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2025年5月30日

日本のスタートアップはなぜ弱いのか?アクティビストの意義とは?10年後の日本の未来は?マネックスグループ会長の松本大氏に聞いた。 <ゲスト> 松本大|マネックスグループ会長 東京大学法学部を卒業後、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券(現:シティグループ証券)に入社。その後ゴールドマン・サックス証券に...
マネックスグループ会長の松本大氏が語る資本市場の未来と日本の進むべき道。アクティビストファンドから見た日本企業の課題、ビットコインの可能性、そして10年後に向けた日本経済の展望を明快に解説する。

時価総額上場5年経過後から100億円以上へ変更する案が出ていますが、これは上場する基準ではなく、上場後の企業の成長を促す狙いがあります。上場基準は意図的に手を付けていません。これは小さな企業でも育つように、国のアジェンダとしてスタートアップによって日本のイノベーションや生産性を伸ばしていくという方針によるものです。
一方で、上場後のことは資本市場の領域です。公開資本市場ではある程度の規模がないと機関投資家が投資しません。機関投資家が入ることで、企業は牽制意見を受けたり、新たなアイデアをもらったり、ビジネスの紹介を受けたりできます。しかし企業が小さすぎると機関投資家が来ないため、せっかく良い企業が上場しても伸びないことになります。
これは子供の教育に例えられます。小中高一貫教育の学校でテストがなく評価されなければ、多くの子供は怠けてしまうでしょう。チェックポイントがなければ成長は難しいのです。企業もそれと同じで、適切な「坂」や「傾斜」が必要です。10年後の時価総額基準が現在40億円というのは、ドル換算すると約2500万ドルに過ぎません。本来なら世界第2位か第3位のGDPを持つ国としては小さすぎます。
5年後に100億円という坂を設けることで、企業の成長を促したいというのが案の背景です。すでに上場しているスタートアップの中には、「どうやって合併しようか」「どの企業と統合しようか」といった議論も出ています。これは良い方向で、企業が一緒になることで証券も増え、お互いに強くなれるからです。
上場後の成長に対する意欲やプランが足りないと思います。マネックスを例に挙げると、上場してすぐにセゾン証券を株式交換で買収し、その後も日興ビーンズ、オリックス証券を買収、さらにアメリカのトレードステーションやコインチェックも買収しました。常に上場して終わりではなく、ビジネス領域を拡大し、人材を増やす努力をしてきました。
それに比べると、今のスタートアップは10年前、20年前と同じ名前で同じビジネス領域でやっている会社が多いです。成長している企業もありますが、もっと統合や合併があっても良かったのではないでしょうか。以前は「上場はゴール」という考え方はなかったのに、今はそういった意識が広がっています。
資本市場としてできることは、上場の入り口のバーをあまり上げないようにし、入った後は適切なスロープを設けることです。それが世界的に見てもうまくいく方法だと考えています。
アクティビストファンドの例を見ると、既存企業の改革には大きな可能性があります。マネックスアクティビストファンドは、私が運用助言しているカタリスト投資顧問が関わっており、直近の運用成績では日本株の中で過去1年間のシャープレシオで第2位になりました。これは信託報酬2%、成功報酬20%という高いコストを差し引いた後の成績です。
このファンドは企業に投資した上で経営陣と対話し、「この事業はもっとこうした方が良い」といった提案をしています。こうした活動が成果を上げられるのは、日本企業に「伸びしろ」が大きいからです。伸びしろが大きくて、変化することでもっと良くなる可能性があるのです。
これはプライム市場やスタンダード市場の会社だけでなく、グロース市場の企業や上場前の企業にも言えることです。例えば、フリークアウトの佐藤裕介氏とストア.jpの嵯峨田氏は、最初から企業を統合して「ユニコーン」を目指しています。このような動きはとても良いことだと思います。
今の日本でリソースの再配分を最も効果的に行えるポジションはどこかと考えると、それは中央官庁の官僚ではないでしょうか。競争相手も少なくなっています。私は生まれてから2年前までは公務員になるという選択肢は考えたこともありませんでしたが、最近は官僚が最もやりがいのある仕事ではないかと思うようになりました。

日本には優秀な人材がたくさんいます。ゴールドマンサックスやJPモルガン、モルガンスタンレーの日本オフィスで働いているのも日本人です。アメリカの会社は若くて優秀な人をどんどん登用しているだけです。日本の企業や政府も若くて優秀な人をどんどん活用すれば、人材は十分にあります。私の経験では、ゴールドマンサックスにいた時の同僚のアメリカ人やフランス人よりも、日本にいる日本人の方が優秀でした。
ビットコインは技術の塊です。AIとクリプト(暗号資産)はどちらも重要な技術分野であり、米国の大統領選でも共和党は「ハッシュパワーで世界一になる」と公約しています。クリプトのマイニングは暗号技術とGPU、半導体、AIの技術の結晶であり、この分野でナンバーワンになることはアメリカにとって非常に重要です。
安全保障の観点からも、暗号技術と計算能力を持つことは不可欠です。もしアメリカ以外の国がハッシュパワーで圧倒的な位置を占めれば、世界中の銀行システムや情報システムは脆弱になります。ビットコインのブロックチェーンは世界最強のデータベース技術であり、プルーフ・オブ・ワークという形でそれを体現しています。
また、ロシアや中国などはドルへの依存から脱却するため、金とビットコインを購入しています。世界中の反米的な国々がビットコインを準備通貨として持ち始めており、アメリカもビットコインを保有する方針を示しました。これは投機目的ではなく、安全保障上の必然的な判断です。

日本は資産運用立国を目指しています。GDPは現在世界4位ですが、将来的には10位程度まで落ちるかもしれません。しかし金融資産は世界2位です。うまく運用すれば、GDPが落ちても金融資産の額は50年くらい世界2位か3位でいられるかもしれません。人口が減少する中で日本が世界で意味のある存在であり続けるには、資産運用が極めて重要です。
アメリカでは機関投資家がビットコインに投資していますが、日本ではまだそうした動きがありません。これはゴルフをドライバーなしでプレイするようなものです。日本も暗号資産の運用は重要になってくるでしょう。ビットコインETFが導入されれば、税制も分離課税に変更される可能性が高いです。
中国とロシアは既にリザーブカレンシー(準備通貨)としてビットコインを保有しており、アメリカも戦略備蓄として保有する方針です。G2(米中)の中央銀行がビットコインを準備通貨として保有しているのに、G3やG4の立場にある日本がそれを無視していていいのかという問題があります。
マーケットから見れば、G1、G2がやっているのにG3、G4がやらない理由はないはずです。ビットコイン自体を購入するのは難しいと感じる人でも、ETFなら購入したいという人は多いでしょう。税金面やオペレーション面でも安心感があります。
リソースの再配置をしっかり行えば、年率10%程度で株価を上げることは可能だと思います。10年間で1.1倍の10乗、つまり2.6倍になりますから、現在の日経平均が約38,000円とすると、10年後には98,500円、約10万円になります。
逆に言えば、そうならなければ日本は危機的状況になります。現在の人口動態や実体経済の状況を考えると、日本は10年後にGDP世界10位程度になる可能性があります。ポーランドにも抜かれるかもしれません。そんな状況では安全保障上も危うくなります。世界3位や4位の経済大国なら守る価値がありますが、10位になれば「守る必要はない」と思われる可能性もあります。

日本がある程度の大国であり続けることは地政学的にも非常に重要です。人口が減少する中で国力を維持するには、資産運用で頑張るしかありません。ピケティが言うように「r > g」(資本収益率が経済成長率を上回る)という法則があるので、これは可能なはずです。
10年後に日経平均が10万円に達していなければ、日本は相当危険な状況になっているでしょう。国際的に無視される小さな国になってしまい、「助けたいけど助けに行けない」と言われる国になってしまいます。20年前は世界中のホテルでも日本語の案内がありましたが、今ではほとんど見かけなくなりました。このまま小さくなっていくことを許していいのでしょうか。10年後に10万円になるように、今から真剣に取り組まなければなりません。