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公立高校入試改革、併願制はいつ導入できる?
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2025年5月20日

公立高校入試制度の「単願制」を廃止して、「併願制」を導入する提案が注目を集めている。併願制を実現する「受入保留アルゴリズム」とは何か?そのメリットは何か?導入へのハードルは何か?東京大学マーケットデザインセンターの小島武仁所長と、慶應義塾大学の中室牧子教授に聞いた。
高校入試制度を変える!受入保留アルゴリズム導入で地方と東京の格差解消へ
現在、多くの公立高校では「単願制」という制度が採用されています。しかし、これが生徒の進路選択を狭め、学校間の競争を阻害しているという指摘があります。これに対して、経済学者の小島武仁氏が提唱する「受入保留アルゴリズム(DA)」が注目を集めています。このシステムが導入されれば、高校入試はどう変わるのでしょうか?

受入保留アルゴリズム(DA)とは何ですか?
世界の多くの国で使われている入試システムで、複数の学校を志望順に並べて出願できる仕組みです。このアルゴリズムでは、受験生の志望順位と学校側の評価基準をマッチングさせ、できるだけ多くの生徒が希望する学校に入学できるようにします。

現在日本の多くの公立高校で採用されている単願制では、一つの学校しか受験できません。これにより、実力がある生徒でも不合格になるリスクを避けるため、志望校を下げるケースが発生しています。DAは、この問題を解決し、より公平で効率的な入試システムを実現します。
DAの導入によって何が変わりますか?
最大の変化は、公立高校でも複数の学校を志望順位をつけて受験できるようになる点です。これにより、「第一志望は落ちるかも」という不安から志望校を下げる必要がなくなります。また、学校側も自校を本当に志望する生徒を把握できるようになります。
中室氏によれば、「進路指導のあり方が変わるでしょう。現在は『どの学校に受かりそうか』という指導が中心ですが、DA導入後は『第一志望の学校に受かるためにどうすれば良いか』という、より本質的な教育に集中できるようになります」とのことです。
独自入試を実施している高校にも適用できますか?
DAは独自入試を実施している学校でも活用できます。小島氏は「独自入試であろうと何であろうと使えます」と説明しています。
アルゴリズムに必要なのは、「学校側の生徒評価の順位」と「生徒側の学校志望の順位」の情報だけです。例えば、ある学校が面接や独自試験の結果に基づいて生徒の順位を決定しても、その情報をアルゴリズムに入力すれば問題ありません。
ただし、複数の独自入試を受ける場合、試験日程をずらすなどのロジスティックな調整は必要になります。
導入はどのように進めるべきですか?
小島氏は「いきなり全国一律での導入は難しいでしょう。高校入試は都道府県が所管しているため、希望する都道府県から先行導入して、うまくいくことを確認した上で徐々に広げていく方式が合理的です」と提案しています。
特に共通試験と内申点だけで合否を決定している都道府県は、現行制度からの変更が最小限で済むため、導入しやすいと考えられます。
導入までどれくらい時間がかかりますか?
技術的には数週間から数ヶ月でも導入可能ですが、生徒や学校側の準備期間を考慮すると、約2年程度の期間が必要だと専門家は見ています。
小島氏は「シカゴでは途中で制度を変更した事例もありますが、日本では生徒に不利益が生じないよう、2年程度の準備期間を設けるべきでしょう」と説明しています。
実現のためにはどのような課題がありますか?
中室氏は以下の課題を指摘しています:
1. 高校入試のデジタル化の推進:現在、デジタル化は進みつつあるものの、まだ地域によってばらつきがあります。
2. 越境入学の問題:県境の生徒がどう扱われるかという課題があります。
3. 採点の公平性確保:複数の学校を志願できるようになると、記述式の採点方法についても検討が必要です。
越境問題については、小島氏は「現状でも隣接県の高校を受験できる地域はあります。DA導入後も、例えばA県に住む生徒がB県の高校を受験するなら、B県の高校だけをリストに書けるようにするなど、対応は可能です」と解決策を示しています。
なぜ今がDA導入の好機なのですか?
中室氏は「私立高校の無償化が始まっていることが大きいです。公立高校と私立高校がイコールフッティングになるよう制度を整えるべきです」と説明しています。
私立高校無償化は、私立と公立を競争させることで公立高校の質を高める政策です。それにもかかわらず、公立が単願制で私立が違うという状況は競争条件が不平等です。さらに、デジタル化も進みつつあることから、今が変革の好機と言えます。

加えて、小島氏が率いるERATOの研究プロジェクト(2029年3月まで実施)が技術的なサポートを提供できる点も大きな強みです。
DAは日本以外の国では導入されていますか?
小島氏によると「数年前の時点で約50カ国がDAを大学入試に導入しています。中国、インド、多くのヨーロッパ諸国でも導入されていますが、日本とアメリカはまだ遅れている状況です」
特に中国では、高校入試・大学入試の両方でアルゴリズムを活用しており、世界的にこの仕組みを導入する国は増加傾向にあります。
地方と東京では影響が異なりますか?
地方では公立高校が強い傾向があり、DA導入により私立の滑り止め受験が減少する可能性があります。一方、東京では公立高校の競争力が回復するきっかけになるかもしれません。
中室氏は奈良県の例を挙げ、「地方では私立の選択肢が限られており、特に女子生徒は選択肢が少なく不利な状況です。実際に私の知り合いで一番成績の良かった女子が第一志望ではなく第二志望の公立高校に進学せざるを得なかったケースがあります。こうした機会の不平等をなくせるのがDAの大きなメリットです」と説明しています。
DAは学校の質向上にも寄与しますか?
DA導入により、生徒の「真の志望順位」が明らかになるため、学校側は自校の人気度を正確に把握できるようになります。これは教育内容改善のための重要な情報となります。
中室氏は「今までの倍率は読み合いの結果なので、真の人気度を表していません。DAでは純粋な人気度がわかるため、例えば『生徒は国際化に力を入れている学校を好む』『部活動が盛んな学校を評価する』といった傾向を分析でき、学校経営に活かせます」と指摘しています。
DAは高校入試以外にも応用できますか?
小島氏のチームはすでに様々な分野でマッチングシステムを実用化しています。例えば:
1. 高卒就職:現在「一人一社制」になっている高卒就職にもDAを応用できます
2. 研修医のマッチング:医師の就職活動などですでに利用されています
3. 新入社員の配属:企業や自治体の新入職員配属にも活用されています
中室氏は「高校生の主体的な意思決定を支援するという意味では、入試だけでなく就職活動の場面でもこの仕組みが活用できるでしょう」と述べています。

小島氏は最後に「DAはリスクが少なく、ベネフィットが大きい改革です。受験生にとっても学校にとっても、そして社会全体にとっても良い変化をもたらすでしょう」と締めくくっています。