能性もある。専門家は「季節変化が起こるかもしれない」と述べており、依然として予断を許さない状況だ。