政策超分析
韓国大統領選の行方は/最有力は”韓国のトランプ”李在明
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2025年5月30日

「政策」や「国際情勢」に焦点を当て、徹底分析する「政策超分析」。今回のテーマは「韓国大統領選」。前編では選挙の最新情勢と、最有力候補とされる李在明氏を専門家が解説。 <ゲスト> 牧野愛博|朝日新聞 元ソウル支局長 著書『韓国大乱』 https://x.gd/xK8Ku 李相哲|龍谷大学 教授 ht...
韓国大統領選の最新情勢から候補者の実像まで──専門家2名が徹底解説
6月3日に投開票を迎える韓国大統領選挙が注目を集めている。最有力候補の李在明氏は「韓国のトランプ」とも称されるが、その実像は?保守派は復活できるのか?

Q. 韓国大統領選の最新情勢はどうなっているのか?
27日に発表された世論調査では、最大野党・共に民主党の李在明候補の支持率が49%でトップ。与党・国民の力の金文洙候補は35%、保守系少数政党・改革新党の李俊錫候補は11%となっている。

当初は李在明氏の圧勝という見方が支配的だったが、最近の世論調査では金文洙氏が追い上げを見せている。世論調査会社「リサーチ民」の調査によると、李在明氏が46.9%、金文洙氏が41.8%と差が縮まっており、特にソウルでは金文洙氏が李在明氏を上回っている。
ただし、選挙戦の背景には尹錫悦大統領による「非常戒厳令」問題があり、これが保守派に不利に働いている。金文洙氏は戒厳令に反対の立場を明確にしておらず、これが支持拡大の壁となっている可能性がある。
Q. 最有力候補とされる李在明氏はどのような人物か?
李在明氏は「韓国のトランプ」と呼ばれることもある政治家だが、複雑な側面を持っている。
貧しい出身で苦労して這い上がってきた経歴を持ち、「泥のスプーン」(シルバースプーンの反対)と自身を表現する。政治家としては非常に計算高く、相手の意図を読み取る能力に長けているが、本音を明かさない特徴がある。
政治スタイルはポピュリスト的で、支持者からの拍手を重視する傾向がある。明確な政策ビジョンよりも、支持率維持に焦点を当てている印象だ。

現在、李在明氏は5つの裁判を抱えており、その中には公職選挙法違反や北朝鮮への800万ドル送金疑惑などが含まれる。これらの司法リスクが彼の政治行動に大きな影響を与えており、大統領になれば裁判を先送りできることから、今回の選挙に勝つことが彼にとって極めて重要となっている。
Q. 李在明氏は対日関係についてどのような姿勢を示しているのか?
李在明氏の対日姿勢は、過去には強硬な発言が目立っていた。昨年の選挙では「日本と韓国の合同軍事訓練後に自衛隊が朝鮮半島を汚す事態になる可能性もある」と発言し、「過去の歴史について常に否定したり謝罪しない日本は世界平和や韓国の平和に貢献できるのか」と批判していた。
しかし、今回の選挙戦では「日本人は頑張り屋さんだ」といった発言も見られるなど、トーンダウンしている。これは優勢な立場から弱点を補うための戦略的な対応という見方が強い。
基本的には歴史認識や領土問題では譲らない姿勢を示しており、韓国世論の動向に合わせて発言を調整する傾向がある。そのため、本当の対日姿勢は予測しにくい面がある。
Q. 李在明氏の経済政策はどのようなものか?
李在明氏は再分配政策を重視する立場で、基本所得や基本住宅など生活保障に力点を置いている。国民一人当たり25万ウォン配布など、直接的な給付を重視する姿勢を見せている。
また、「企業が生み出した利益は企業が独占するのではなく、みんなに分け合うべき」という発言もしており、富裕層や大企業に対して厳しい姿勢を示している。これは、文在寅政権時代の公務員増員などの政策を踏襲する側面がある。

一方、対立候補の金文洙氏は企業規制の緩和を主張し、企業が自由に経営できる環境を整えることで雇用を創出する方針を掲げている。外国企業の誘致も重視しており、経済政策の面では両候補の違いが明確に表れている。
Q. 韓国社会の課題と今後の大統領選への影響は?
現在の韓国社会では、若者は結婚や住宅購入が難しい状況に、高齢者は年金問題に、男性は兵役問題に、女性はキャリア形成の障壁にそれぞれ不満を抱えている。これらの問題は、韓国の高度経済成長の歪みから生じている面が大きい。
朴正熙政権時代に始まった「圧縮型経済成長」は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展をもたらした一方で、地域間格差や社会的不均衡を生み出した。これは単なる再分配政策だけでは解決できない構造的な問題となっている。
こうした社会的分断の中で、新大統領がどのように国民を統合できるかが大きな課題となる。特に北朝鮮問題を抱える分断国家という状況も含め、韓国の次期大統領は非常に難しい舵取りを迫られることになるだろう。