PIVOT DOCUMENTARY
元一風堂社長が仕掛け人...焼鳥はアメリカで勝てる?【鳥貴族・前編】
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2025年5月21日

既存ビジネスに捉われることなく新たな挑戦を続ける企業やビジネスパーソンに密着。スタジオトークでは描けない等身大の姿を映し出すドキュメンタリーコンテンツ。第一弾は創業40年で悲願のアメリカ出店に挑む焼鳥チェーン「鳥貴族」の戦略に迫る <ゲスト> ・清宮俊之(鳥貴族USA CEO/エターナルホスピタリ...
日本最大の焼き鳥チェーン「鳥貴族」がアメリカ市場に進出する理由とは?元一風堂社長が語る世界戦略

人口減少が続く日本市場から世界へ。エターナルホスピタリティグループ(旧・鳥貴族ホールディングス)が本格的な海外進出を開始した。その先陣を切るのがロサンゼルスでの鳥貴族出店だ。「勝てるというよりも、もう行かなければダメでしょう」。そんな覚悟を持って臨む海外事業の責任者として選ばれたのは、かつて一風堂の社長として世界展開を成功させた清宮俊之氏。彼はどのような戦略で焼き鳥文化をアメリカに広めようとしているのか。
なぜ鳥貴族はアメリカ市場に挑むのか?

鳥貴族は2024年5月に社名をエターナルホスピタリティグループに変更し、海外展開を本格化させました。代表取締役社長CEOの大倉拓也氏は「世界の外食市場へ挑戦する意思を込めている」と語ります。
大倉氏によれば、鳥貴族は2030年までに国内1000店舗、グループ会社の大吉は700店舗を目指していますが、日本国内は人口減少で市場が縮小する一方です。「成長を続けるためには海外に出ることが当然」という考えから、チェーン展開のインフラが整い、巨大な人口と所得層を持つアメリカ市場に照準を合わせました。
大倉氏は「勝てるというよりも、もう行かなければダメでしょう」と強い覚悟を示しています。さらに「失敗したら何度でもやり続ける」という決意も語り、海外展開への本気度が伝わってきます。
外食ヒットメーカー・清宮俊之氏の経歴

清宮俊之氏は大学卒業後、TSUTAYAを展開するCCCに入社し15年ほど在籍。その後、一風堂を運営する力の源カンパニーに転じ、約9年間外食業界と海外展開の経験を積みました。
大倉氏は「当時、鳥貴族が目指していたのは福岡出店と海外出店。この2つをアドバイスしてくれるのは彼しかいない」と考え、最初は社外取締役として招聘を打診。しかし「社内に入ってよ」という軽い飲み会での一言が、清宮氏を鳥貴族に引き入れるきっかけとなりました。
清宮氏の強みは「人間力」と「人たらし的な魅力」だと大倉氏は評します。清宮氏のもとには人が集まり、彼の依頼は断れないという不思議な求心力があります。清宮氏自身も「生きた情報と生きた情報を掛け合わせて新しい着想で企画を積む」考え方を持ち、「情報が集まる人は人から好かれる人」だと語ります。
2人のキーマンの存在

清宮氏は海外展開の成功には強力なチーム作りが不可欠と考え、2人のキーマンをヘッドハンティングしました。
1人目は鳥貴族USAのCOOに就任した丸山義之氏。ロサンゼルスで焼き鳥店を経営し、ミシュランのビブグルマンを獲得した実績を持ちます。その店はマーク・ザッカーバーグも訪れるほどの人気店でした。
2人目はCFO兼CSOの小吹雄一郎氏。日系企業の海外進出を市場調査からブランド構築まで幅広く支援してきた経験の持ち主です。小吹氏は「帰国子女で小学校高学年から中学までロサンゼルスに住んでいた」経験があり、出店エリアの特性にも詳しいという強みがあります。
清宮氏は「他の企業が真似できない組織を作りあげた」と自負しており、スタッフからは「役員だけでも強烈なメンバーだ」と評されています。
異業種3ブランド展開…大胆な出店戦略

清宮氏は西海岸ロサンゼルスを初出店地に選びました。その理由として、中央部は食文化が西海岸や東海岸より5〜6年遅れており焼き鳥専門店には時期尚早であること、東海岸は高級焼き鳥業態が成功しているものの自社の業態とのフィット感が見えにくいことを挙げています。
さらに興味深いのは、年内に3店舗をロサンゼルスにドミナント出店する計画です。特筆すべきは、この3店舗がそれぞれ異なる業態として展開される点です。白人が90%以上を占めるエリアでは現地の嗜好に合わせてタレを甘めにし、アジア系が多いエリアでは日本人向けの醤油ベースの強い味付けにするなど、エリアごとにローカライズを図ります。
清宮氏は「それぞれどういうお客さんの付き方をして、どういう商品が出るのかを細かく分析し、半年ぐらいで傾向値を見極めて西海岸展開の青写真を描く」と戦略を語ります。
「均一価格」はアメリカでも適用するか?

創業以来の均一価格という理念は継承しつつも、アメリカ市場に合わせた調整が行われています。アメリカ版鳥貴族では4ドルと8ドルの2段階均一価格制を採用。焼き鳥はほぼすべて4ドル、前菜やミニラーメンなどが8ドルとなっています。
丸山氏は「前菜と焼き鳥の比率が6:4になると売上のバランスが良い」と分析しています。焼き鳥だけが忙しく前菜部門が暇だと売上が伸びないため、両部門が同じくらい忙しい状態を作り出すことで、飲み物の注文も増え、全体の売上が向上するという戦略です。
また、価格設定の安さも武器にしており、「8ドルでスモールラーメンをどれだけ出せるか」という挑戦も行っています。丸山氏は「この価格を見た時に感覚的に安いという印象を持ってもらい、次々と注文してほしい」と期待を寄せています。
店舗デザインや商品への工夫

店内デザインは「家」をコンセプトにしており、天井が通常のフラットではなく傾斜がついた家の形になっています。また、カウンター席は「Bar」と呼ばれるアメリカの文化に合わせつつ、日本の焼き鳥屋の「焼き場」を融合させた「グリルバー」として提案。焼き手の手元が見える高さに設定することで、調理過程も楽しめる工夫がされています。
メニューでは日本の鳥貴族の雰囲気を継承しつつも、アメリカ市場向けに特別なドリンクやデザートを開発。「ジャンボクリームソーダ」や「チョコレートパフェ」など、視覚的にも映える商品を揃え、特に子供連れのファミリー層が満足できるよう配慮されています。
また、ソースやドレッシングは市販のものをベースに「変化球」を加えることで差別化し、コストを抑えながらも独自の味わいを実現しようとしています。
経済大国・アメリカの壁

清宮氏は「初期段階で赤字店ができるとかなり重い」と語ります。アメリカでは投資コストが非常に高く、また日系企業にとってはビザの問題もあり、進出のハードルは年々高くなっています。
また、均一価格制を維持するための原価バランスや、日本とは異なるアルコール消費量の差(アメリカでは1人2杯程度)といった課題もあります。清宮氏は「何が成功モデルかまだ分からないので、最初の1年は手探り」と慎重な姿勢を見せています。
一方で、大倉社長は「失敗したら何度でもやり続ける」と覚悟を決めており、長期的な視点での海外戦略を描いています。清宮氏も「リベンジするつもりでやる」という意気込みを見せており、粘り強く挑戦を続ける覚悟が伝わってきます。
海外展開はまだ始まったばかりですが、日本の焼き鳥文化を世界に広めるというビジョンと、それを実現するための強力なチーム、そして失敗を恐れない覚悟。エターナルホスピタリティグループの挑戦から目が離せません。