PIVOT TALK BUSINESS
Googleの最新AI戦略:5つのハイライト
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2025年5月27日

Google I/O で多数のプロダクトを発表し、世界を驚かしたグーグル。最新のAI戦略のハイライトは何か?OpenAIを完全に超えたのか?Algomaticの大野峻典CEOに徹底解説してもらった。 <ゲスト> 大野峻典|Algomatic CEO 東京大学松尾研究室で機械学習を専攻。卒業後、In...
Google I/O 2025で何が発表された?Algomatic CEOに徹底解説してもらった
昨年に続き、GoogleのテクノロジーカンファレンスGoogle I/Oについて解説してもらった。今年のテーマは「研究が現実に」。昨年は「理論上できる」と言われていた技術が、今年は「できる」だけでなく「リリース開始」というものが目立った。今回はAlgomatic CEOの大野峻典氏に、Google I/O 2025と、OpenAIによるIO社買収のニュースを踏まえて、2025年のAI業界のトレンドを解説してもらった。

Q. Google I/Oとは何ですか?
Google I/Oは、Googleのテクノロジーに関する最新のアップデートを発表する開発者向けの会議です。名目上は開発者向けですが、実質的には消費者向けに新技術を発表する場になっています。昨年までは技術寄りの話が多かったのですが、今年はアプリケーションの実用面に関する話が多くなりました。
Google自身が「研究が現実に」という言葉でまとめていたように、これまで研究レベルで「理論上できる」と言われていたことが実際に使えるアプリケーションになった、という内容の会議でした。去年は「研究でこれができます、いつか出します」と言っていたものが、今年は「できるし、本日からリリースします」というものが多く発表されました。
また、Googleが自社のGoogle検索体験を自ら変革しようとしている点も印象的でした。
Q. 今回のGoogle I/Oのハイライトは?
今回のGoogle I/Oのハイライトは5つのキーワードにまとめられます:モデル、マルチモーダル、パーソナライズ、エージェント、XRです。
モデル
新しい最高性能モデル「Gemini 2.5 Pro」の進化が発表されました。このモデルはAIを評価するベンチマークテストにおいて、全カテゴリでナンバーワンを獲得しています。コーディング、数学など、あらゆるカテゴリで1位と評価されています。
驚くべきは、Gemini 2.5 Proだけでなく、その軽量版であるGemini 2.5 Flashも総合評価で2位になっていることです。これはOpenAIのフラッグシップモデルであるO3とほぼ同等のレベルになっています。
価格面でも革新的で、同じような性能なら最も安価で、同じ価格帯なら最も高性能というポジションを確立しています。具体的には、OpenAIの最新モデルのAPIコストと比較すると、Googleの最新モデルは約1/30の価格で提供されています。さらに、GoogleはこのモデルをAPIとして提供するだけでなく、一般ユーザーにも無料で公開しています。
マルチモーダル
マルチモーダルとは「複数のデータ形式」を扱えることを意味します。テキストだけでなく、画像、動画、音声などを扱う能力が向上しました。
まず、新しい画像生成モデルではより高解像度の画像生成が可能になり、文字もクリアに表現できるようになりました。文字生成は従来難しく、ポスターやバナー、漫画などの制作に制約がありましたが、今回のアップデートでその壁が取り払われました。
次に、「Veo」というGoogleの動画生成モデルが進化し、動画にリアルな音をつけられるようになりました。人の声が自然で、口の動きと同期し、環境音も適切に付加されます。これにより、より没入感のある動画制作が可能になりました。
また、GoogleMeetで話者の言語に合わせてリアルタイムで吹き替えができる機能も発表されました。会話の速度を維持したまま翻訳できる点が画期的です。
パーソナライズ

「パーソナルコンテキスト」という概念が強調されました。これは、ユーザーの個人情報をAIが活用することで、より適切な応答を生成するというものです。
例えば、友人から旅行について質問されたとき、あなたが以前訪れたことのある場所であれば、GoogleのAIはあなたのGoogle Drive、スプレッドシート、ドキュメント、カレンダーなどの情報を参照し、あなたが返信しそうな内容を自動生成します。
AIが非常に高性能になっても、個人の背景情報がないとトンチンカンな応答をすることがありますが、Googleの各サービスのデータを参照できればそれが可能になります。これにより、メール返信だけでなく、検索やその他のアプリケーションでもパーソナライズされた体験が提供されます。
エージェント
AIエージェントとは、ゴールを与えられると自立的に環境を理解し、必要なツールを使いながらゴール達成に向かうAIのことです。
今回のアップデートでは、検索体験を大きく変える「AIネイティブな検索体験」が発表されました。従来のキーワード検索ではなく、長文での検索が可能になり、テキストだけでなく映像などマルチモーダルな入力も受け付けます。また、1回きりの検索ではなく、連続的なチャットのような体験で、検索結果に対してさらにコメントすると次の検索を行ってくれます。さらに、購買や予約などのアクションまで代行します。
これによって、ユーザーが複数回検索していたものが1回で済むようになり、予約なども自動で行ってくれるようになります。この機能はGoogle検索の入口から利用できるようになります。
XR
XR(拡張現実)によって、デジタルからリアルへの拡張も進んでいます。AndroidXR搭載のスマートグラスなどのデバイスを通じて、旅行中や海外にいる時にリアルタイムで会話を翻訳したり、移動中にメッセージの返信やGoogleマップの道筋を表示したりできるようになります。
スマートグラスが重要な理由は、人が見ている情報のほとんどがデジタル化されていないため、その情報を取り込むデバイスが必要だからです。また、呼び出す手間がないこともメリットです。例えば、知らない言語で話しかけられたら自動的に翻訳するなど、次のアクションを予測して実行できます。
Q. OpenAIのIO社買収について教えてください
OpenAIがAIハードウェアスタートアップのIO社を65億ドル(約1兆円)で買収しました。IO社は2024年に設立されたばかりの会社で、Appleの元デザイン責任者であるジョニー・アイブ氏が設立した会社です。
設立から1年ほどで具体的な製品リリースはありませんが、OpenAIとプロジェクトを共同で進めてきた関係から買収に至りました。目的は消費者向けのAIデバイスを開発することで、「スクリーンを超える体験」を作ることが言及されています。
具体的な製品はまだ明らかにされていませんが、サム・アルトマンCEOは「ChatGPTに聞きたいと思ったらパソコンを取り出し、ブラウザを立ち上げ、タイピングして返事を待つ、このプロセスが煩わしい」と述べており、よりシームレスなインターフェースを目指していると考えられます。
ハードウェアの候補としては、メガネ型、ヘッドフォン型、ペンダント型、ピン型などが考えられますが、スマートフォンの完成度が高く、既存のエコシステムも確立している中で、新たなデバイスで勝負するのは非常に難しい挑戦です。
しかし、AIビジネスにおいてはパーソナルコンテキストの取得とユーザーの行動の起点となるデバイスが重要です。OpenAIはAppleやGoogleに比べてデバイス面で出遅れているため、将来の成長のためにデバイス市場に参入する必要があると考えられます。
Q. これからのAI業界のトレンドは?

これからのAI業界では、以下のようなトレンドが見られるでしょう:
1. モデルのコモディティ化: Googleの発表にあったように、AIモデルの性能が向上しながらもコストが下がっていく傾向があります。これにより、AIの利用がより一般的になっていくでしょう。
2. マルチモーダル体験の拡大: テキストだけでなく、画像、音声、動画を組み合わせた体験が増えていきます。これにより、より自然で多様なインタラクションが可能になります。
3. パーソナライズの深化: ユーザーの個人情報をより活用することで、AIがより適切な応答を生成できるようになります。これにより、AIがより「自分のことを理解している」と感じる体験が増えるでしょう。
4. エージェント機能の強化: 単なる質問応答ではなく、ユーザーの目標達成を支援するエージェント機能が強化されます。検索から予約、購入まで一連の行動を代行する機能が広がるでしょう。
5. ハードウェアの重要性増大: リアルな情報を取得し、シームレスなインタラクションを提供するためのハードウェアが重要になります。XRデバイスやウェアラブルデバイスの開発競争が激化するでしょう。
これらのトレンドの中で、GoogleとOpenAIはそれぞれ異なる戦略で市場に臨んでいます。Googleは必要な機能を揃えて多くのユーザーに提供する「Android戦略」、OpenAIはプレミアムで特別感のある製品を提供する「Apple戦略」と言えるかもしれません。どちらが勝者になるかは予測できませんが、両者の競争がAI業界の進化を加速させることは間違いありません。